NSR250EFI 開 発 裏 話
NSR250EFI 開 発 裏 話
テキスト
【2サイクルFIの難しさ】
・当時,車はEFIが当たり前の時代で,ぼちぼちバイクにも搭載されていましたが,全て4サイクルENG
でした.2サイクルでは初めての挑戦でした(しかもレーシングENG).どこが難しいのでしょうか?
・結論から言うと,ファイヤリングηv(*1)とモータリングηvの比が4と2では大違いだからという
ことになります.例えば4サイクルではファイヤリングではηvは120〜130,モータリングでは
80〜90ですが,2サイクルではファイヤリングが200以上に対しモータリングでは20〜30ま
で落ち込んでしまいます(*2).
・つまり,インジェクターは火が入っているつもりで燃料を計算し噴射しますが,失火した時も同量を噴
射してしまいます.4サイクルではモータリング時もファイヤリング時の3/4くらいは空気を取り込
んでいますので,なんとか着火が可能で,1回失火しても次のサイクルで再帰が可能となります.
しかしながら2サイクルでは空気量が1/10になってしまい復帰は難しく,すぐにプラグがかぶって
しまいます.特に2サイクルは失火し易い機構で,キャブでは失火時は吸気量に応じた適量の燃料が吸
われますので復帰する可能性が高いのですが,EFIでは失火を検知し燃料噴射量を計算し即時インジェク
ターをコントロールしなければいけないという非常に困難なチャレンジとなりました.
どうやって克服したか? 機密保持契約は一生続きますので,それは言えませんww
*1:イータブイ=体積効率のこと.排気量100に対しどれだけ吸気できたかの割合を指す
またファイヤリングとはきちんと燃焼・爆発している状態,モータリングとは点火せずカウンタ
ーシャフト側から回されている状態のこと(=失火状態)
*2:データはすべてレーシングENGでの数値(実測値)