雇用保険の被保険者証は持っていますか? (平成20年11月16日)
教育訓練給付にも影響が・・・


雇用保険は、原則、
・1週間の所定労働時間が20時間以上で、
・1年以上引続き雇用されると見込まれれば、
被保険者になれます。


雇用保険でよくある事故。 それは、資格取得の『手続忘れ』です。
特に、人の出入りの多い会社では、うっかり忘れがあるようです。
実際、私も忘れられた事がありましたが、
入社半年後ぐらいに気づいたので、入社日に遡って取得できました。


健康保険の場合、資格取得をすれば、被保険者証(保険証)を会社から渡されます。
ですから、手続忘れという事故はおきにくいと思います。

雇用保険も、資格取得をすると「雇用保険被保険者証」が職安から交付されるのですが、
これを本人に渡さないで、会社で保管している場合があります。
本人も、会社から渡されなければ気がつきません。

退職した時か、年金を請求する時まで、
その存在を忘れていることでしょう。

でも、毎月お給料から雇用保険料は天引きされているから、
当然、雇用保険に加入していると思っています。


そして、いざ退職。。。


<会社の担当者>

さ、喪失届と離職証明書を書かなくちゃ。
あれ? ○○さんの喪失届の用紙がない? 「020」がない??

そこで会社の担当者は慌てます。
もしかして、まだ取得していなかったのでは・・・。。

職安で確認すると、
案の定、未取得でした。

それを聞いた本人は、
「そんなバカな!? 毎月保険料は天引きされていたぞ??」


・・・こういう場合、過去2年間は、遡って被保険者になることは出来ます。
でも、あくまで2年間のみです。

このことが、何に影響するのか。

・・・そう、 所定給付日数に影響します。


≪自己都合退職の場合≫
年齢に関係なく、被保険者だった期間が、

 10年未満だと    90日
 〜20年未満だと  120日
 20年以上だと   150日


たとえば、○○さんは勤続20年。
本来であれば、基本手当150日分がもらえます。

しかし、会社の手違いにより、被保険者期間は
20年ではなく、たったの2年です。

つまり、基本手当は90日分しかもらえないということです。
あとは会社に、差額の60日分を払ってもらうよう交渉するしかありません。


このように雇用保険は、会社の手続があってはじめて成立します。
逆に言えば、会社の不手際で、労働者に不利益を与えてしまうことも十分ありうるのです。
ですから、雇用保険の資格取得は、定期的に確認しましょう。



次は、『教育訓練給付』のお話です。

この不況下、新聞紙上で、「失業の不安」「非正規社員の契約解除」
等々の記事を毎日目にします。

これから雇用保険を頼りにする人がますます増えてくることでしょう。
そして、資格の取得を目指す人も、増えてくるのではないでしょうか?

その時に少しでも役に立つのが、雇用保険の「教育訓練給付」です。

たとえば、資格の学校に入学したとします。
その入学料、受講費用の2割(上限10万円)が、手続をすれば、後で戻ってきます。
もちろん、修了することが条件ですが。

ただし、この教育訓練給付は、3年以上の被保険者期間が必要です。
(初回に限り1年以上)

とすると、たとえば、勤続4年の人が、

「この不況で、うちの会社もそろそろ危ないぞ。今のうちに何か資格でも取って
リストラに備えよう。 そういえば、前の会社にいた時、雇用保険から
教育訓練給付金をもらったな。 今回もそれで行こう!」

と、被保険者期間が3年以上あるかを確認するために、職安に行きました。
そして、そこで初めて、自分が未加入であることが発覚します。

今から遡って加入しても2年。
あと1年加入しないと教育訓練給付は受けられません。

「あと1年なんて悠長なことを言ってたら、うちの会社はどうなってるか・・・」
「今、勉強したいのにぃ〜!」  となります。


このように雇用保険の給付は、その人の保険料の納付要件が問われます。
何年加入していたか、いくら払っていたか、等。

そして、その手続をするのは、事業主の義務です。



今回は、転職を前提にお話しましたが、
この教育訓練給付を、従業員の能力向上に活用することも出来ます。

資格を取得したら、教育訓練給付でカバーされない分を
会社が福利厚生として出してあげるのも、いいのではないでしょうか?

そうすれば、従業員のモチベーションアップにもつながり、
ひいては、会社の業績アップにもつながります。
会社に利益をもたらすのは、従業員自身ですから。

もっと教育しましょう。
もっと人に投資をしましょう。


国に保険料を払わされている、ということだけに着目すると
不満ばかりが出てきます。

逆に、せっかく保険料を払っているんだから、それを積極的に活用して、
従業員の満足アップ、実力アップ、会社の業績アップ、に繋がるように
上手に導いていけるといいですね。

いずれにしろ、手続をするのは事業主です。
手続忘れのないよう、定期的に確認しましょう。



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