教員免許更新制についての各政党の意見

2009年2月16日、各政党宛にメールで質問しました。
三つの政党から回答をいただきました。



各政党に送信した私のメールは以下のとおりです。

タイトル: 教員免許更新制について
自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、国民新党、各政党の担当者の方へ
 2009年1月27日付の『朝日新聞』「私の視点」欄に「教員免許 更新制実施は見合わせよ」を掲載していただいた三原容子と申します。掲載後かなりの反響をいただきましたが、政治家からの反応はまだありません。
 文末に「かつて法律改正案を簡単に通してしまったように、今度はそれを元に戻す改正案を、超党派でさらりと通していただきたいと、私は願っている。」と書いて多くの方々に読んでいただいた責任上、各政党の反応が知りたいと思います。
 もしご意見をいただけましたら、私のホームページhttp://fm.koeki-u.ac.jp/~mihara/に「教員免許更新制度について」のページを設けて、このメールの文章と共に、いただいた文章を示そうと考えております。ない場合は「返信はありませんでした。」と書きます。3月15日までに、最大400字で私のアドレス宛にお返事をいただけましたら幸いに存じます。

返信をいただいた順に、日本共産党、公明党、民主党の回答をそのまま掲載します。

日本共産
日本共産党は、総選挙に向けた各分野の政策のひとつ「憲法と子どもの権利条約を生かし、子どもの成長・発達を中心にすえた教育に転換します」で、教員免許更新制の中 止を提案しています。その実現に全力をつくしたいと思います。
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2008/20081003_senkyo-seisaku-bunya/index.php?bunya=16
 ご参考までに、該当部分を紹介します。
----以下引用----
「教員免許更新制」を中止します……昨年、自公政権が強行した「教員免許更新制」は、中央教育審議会でさえ二度にわたって「導入には無理がある」としてきたものを、時 の安倍首相が強引に法律を通して具体化させたものです。そのねらいは、教員の身分を不安定にして、政府言いなりの「物言わぬ教師」づくりをすすめることです。しかも、 大量の教員の「講習」が義務づけられるのに講習の開設義務が誰にもない、講習中の代替要員もないなど制度的にも破綻しています。同制度は中止すべきです。

公明党
■教員免許更新制について
教員免許更新制度については、質の高い教員の確保や養成、授業力や生徒指導力など教育現場で必要とされる力の育成、公正な人事制度の構築などが目的とされています。ま た、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と語りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得る ことを目指すものと考えています。
ただ制度の運用にあたっては現場の教員の負担増にならないような配慮が必要です。具体的には教育現場に即した充実した講習の実施や受講の負担費用のあり方の検討、過疎 地域を含めてどの地域においてもー定以上の内容の講習が受けられるような環境整備、弾力的な履修形態の検討等が考えられます。 このような対応を通し教員にとってよりよい、ひいては教育の質の向上をもたらす制度運用が求められます。

民主党
「教員免許更新制度」について
安倍内閣の時に法制化された「教員免許更新制度」の内容は、教員免許状に10年間の有効期間を設け、10年毎に30時間程度の更新講習を行い、修了した者の免許の有効期間を更新するだけのもの。養成課程に関する規定は何も無く、これで教員の資質及び能力の向上が図られるのか大いに疑問。むしろ、教育現場が疲弊するだけの内容と言え、問題の多い法律である。民主党は、教員が職責を全うできるように、教員免許制度を抜本的に見直すとともに、教員の養成と研修の充実を図る。


【参考】2009年1月27日付『朝日新聞』<私の視点>「教員免許 更新制実施は見合わせよ」
     東北公益文科大学教授(日本近代史・教育学)三原容子(顔写真は省略)

 教員免許の更新制度が、新年度から本格実施される。安倍政権の目玉として設置された「教育再生会議」(福田政権で「教育再生懇談会」に衣替え)が「不適格教員」対策 として提唱した制度である。すでに今年度から試行もされているが、現場からは制度への疑問の声が上がっている。今からでも遅くはない。中止を検討してはどうか。

 教師の質を高めるため、終身の教員免許を更新制に改めよというのが教育再生会議の提案だった。それを受けてつくられた教育職員免許法改正案は「問題教師」に対する世 間の風当たりの強さをバックに、あれよあれよという間に国会を通過してしまった。その結果、新年度から毎年、幼稚園から高校までの全教師の10分の1ずつが、大学など で免許更新のための講習を受けることになった。

 しかし、児童生徒から見たら問題のある教師でも、得点力さえ高ければ、更新講習の修了認定テストなど悠々とクリアしてしまうだろう。更新制によってどれだけ「不適格 教師」が排除されるか、効果は疑わしい。

 そもそも更新制などなくても、新米教師から管理職に至るまで現場の教師はことあるごとに研修を受けてきた。自主的な研究会や勉強会に参加する教師も多い。10年目には 10年次研修というのもある。

 教育再生会議や国会議員の方たちはそれをご存じないのか、屋上に屋を架すような講習を新たに課したのである。多忙な教師たちは、またもや負担を負うことになってしま った。おまけに講習費用は個人負担であり、全部で3万円ほどかかるといわれている。

 少々負担が重くなっても、それに見合うだけの意義があるならば良しとしよう。果たしてどうだろうか。講習の会場は主に大学であり、講師を務めるのは大学の教員である 。その立場からみても疑問がある。

 大学改革の渦の中で大学教員も多忙を極めている。講習のために十分な準備をする時間をとるのは難しい。現場経験の豊富な教師に満足してもらえるような講習が実施でき るだろうか。

 また、幼稚園から高校まで直面する課題もさまざまに異なる教師たちに、それぞれの希望に沿うような講習を大学側が用意できるだろうか。今年度の試行を見る限りでは、 満足度は不十分であり、教師の希望とのミスマッチもかなり起こりそうだ。

 教師にとっても大学にとっても不安や困惑が大きく、効果も疑わしい制度を実施していかなくてはならないものなのか。かつて法律改正案を簡単に通してしまったように、 今度はそれを元に戻す改正案を、超党派でさらりと通していただきたいと、私は願っている。