過労死
   平成21年5月24日
──────────────────────────────────

すかいらーく契約店長(当時32歳)の死が、過労死と認定されました。
会社側も責任を全面的に認め、正社員並の賠償金を支払うということです。

さらに、
・他の契約店長55人には、これまでの未払い残業代1,746万円を支払うこと、
・労務管理の改善に努力すること、
も合意書で約束したようです。


・・なぜ、32歳という若さで過労死しなければならなかったのか?

報道によると、被災者は、
H3年にアルバイトとして入社し、H18年には契約店長になった。
その頃から、
残業が月200時間を超える長時間労働を強いられ、
その結果、H19年10月に脳出血で死亡。
そして、H20年6月に過労死と認定されました。


なぜ、過労死が起こるのか?
過労死するほど、働かなければならないものなのか??

その根本原因を、労働者、会社側とも、真剣に考えなければなりません。
もはや、よその会社の出来事ではありません。
どこの会社でも起こりうることです。


過労死とは、(簡単に言うと)

過重業務により疲労が蓄積され、
その結果、(加齢による自然経過を、著しく超えて)
脳や心臓の病気を発症、悪化させ、死に至ること。

その原因である過重業務とは、具体的には、

◆発症直前に起こった「異常な出来事」。
 たとえば、仕事に係わる重大事故や人身事故などが挙げられます。
 
◆発症前約1週間の間に、休みもとれないほど続いた長時間労働、など。

◆発症前6ヵ月以内の間に、残業が月80〜100時間ほど続いたこと。

◆労働時間以外の要因として、
 勤務が不規則、出張が多い、作業環境が劣悪、常に精神的な緊張を伴う、

などの業務を、過重業務といい、
過労死か否かを判断する際の基準になります。


特に、今回の過労死した契約店長の場合、月200時間にわたる残業が続き、
それが原因で脳出血を起こし、死に至ったわけですから、
どれだけ常軌を逸した働き方をさせられていたかが理解できるでしょう。

これは、会社側が、従業員の労働時間を
きちんと把握し対処していれば防げた事故です。

長時間労働が続けば、必然的に十分な睡眠時間はとれません。
そして、疲労はどんどん蓄積していきます。
心臓や脳の血管の病気は、疲労の蓄積が原因とも考えられています。


このように、契約店長の死は労災と認められたわけですから、
遺族は会社に対して、損害賠償を請求することになります。
(今回は、会社側が全面的に非を認め、合意となったが)

●労働契約法(5条)では、
 使用者には、労働者の生命や身体の安全を確保する
 「安全配慮義務」がある としています。

●判例でも、
 安全配慮義務は、使用者の当然の義務とされています。

なぜなら、労働者は仕事や作業場所、作業環境等を自分で選べません。
ですから使用者には、これらをきちんと管理し、
労働者の生命や健康を危険から守る義務があるのです。

そしてこの安全配慮義務は、労働契約を結んだ時から発生します。


このような痛ましい過労死を無くすためには、

まず、
●会社(上司、社長等)が、労働時間の管理をきちんと行い、
 長時間労働はさせない覚悟、方針を決めることです。

 その目的は あくまで、労働者の健康の確保、です。

 目的が人件費削減に逸れてしまうと、サービス残業につながり、
 更には、(偽装)管理監督者だから、いくら働かせても残業代は不要、
 ということで、長時間労働が放置され、結果、
 第2、第3の被害者が出てしまうことになります。

●特定の人に仕事が集中しないよう、上司が部下の仕事に関心を持つ。

●業務改善を行い、無駄な業務をなくす。

 また、業務内容にもよりますが、ジョブローテーションで多能工化をはかり、
 みんなで忙しい部署を助け合えるようなしくみを作る。

 そうすれば、育休や介休、年次有給休暇が取りやすくなり、
 また、いろんな仕事を経験することで、
 従業員一人ひとりのスキルアップや、互いを思いやる心も生まれ、

 従業員同士のコミュニケーションも活発になり、
 組織が活性化するのではないでしょうか。

●年次有給休暇の取得を促進し、心身ともに休息を与える。


とはいっても、
現実問題として、そのような予防策をとる人的余裕がない、
という中小零細企業もあることでしょう。

ならばせめて 法定の健康診断だけは必ず実施してください。

そして、異常があった従業員には、必ず病院を受診させ、
健康状態によっては、休暇を与える、配置転換をする、
作業環境を改善するなど、使用者としての責務だけは
必ず全うして欲しいと思います。


過労死した店長の母親は、
「事故が起きてからの対応では遅すぎる。
 企業は、過労死を絶対起こさないように手当てして、
 過労死という言葉を死語にしてほしい」 と会見で訴えていました。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

過労死の問題は根が深い。 さらに、
長時間労働やパワハラによる精神障害、過労自殺も、年々増えています。

今回、使用者側の安全配慮義務という観点からお話しましたが、
正直言って、そんな理屈が通用しない事業主や上司は多々います。

そういう上司の下で働かざるをえない労働者は、
直訴する、退職する、等で自分の身を守らなければ、
仕事に殺され、大事な人生を失い、大事な家族を悲しませます。

部下の労働時間を管理する義務は、
使用者(上司含む)にあります。

こういった労務管理の教育は、
従業員の生命や健康を守る上で、絶対に欠かせないことです。

しかしながら、
現場では行われていないのが現状です。

景気が持ち直し、忙しくなる前に、
このような労務管理教育を実施し、
それを定例化しておくといいのではないでしょうか。

立場が変われば、今度は自分が、
過労死、過労自殺の加害者になるかもしれませんから・・・。



HOME