中途採用(スペシャリスト)の解雇
  平成21年2月15日
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『一定の能力』を期待されて中途採用されたのに、

見掛け倒しだった、
期待はずれだった、

という場合に解雇できるのか。


ちなみに普通解雇は、

たとえば、
仕事が出来ない、勤怠が悪い、反抗的な態度を取る、
ぐらいの理由では認められないのが現状です。

なぜなら、日本は長期雇用制度を採っているので、
裁判所も、労働者を保護する立場に立っているからです。

ですから、解雇を検討する段階にあるならば、
注意、指導、教育、配置転換等の解雇回避努力をしておく。
その客観的な証拠も残しておく。
退職勧奨も試みておく。

それでも改善の見込みがないのであれば、
解雇もやむなし、という手順を踏むのが一般的です。。


では、
『一定の能力』を期待されて採用された場合の解雇は
どのように判断されるのでしょう。

まずは裁判例を見てみましょう。

【ヒロセ電機事件 H14.10.22 東京地裁】
業務上必要な語学力、品質管理能力に期待して、それなりの高待遇で採用したが、
その予定された能力を有しておらず、また、それを改善しようともしない場合は、
解雇もやむを得ない。


【フォード自動車事件 S59.3.30 東京高裁】
高度の職業能力を買われて中途採用されたのに、それを発揮しなかった場合は、
配転等の解雇回避努力の程度は軽減され、また、能力不足・適格性欠如
を理由とする解雇の有効性も、通常よりは肯定されやすい。

つまり、
即戦力を期待された中途採用者の能力が、
期待はずれで終わった場合の普通解雇は、
通常の解雇よりも認められやすい、ということです。


とすると、争点になるのは、

◆そもそも、『一定の能力』を期待しての契約内容だったのか。

◆賃金等の労働条件は、その職務にふさわしく優遇されていたのか。

◆この中途採用者の能力が、本当に解雇に値するほどに低かったのか。

◆能力不足、適格性欠如とした会社の判断は、
 本当に本人だけの責任なのか。社内体制に問題はなかったのか。

などが争われます。

そして、これらの要件を満たせば、
解雇は認められやすくなるということです。


以上のことを踏まえ、
企業側は、採用時や面談時に、

●どのような業務内容なのか、
●どういうスキルやレベルを求めているのか、
●どのような仕事を任せたいのか、

等を明記した雇用契約書を取り交わし、
その際の賃金額は、職務に見合う程度に優遇されたものにしておくこと。

さらに、採用までの経緯(人材紹介会社を経由した等)の
証拠も残しておくこと、 をお勧めします。


労務問題は、いつ勃発するかわからないのが恐ろしいところ。
であれば、最悪の場面(訴訟)を見据えた対策を講じておくのが、
一番のリスクヘッジになるでしょう。


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