■ 教育訓練給付にも影響が・・・(H20.11.23)

労働者を一人でも雇えば、原則、労災保険、雇用保険が強制適用です。
この2つを合わせて「労働保険」と言います。

労災保険は、たとえ事業主が手続をしなくても、
いざ労災事故が起き、労災と認定されれば、労働者は補償されます。

事業主が、今まで払ってこなかった労災保険料と
ペナルティ分を徴収されるだけのことです。

同じ労働保険でも、雇用保険の場合、その労働者が
・1週間の所定労働時間20時間以上、で
・1年以上働くと見込まれる、
場合は、その労働者に雇用保険が適用され、事業主はその手続を行わなければなりません。

事業主がきちんと手続を行わないと労働者に不利益をもたらすことになります。

前号では、勤続20年の人が、いざ退職となったとき、
雇用保険の資格取得の手続がされておらず、
2年さかのぼって取得はできたものの、
もらえる基本手当の日数が減ってしまった、というお話をしました。
http://archive.mag2.com/0000260659/20081116212407000.html

今回は、それに呼応する、別の角度からのお話です。

『教育訓練給付』 聞いたことはあるでしょうか。

この不況下、新聞紙上で、「失業の不安」「非正規社員の契約解除」
等々の記事を毎日目にします。
これから雇用保険を頼りにする人がますます増えてくることでしょう。
そして、資格の取得を目指す人も増えてくるのではないでしょうか?

その時に少しでも役に立つのが、雇用保険の「教育訓練給付」です。

たとえば、資格の学校に入学したとします。
その入学料、受講費用の2割(上限10万円)が、手続をすれば、後で戻ってきます。
もちろん、修了することが条件ですが。

ただし、この教育訓練給付は、3年以上の被保険者期間が必要です。
(初回に限り1年以上)

とすると、たとえば、勤続4年の人が、
「この不況で、うちの会社もそろそろ危ないぞ。今のうちに何か資格でも取って
 リストラに備えよう。 そういえば、前の会社にいた時、
 雇用保険から教育訓練給付金をもらったな。今回もそれで行こう!」

と、被保険者期間を確認するために職安に行きました。
そこで初めて、今の会社で資格取得がなされていないことが発覚しました。

今から遡って加入しても2年。あと1年加入しないと教育訓練給付は受けられません。

「あと1年なんて悠長なことを言ってたら、うちの会社はどうなってるか・・・」
「今、勉強したいのにぃ〜!」 となります。

このように雇用保険の給付は、その人の保険料の納付要件が問われます。
何年加入していたか、いくら払っていたか、等。
そしてその手続をするのは事業主の義務です。

今回は、転職を前提にお話しましたが、
この教育訓練給付を、従業員の能力向上に活用することも出来ます。

資格を取得したら、教育訓練給付でカバーされない分を
会社が福利厚生として出してあげるのもいいのではないでしょうか?

そうすれば、従業員のモチベーションアップにもつながり、ひいては、
会社の業績アップにもつながります。

会社に利益をもたらすのは、従業員自身なのですから。
もっと教育しましょう。もっと人に投資をしましょう。


国に保険料を払わされている、ということだけに着目すると不満ばかりが出てきます。
逆に、せっかく保険料を払っているんだから、それを積極的に活用して、
従業員の満足アップ、実力アップ、会社の業績アップ、に繋がるように
上手に導いていけるといいですね。

いずれにしろ、手続をするのは事業主です。
手続忘れのないよう、定期的に確認しましょう。



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