■ 偽装請負

みなさんも新聞等でご存知かと思いますが、
厚生労働省研究会は、

 偽装請負や二重派遣が発覚した場合、
 その受入れ先企業に労働者を直接雇用させる制度を作るべき、

との意見で合意しました。

今まで、派遣法違反が発覚しても派遣先に対する処罰には
及びませんでした。

私自身、この研究会の意見には賛成です。


なぜ偽装請負や二重派遣はなくならないのでしょうか?
そもそも請負ってなに?
派遣とどう違うの?
偽装請負って?

と疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。

二重派遣については、メルマガ13号をご覧ください。


簡単にご説明します。

派遣とは、
 ・AはB派遣会社と雇用契約を結び、C社に派遣され、C社員の管理下で働く。
 ・派遣先への請求は、 時間単価 × 労働時間

請負とは、
 ・AがB請負会社と雇用契約を結び、C社内で、B社員の管理下で働く。
  C社はAに仕事の指示などをしてはいけません。
  指示していいのは雇用主であるB社だけです。
 ・注文主への請求は、1個の単価×完成品の数 
  つまり、この仕事でいくら、という考え方です。
  労働時間ではありません。

偽装請負というのは、
 請負契約でありながら、実態は派遣。

 よくあるのが、請負契約なのに、
 現場では派遣先の社員と同じラインで働き、
 派遣先の社員から指揮命令を受けている。

 この場合、派遣元と派遣先の契約が「請負契約」であっても、
 実態は労働者派遣と判断されます。

 また派遣先への請求も、計算自体は 時給×労働時間 ですが、
 証拠となる請求書には、1個の単価×完成品の数 で印字されます。
 つまり、偽造ですね。
 

では、なぜ偽装請負は悪なのか・・・?
それは、二重派遣と同じように、労働者に不利だからです。


正規の請負契約の場合、請負労働者に対する使用者責任は、
すべて請負会社が負います(原則)。

正規の派遣契約の場合は、派遣元はもちろん、
派遣先の企業にもこの使用者責任は及びます。

たとえば・・・
・労働基準法では、
 労働時間の管理、休憩の与え方、休日など

・労働安全衛生法では、
 有害業務の健康診断は派遣先の責任、
 労災事故が起こった場合、労働者私傷病報告は派遣先も提出。
 事故の内容によっては派遣先も調査されたり企業名が公表される
 リスクも・・・。

・派遣先責任者の選任義務、苦情処理機関の設置、安全衛生教育の実施等
 
これはほんの一部ですが、
このような使用者責任は、正規の請負契約であれば
請負会社が負います(原則)。


派遣先企業にとって偽装請負契約にするメリットは、
この労災事故をはじめとする労働法での使用者責任を
直接負わなくていいということです。
派遣先企業にとって非常に都合のいい契約形態なのです。

とはいっても、やってることは労働者派遣です。
時間単価で計算するし、派遣先の指揮命令はあるし。

請負のいいところと、派遣のいいところだけを合体させた
のが「偽装請負」です。

労働者にはなんのメリットもありません。
下手をすると、労災が起こった際に、使用者責任が曖昧になり、
結果、どこからも補償されないという悲惨の事態になることも
ありえます。


派遣元のメリットとしては、
派遣業の許可を取らなくいい、ひいては登録料等のお金がかからない、
簡単に起業できる、契約を締結する際、社会保険加入が派遣契約ほど
強制されない、法定書類が少ない等、多々あります。


以上のように、派遣労働者の利益は度外視され、
派遣元、派遣先だけの都合でいいように使われてきたのが
偽装請負労働者です。

まさに企業のご都合主義、利益至上主義の産物です。

派遣元はもちろん、派遣先にも取締りが及ぶようになれば、
今のような状況は少しは改善されるかもしれません。

しかし歴史を振り返ると、イタチゴッコ。
また脱法まがいの詭策が出てくるかもしれません。

今後は、行政がもっと目を光らせ、悪質業者の取締りを強化することが
今以上に要求されることでしょう。



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