『契約』って大事ですよね? 


友達の会社で実際にあった出来事です。
そこそこ名の知れた中小企業です。テレビ等でCMも流れています。
取引先の大半は官公庁です。

この会社は、契約書は一切取り交わさないそうです。先代からのやり方です。
大半の取引先が官公庁なので、今まで大事にも至らずに商売が成り立っていたのでしょうか?

そんな中、とある営業所でこんな事件が起きました。
取引先が、支払期日前に倒産してしまったのです。

驚いて駆けつけてみると、その会社はなくなり、
会社の業務を引き継いでいる別の会社が入っていました。
社長は当然ドロン、従業員も全員解雇になったそうです。

後日、ドロンした社長の顧問弁護士から、破産手続きを開始する旨の通知が届きました。

この会社では、このような貸し倒れは、初めてではないようです。
これまでの損失が少額だったため、法的措置を取ったことがなく、すべて泣き寝入りです。

この会社は他にもいろんな面でルーズです。
そのルーズさを書きつらねたいのですが、
今回はあえて、本題の「契約書」の話に戻らせていただきます。


確かに民法では、契約は双方の意思表示のみで成立します。

しかし、トラブル防止のため、 訴訟になったときのため、
大事なお客様を失わないために、 どこの会社でも契約書は取り交わすはずです。

そして、契約書に明記された約束事をお互いに守っていくことで、
今後の信頼関係も築いていけます。



話は変わりますが、『契約書を交わす』という点では労働契約も同じです。

私は開業する前、過去5社に勤めたことがあります。
その5社中、労働契約書を交わしたのは、たった1社です。

採用段階で、このような幾種かの書類を書かされたとき、
「この会社はしっかりしているな」 と感じたものです。
また、その際、「いい加減な働き方はできないな」 と気を引き締めたものです。

契約書には、そういう、お互いに約束事を守らなければならない、
という観念を再認識させる効果があると思っています。
また、契約書を交わすことが、「不正は許しませんよ!」 という暗黙の抑止力にもなると思います。



ここからちょっと硬い話になります。

◆労働条件の書面による『明示義務』は 労働基準法15条 に規定されています。

◆4月に施行された「改正パートタイム労働法」では
  労働基準法での『明示義務』に加え、
  『昇給、退職手当、賞与の有無』 さえも、書面で明示しなさいと規定されました。
 
両者とも、違反には罰金があります。
労基法は30万円の罰金、パート法では10万円の過料です。



またまた話は逸れますが、

3月に施行された「労働契約法」では、就業規則の重要性を謳っています。

従来(現在も?)、就業規則はあまり周知されていなかったように思います。
実際私も、日々の業務に追われ、じっくり就業規則を読むこともなかったですし、
ひどい会社になると、就業規則を見せない、または 隠す会社もあります。

不良社員を解雇したい、勤怠の悪い社員を懲戒処分にしたい、
といったときに威力を発揮するのが就業規則の規定です。

しかし、いくら高価で立派な就業規則を作ったとしても、
従業員に周知させていなければ、最悪裁判になった場合、負ける可能性があります。

労働基準法106条では、就業規則の周知を義務付けているのですから。


また、労働者を採用する際に労働契約を結ばない会社が、
就業規則で労働条件を規定している場合、

その就業規則が、
 □ 誰が見ても納得できるようなものであり、
 □ その就業規則が従業員に周知徹底されていれば、

その就業規則の労働条件が、各労働者の労働条件になる、あるいは、なってしまう、
場合があります。


ここで注意しなければならないのは「なってしまう」場合です。

 ◆市販のひな型で就業規則を作っただけで、以後見直しもしていない、
 ◆その規定の内容が、労働者に有利に出来ている、

・・場合は、周知いかんによっては、会社みずからの首をしめる事態にもなりかねません。
少しでも心当たりがあるのであれば、今すぐにでも就業規則を見直してください。

そして、採用時および定期に、パート等を含む従業員全員に
就業規則の研修をすることをお勧めします。

その効果として、
 ◎会社は法令順守をしています、
 ◎何もやましいことはありません、
 ◎だから、安心して約束事を守って働いてくださいね、

という会社の姿勢を見せることが出来ます。

そして、従業員のモチベーションアップや定着率の向上にも繋がるのではないでしょうか?

さらには、就業規則でけん制する、つまり、従業員の不祥事を未然に防ぐことにもなると思います。



就業規則で横道に逸れてしまいましたが、

『売買』 であれ 『労働』 であれ、 『契約書を交わす』 ということは、信頼関係を築いていく上でも大事です。
それが、『会社と取引先』 『会社と従業員』 の良好な関係に繋がっていくと思います。

契約は、はじめが肝心です。


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