業務災害と通勤災害の違い
  (平成21年4月12日)
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業務災害とは、
仕事中に、仕事が原因で、被災すること。
たとえば、プレス機に手を挟まれケガをした、などです。

また、仕事中ではなくても、
「この仕事をしていなければ、こんな災害に遭うことはなかった」
という業務起因性があれば、業務災害と認められることもあります。

たとえば、
・アスベストを扱う仕事をしていたので中皮種になった  とか、
・長時間労働による過労が原因で、睡眠中にくも膜下出血で死亡した   などです。

また逆に、身内の不幸による心労がたたったなど、
私的な出来事が原因であれば、
たとえ仕事中に発症し倒れたとしても、業務災害とはなりません。


では次に、通勤災害とは。
・通勤途上で、車にはねられる、
・駅の階段で転ぶ、など、

通勤に「通常」伴う危険が現実化し、
それにより被災すると、通勤災害となります。

ですから、ケガをしたのがたとえ通勤途上だったとしても、
・ケンカをしてケガをした、
・通り魔にあってケガをした、   などは、
通勤に「通常」伴う危険ではないので、通勤災害とは認められません(原則)。

ただし、その事件の社会的な影響や、
類似の事件が起こっている頻度、地域性等により、
通勤災害と認定されることもあるようです。

業務災害も、通勤災害も、
やはり、ケースバイケースのようです。

また、通勤のように、家と会社の往復であったとしても、
それが、
・休日出勤するため、
・仕事の書類を、家に取りに戻るため、
・会社の通勤専用バスに乗っている間、

・・に起こった事故は、業務災害になります。
それが、事業主の指揮命令に基づくという、業務遂行性があるからです。

同じように、出張中の行動も、業務性を帯びています。
出張が、事業主の指揮命令に基づくからです。

ですから、家から出張先までの間と、出張先から家までの間の移動は、
通勤ではなく、業務になります。(原則)

ただし、お土産を買うために、通常の経路を逸脱した間の事故は、
業務災害にならない可能性があるので、気をつけましょう。

以上、業務災害と通勤災害の違いを
簡単にお話ししました。


そして、ここからが本題です。

同じ労災でも、それが、
業務災害か、通勤災害かで、その後の補償が変わってきます。

たとえば、労働基準法には、

事業主は、業務災害で被災した労働者に対し、
療養、休業、障害、死亡に対する補償をしなければならない、

という「災害補償」の規定があります。
http://archive.mag2.com/0000260659/20081207222943000.html

ただし、労災保険からの給付が行われれば、
事業主は免責されます。 

しかし、労災保険が任意加入である一部の事業主は、
事業主自身が金銭補償をしなければなりません。

また、労災保険から給付されるとしても、
休業する最初の3日間は、労災保険では補償されません。
ですから、事業主がその間の補償をしなければなりません。

さらに、業務災害の場合、その休業中、および復帰後30日間は、
労働基準法19条により、解雇が禁止されています。

以上の補償は、業務災害が対象です。
通勤災害は対象外です。


他にも、

◇通勤災害の場合、療養給付を受ける際に
 200円の自己負担が発生する。(原則)

◇年次有給休暇の要件である出勤率を算定する際に、
 業務災害での休業期間は「出勤」とされるが、
 通勤災害は「欠勤」扱いになる。

◇平均賃金を算定する際も、
 業務災害での休業期間は、算定対象から除外されるが、
 通勤災害の休業期間は除外されずに、
 結果、低額になってしまう。

など、同じ労働災害でも、
業務災害の方が手厚くなっています。
 
ただし、外科後処置やリハビリ、義肢等の支給、
労災就学援護費、特別支給金 等は、
業務災害でも通勤災害でも受けられます。


どっちが得か、という問題ではありませんが、
みなさん、くれぐれも災害に遭わないようお気をつけください。


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