いじめで自殺
 (平成21年5月31日)


平成10年に、小田急レストランシステムの社員(当時51歳)が、
部下のいじめに遭い自殺しました。

はじめは労災と認定されなかったが、
遺族が提訴したことで、

東京地裁は5月20日、職場でのいじめでうつ病になり、
それが原因で自殺したと、業務との因果関係を認め、
労災不支給決定処分を取消す判決を下しました。


警察庁の調べによると、平成20年度の自殺者は11年連続で3万人超。
自殺の動機として、うつ病が2年連続で最多となったそうです。

また、パワハラといえば、上司が部下をいじめるというケースが多数でしたが、
今回は、部下が上司を執拗にいじめ自殺に追い込んだ、という事件です。


事件の概要。

被害者が本社の給食事業料理長だったH9年頃から、
部下のいじめが始まりました。
この部下たちは、当時、契約社員からパート社員に変更されていたようです。

そして、その頃から被害者は、
「金庫から金を盗んだ」「女性にセクハラをした」
などと書かれた中傷ビラをまかれたり、
危害を加えるぞ、と脅迫をされていたそうです。

被害者は、事実無根を会社に訴えましたが、
H10年4月に異動を命じられ、その直後に自殺しました。


ここで気になるのが、
その部下らが職場に中傷ビラをまいた時点で、
会社は何らかの懲戒処分を行ったのか、ということです。

中傷ビラをまく行為自体、企業の秩序を乱す卑劣な行為です。
その上、脅迫までしていたというのですから・・・。

もし、会社がここで適切な対応をしていたならば、
被害者も、自殺まではしなかったかもしれません。

また、このような中傷が虚偽であれば、
名誉毀損罪に値する犯罪行為であり、かつ、人権侵害です。

みなさんの会社で、いじめによる自殺者が出たらどうしますか?

もし、家族だったら・・・。

いじめは、会社全体の問題だと思いますか?
それとも、一個人間の問題だと思いますか?


パワハラは、人権侵害です。
パワハラをした加害者は、民事では、不法行為に基づく損害賠償責任を問われます。

加害者だけではありません。

いじめが業務に関係していれば、会社も使用者責任を問われます。
また、安全配慮義務違反としての責任も問われる場合があります。

このように、パワハラを放置したツケは、
何倍にも膨れ上がって自分に返ってきます。


パワハラが起こる会社、パワハラを放置する会社。
その企業体質はどうなっているのでしょう。

風通しが悪く、あらゆるストレスが充満している。
危機意識が無く、くさいものには蓋をする体質。

そのような職場環境では、互いに無関心となり、
みんなで助け合おう、声を上げよう、という雰囲気にはならないでしょう。

ハラスメントは、個人の問題ではなく、会社組織全体の問題です。
それは、法的に、使用者責任や、使用者の安全配慮義務違反
が問われることからも明らかです。


みなさんの職場でも、このような痛ましい事故が起こらないように、
今一度、職場を見直してみませんか?

また、定期健康診断同様、
従業員の「心の健康診断」も定期的に行い、
うつ病などの心の病気を未然に防ぎましょう。


被害者側の弁護士は
「職場にはさまざまな形のハラスメントがあり、
 使用者の労務管理にも警告を与える内容だ」 とコメントしています。


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