無断欠勤する従業員 平成21年2月22日
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私が派遣会社に勤務していた頃、
派遣スタッフや正社員の無断欠勤に、結構、出くわしました。
どんな会社??
と思うでしょう。
その会社の就業規則には、
「無断欠勤●週間で解雇」 と規定されていたと思います。
その●週間が思い出せませんが、一般的には「2週間」みたいです。
なんで「2週間」なんでしょうね?
こんな裁判例があります。
<開隆堂出版事件> 東京地裁H12.10.27
2週間の無断欠勤は、正当な理由がある欠勤とは認められず、
懲戒解雇は有効。
また、行政通達でも、
正当な理由なく2週間以上無断欠勤し、出勤の督促にも応じない場合は
労働者の責に帰すべき事由に該当する。 (S23.11.11基発第1637号他)
つまり、2週間以上の無断欠勤は職場放棄だから、
解雇されてもやむなし、という解釈ですね。
よし、無断欠勤●週間は、解雇の理由になるみたいだぞ。
では、具体的にどうすればいいのだ?
まずは、就業規則に「無断欠勤●週間したら解雇」という規定はありますか?
あるのであれば次は、無断欠勤している相手に解雇通知を送り、
会社の意思を伝えます。
そして、労働基準法第20条の解雇予告に則り、粛々と手続を進めます。
では、本人が借金取りに追われるなどの理由で失踪しており、
どうあっても本人と連絡がとれない場合はどうすればいいのでしょう。
ここは大事なところなんですが、
解雇は、その会社側の意思が相手に伝わってはじめて、効力が生じます。
ですから、本人が失踪中で自宅にいないとわかっているのに
無人の自宅に解雇通知を送りつけても、会社の意思が伝わったことにはなりません。
下手すると、後日、解雇無効の争いを起こされる場合があります。
(兵庫県社土木事務所事件 H11.7.15)
じゃあ、どうすればいいのか。
「公示送達」を使います。
公示送達は、ざっくり言うと、
簡易裁判所に公示を申立て、掲示後2週間経過した時点で、
相手にこちらの意思が伝わったという法的な根拠になります。
ですから、後日本人が出てきて、解雇通知を受取っていないから
この解雇は無効だ、と言いがかりをつけてきても大丈夫ということです。
ちなみに、公示送達をする場合でも、
労働基準法第20条の解雇予告の手続は必要です。
しかし、この公示送達は、結構手間がかかります。
ですから、実務では、公示送達ではなく、家族に事情を説明し、
本人に代わって退職願を出してもらっているようです。
その場合、就業規則にそのことを規定しておくことが必要です。
たとえば、
失踪して30日経過したら退職したものとみなす、
その際、家族に退職願を出してもらう、など。
または、
無断欠勤●週間以上したら解雇とする。
行方不明の際の解雇通知は家族等に行う、
などもあり? かも?
この辺は実際に裁判になってみないと
なんとも言えないので断言はしませんが、
とにかく大事なことは、必ずこのような規定を、
従業員に周知徹底させておくということです。
そうであれば、あとで争いになっても、
「無断欠勤が解雇になることを、あなたは知ってたんでしょ」と
会社側も抗弁出来るからです。 (兵庫県社土木事務所事件 H11.7.15)
ですから、就業規則の必要性を理解せず、
就業規則をしまいっぱなしにしている会社は要注意です。
また、私としては、
やはり公示送達をしておく方が無難な気がします。
と、ここまでは「手続」のお話。
最後にもう一つ 注意することがあります。
それは、無断欠勤の理由です。
もしかして、会社に責任があることで
出社を拒否しているのかもしれません。
・・過去にこんなことがありました。
派遣スタッフの管理者が、派遣スタッフから恐喝され、
怖くなったために、翌日から出社を拒否した例です。
当時の責任者が、その管理者の自宅を何度も訪問し
聞き出したことで、その事が発覚しました。
このように、出社拒否の原因が
会社側の事情である場合もあるので、
「無断欠勤●日」という事実のみで、何の調査もせず、一律に解雇してしまうと、
労働者に不利益を与えてしまう結果になりかねないので、注意が必要です。
また会社としても、解決すべき本来の原因を見誤ってしまい、
後日、解雇無効の訴えをされてしまう危険性もあります。
解雇はどんな場合でも、
十分すぎるほど慎重に行うのがいいようです。
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