内々定取消しに「違法」の判断が
  平成21年4月19日
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この事件の担当弁護士は、
この違法認定は「画期的」と言っています。


まず、この事件を見る前に、
内定取消のお話をします。


内定取消が有効になる可能性のある理由とは、

・卒業できなかった
・提出書類に虚偽の申告をしていた
・健康状態不良で、将来の勤務に支障が出る
・その他、犯罪を犯す   等ですが、

だからといって、即解約できるわけではなく、

・会社が内定当時、知ることができない事実  
・知ることが期待できないような事実   

を理由に採用内定を取消すことが、客観的に合理的であり、
社会通念上も相当と是認することができるものに限られる。
   
としています。(大日本印刷事件 S54.7.20)

ですから、今回の「経営悪化」という内々定取消理由が、
この基準に該当するか否かが争点となるのでしょう。


もう一つの裁判例(インフォミックス事件)は、
中途採用の内定取消の事案ですが、
内定取消の有効性は、整理解雇の4要件に則って判断すべき、としています。



以上のことを踏まえて、
今回の事件を簡単にご紹介します。


昨年7月、当時大学4年の男子学生は、
福岡市内のある不動産会社から、内々定通知を受けました。

が、「原油高騰や金融危機」等による経営悪化を理由に、
10月2日の内定式直前に、不動産会社は学生の内々定を取消しました。

それに納得できない学生は、
その不動産会社を訴えました(労働審判)。

そして、

福岡地裁は、不動産会社に、
解決金75万円を支払うよう命じました。


この金額ですが、報道によると、
当初は約370万円でした。 

・・が、別の企業に就職が決まったので、
請求額を計105万円に減額したそうです。


その不動産会社は、
「未曾有の不況でやむを得なかった」と主張したそうですが、

裁判所は、「正当化できる理由ではない」と、
不動産会社の主張を退け、違法を認めました。

「経営上の理由」は、内々定取消の
正当な理由にはならないんですね。


担当弁護士は、冒頭のように
「画期的」  
「内々定取り消しで金銭支払いを命じる司法判断は初めてではないか」
とコメントしています。


不動産会社は、現段階ではノーコメントです。
・・さあ、どうするのでしょう?


元学生は
「内々定取り消しで、自分だけでなく家族や友人までも深刻な衝撃を受けた。
同様の事案が二度と起こらないようにしてほしい」

と述べています。


「内定」ではなく、「内々定」が救済されたこの判断は、
やはり、社会的な影響を考えてのことなのでしょうか。?

今後の裁判に与える影響は大きそうですね。



解雇にしても、内定取消にしても、会社側にもそれなりの言い分はあるでしょうが、
なんといっても、相手は感情のある人間です。

今後は企業も、誠実で慎重な配慮ある対応をしていかなければならないのでしょう。



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