■ 事業主のはじめの一歩

個人事業主でも法人でも、労働者を雇うとなると大変です。

労働基準法、労働安全衛生法、労災法、雇用保険法等々・・・
さまざまな法律のしばりがあります。

パートやアルバイトを雇っている段階でしたら
まだ気は楽かもしれません。

でも、パートやアルバイトにも当然、
労基法や労災法等は適用されます。

雇用保険も、労働時間が週20時間以上あり、1年以上働く見込み
があれば加入させなければなりません。

有給休暇も当然発生します。
パートだから、アルバイトだからという区別はありません。
6ヵ月以上働き続け、決められた労働日の8割以上の出勤率が
あれば、当然に与えられます。


開業してから数年が経ち、正社員を雇うことになりました。

そうなると、パートやアルバイトの時とは違った問題が
発生してくる場合があります。

完全週休2日制にしようか、年間休日数は、変形労働時間制を
導入しようか、残業が伴うなら36協定だ、といったような。

賃金テーブルは、賞与は、退職金は・・・。
社会保険にも加入させなければ、有休時の給与はどうしようか、
歩合制にしようか・・・などなど。

これらを導入するためには、就業規則のような会社のルール
となるものを作っておかないと、のちのちトラブルになります。

労働者は法律で守られています。
さまざまなことを今から考えておかなければなりません。


このような、ある意味事業主の方には耳の痛いお話をすると、
皆さん一様にテンションが下がります。

しかし、社労士の立場として言わないわけにもいかず、
こちらが申し訳ないような気持ちになってきてしまいます。
「最初は大変ですけど、あとは楽になりますから」と
訳のわからない励ましをする始末です。

社労士に労務管理の運営を委ねていただければ
特に大変なことはないのでしょうが、
従業員を1人、2人と少しずつ増やしていく段階の事業主さんですと、
なかなかその費用を捻出するのも頭の痛いところだと思います。

ですが、この最初の一歩さえきっちり時間や労力をかけて
整えておけば、あとは労働者が1人増えようが何人増えようが、
そのルールに従って運営していけばいいだけです。
安心して本来の業務に専念できます。


それとは別に、事業主さんが一番気にするのは
「有給休暇」のようです。

今まで労働者からは何も言われなかったので与えていないし、
出来たら有休のことは言いたくない、というのが本音かと思います。

経営者の立場に立てば、その気持ちも理解できます。


ここで、私が労働者の立場だったときのことを思い返してみます。
どういう時にたまった有給休暇を使ってしまえ、と思ったか。

まず、会社を辞めようと思った時。
そして、会社が信用できない、会社に裏切られた、と思った時に
自分の権利を最大限に主張してやろう、と思いました。

ここ数年、企業の不祥事が明るみになり、その結果
倒産や廃業に追い込まれている企業が後を絶ちません。
そのきっかけは内部告発がほとんどだと言っても
過言ではないと思います。

さんざんサービス残業でこき使われ、いいように利用されただけだ、
と思った瞬間に、今までの分を取り返してやる! と
有休を消化したり、または、サービス残業等の会社の法律違反を
内部告発するのだと思います。そう、復讐です。

組織といえども、そこで働いているのは感情のある人間です。
会社内では立場の違いこそあれ、一歩社外に出れば対等な人間同士です。
そのことを忘れて、社内の権力にものを言わせ、傍若無人な振る舞いをすると
手痛いしっぺ返しを食うことになります。


ではどうすればいいのでしょう。

あいさつをする、ねぎらいの言葉を常にかける、
どの従業員にも公平に接する、褒める、認める、
疲れたら有休でも使ってゆっくり休んでいいんだよという思いやりの姿勢。

ちょっと勇気がいりますが、でもこのように愛情を注いでいくことで、
困った時、助けて欲しい時に従業員は手を貸してくれるのではないでしょうか?
有休を取るのは申し訳ないな、と助け合いの気持ちが生まれるのでは
ないでしょうか?

あくまで性善説に立った考え方ですが。


独立開業することはとても素晴らしいことです。
その反面、さまざまな悩みも生まれます。

今回、そういった事業主さんと接することで、
少しでも悩める事業主さんが前向きに考えられるよう、
適切なアドバイスができる社労士にならなければいけない、
そして、そういった事業主さんをこれからも応援していきたいと
切に思いました。

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