インフルエンザによる就業禁止
平成21年5月17日
──────────────────────────────────

今、騒がれている新型インフルエンザ。
各企業の対策は、万全でしょうか?

この場合、事業者は、

病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病など、
一定の疾病にかかった労働者について、

本人の健康状態の悪化や、他の者への影響を考えて、
その就業を禁止しなければなりません。

そして、その場合はあらかじめ、
産業医やその他専門医の意見を聴かなければなりません。
(労働安全衛生法第68条、労働安全衛生規則第61条)


たとえば、従業員の1人がインフルエンザにかかったとします。
その従業員は、医者の指示どおり自宅で療養し、
そして回復し、明日から出社できると診断されました。

この間の賃金は、通常の欠勤と同じ扱いです。

その従業員は、「明日から出社します」と会社に連絡をしました。

ところが会社は、
本人の病後の体力回復と、社内への影響等を考え、
「今週いっぱいは、自宅でゆっくり休んでくれ」と自宅待機を命じました。

この場合の賃金は、 無給?  有給?


前者の、
従業員が病気で、その療養のために休んでいる間は
従業員の都合=欠勤  ですから、賃金は不要でした。

ところが、
後者の「自宅待機」は、会社の都合です。

主治医から「もう完治したから、明日から仕事に行ってもいいよ」
と診断されたにも係わらず、会社が、会社の都合で、自宅待機を命じた訳ですから、
労働基準法26条の休業手当(平均賃金の6割)を支払うことになります。

また、自宅待機を従業員全員に命ずる場合も同様の取扱いになります。
その際は、産業医や専門医と相談して決めるといいでしょう。


ここで気になるのが、
こういう自宅待機命令は、事業主が自由に出来るのか?  です。

「もう治ったのに・・」 「感染していないのに・・・」
という従業員の立場に立てば、
通常どおり働きたい、と考えたとしても不思議ではありません。

また、自宅待機期間を長くすると、
従業員の働く権利を侵害することにもなりかねません。

それらを踏まえた上で、法的にみると、

事業主は、休業手当等の賃金を払っていれば、
自宅待機を命ずることは出来る とされています。

なぜなら、
会社には施設管理権があり、この権利に基づいて、
労働者の会社内への立入を自由に決めることが出来るから です。(原則)

とはいっても、状況によっては、
労働者側の感情に配慮して、休業手当ではなく、
賃金全額を支払う、といったことも必要になってくるでしょう。


ちょっと視点を変えて、

たとえば会社が、
「感染する危険があるので、●●(海外)への旅行を自粛するように」
と命令したとします。

ところが、それを無視して旅行した者がおり、
そのことが発覚し、しばらくの間、感染防止の意味から、
その者に自宅待機を命令したとします。

この場合の、その間の賃金はどうなるのでしょう?

この場合、旅行してしまった労働者に全責任があるのですから、
この自宅待機期間を無給としても差し支えない と思われます。

しかし、あとでトラブルにならないように、
あらかじめ就業規則にその事を明記し、全社員に周知しておいた方がいいでしょう。

また、たまたま海外出張したところが感染地域になっており、
その結果感染し、発症してしまった場合はどうすればいいのか。

その場合、労災保険が適用されることがあります。

通達でも、
 急性伝染病流行地に出張した者が、業務の遂行中に病原体に汚染されて
 罹患したことが明らかである場合は、業務上の疾病として取り扱うべき、

とされています。(S23.8.14基収1913号)

ただし、要件によっては労災保険が適用されない場合もあるので、
海外出張が多い企業では、その辺の取扱いも就業規則等に明記しておくといいでしょう。


また、休業が4日以上に及べば、
・健康保険からは傷病手当金、
・業務上であれば、労災保険から休業補償給付が受けられます。
手続は忘れずに行いましょう。

新型インフルエンザの感染は、更なる広がりを見せています。
うがい、手洗い、マスクを励行しましょう!


HOME