■ らない労使紛争のゆくえ

みなさんは、解雇、サービス残業、セクハラ、パワハラなど、会社で
このような困ったことがあった場合、どのような行動をとりますか?

労働基準法に違反していれば、労働基準監督署、
それ以外であれば県労働局、労働相談センター、労働組合、労政事務所
などへ相談に行くでしょうか?


H19年度の労働トラブルの相談件数、
労働局長による助言や指導、あっせん申請等は、
いずれも前年度を上回ったようです。

それでもだめなら裁判、つまり労働審判、民事訴訟となります。

でも裁判となると、労働審判は別として、費用もかかるし時間もかかる。
行政機関で解決できるのであれば、それに越したことはありません。

そういう意味で、件数も依然、伸びているのでしょうか?


では、どのようなトラブルが多いのでしょう?

1位 解雇 23%
2位 労働条件の引き下げ 13%
2位 いじめ・嫌がらせ 13%
4位 退職勧奨 8%
5位 出向・配置転換 4%
 ・    ・
 ・    ・

相談者は8割が労働者です。
 正社員5割
 パート・アルバイト2割
 派遣・契約社員が1割 

トラブル相談の多い企業規模は
 従業員 50人未満が3割
     10人未満が2割
    100人以上が1割

労働組合もなく、自主的に解決できる第三者的機関も
持っていない中小企業でのトラブルが多いようです。
社内で解決できる機関がないので、行政に頼らざるを得ない
ということでしょう。

私もかつて、労働基準監督署に相談に行ったことがあります。
直接、労働基準法に係る内容ではなかったため、
労働局長への相談か、あっせんの申請を勧められました。

しかし、局長へ相談に行ったところで、あっせんの申請をしたところで、
行政がすぐに会社側に働きかけをするわけではない現実を知り、
がっかりしたことを覚えています。


知人から聞いた話ですが、すぐに動いてくれるのは労働組合のようです。
ただし、会社側が作ったような「御用組合」ではなく、
個人加盟のユニオンです。

不当に解雇された労働者が個人加盟のユニオンに相談し、
その数日後には、ユニオンお抱えの弁護士を伴い
その会社に乗り込んだそうです。

会社側も顧問弁護士を据えていましたが、このテのトラブルに
慣れているユニオン側の弁護士には何一つ言い返せず、
結局、200万以上の示談金を払わされたそうです。

その社長は「いい勉強になった」と高笑いしていたようですが、
このような事件はどこの会社でも起こりうることです。


このような荒っぽい例もありますが、
ほとんどの方は穏便に済ませたいと思うでしょう。
その場合はやはり、行政への相談を活用するのがいいかもしれません。

では、行政に相談した場合、解決までに
どれぐらいの時間がかかるのでしょう?

大体1〜2ヶ月ぐらいです。

あっせんは、会社側、労働者側の一方が土俵に上がってこないと
打ち切られてしまいます。
その場合、労働審判、民事訴訟へと進み泥沼化。
中小企業の社長であれば、仕事どころではなくなってしまうかもしれません。


会社側は往々にして、労働者の気持ちを深く考えずに
契約時の労働条件を低下させたり、横暴な配置転換を命じたりします。

また、会社での立場を利用してハラスメントをしたり、
大した教育や指導もせずに「使い物にならない」と平気で
解雇したりします。

昔の労使関係では通用したこのような使用者側の横暴は、
現代においては通用しません。

うちの会社は法律を犯している、あの上司は人権を侵害している、
と思える根拠をネットの情報から探しあて、あらゆる機関に
相談に行く知恵を労働者がもてるようになったからです。

それを踏まえ、これから会社側がしなければならないのは、
労働者に対する教育もそうですが、
その労働者を監督する管理職、そして社長自身も
労働法や労務管理の勉強をしなければなりません。

『企業は人なり』

その企業が大きく成長するか、衰退していくかは、
その会社を築いている、支えている『人』次第なんだということに、
もう少し目を向けてほしいと思います。

トラブルに費やされるコストを考えれば、
その大事さがおわかりになると思います。

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