「ベーゾン市の攻防」
スカード島ミレイル国――正確には、ミレイル教会領と言う――の首都、ミレノ市では、主城にて操兵の修理が一心不乱に行われていた。ここは教会領と言う通り、権力を握っているのは僧侶達である。ここの主城も、政を行うための役所的な意味合いが強い物でしか無く、教会こそがこの国の支配者であった。なお、教会とは普通は神聖ペガーナの団体や建築物を言うが、ここミレイルの教会は例外的に、聖拝ペガーナの僧達が管理している。ちなみに聖拝ペガーナの場合は、本来は寺院と呼ばれる。
だがこの国は、つい先頃まで他国の占領下にあった。スカード島西岸に位置するバリスタ国を中心とした西海岸同盟が軍を発し、ここミレイルと、その南側にあるナインズと言う国に、電撃的に侵攻、占領したのだ。そのミレイル首都ミレノを奪還したのが、オルノーサ王家が提唱し、結成されたスカード島連合の軍である。しかしその連合軍も、操兵隊や騎兵、歩兵に大きく損害を受けており、このままミレイルの西半分を一気に奪回するわけにはいかなかった。
連合軍がここまで大きな被害を受けたのには、理由がある。西海岸同盟の首魁である、バリスタ国の簒奪者、ダーヅェン・バリスタが、隠し持っていた秘宝、呪われし宝珠『オルブ・ザアルディア』の力を開放したのだ。そしてその力は強大であった。死した敵兵や、あろうことか味方兵の死体までもが、生ける死人となって蘇り、連合軍に牙を剥いたのである。そして倒し倒された操兵のうちの狩猟機もまた、死操兵となって連合軍操兵隊に襲いかかった。そのために戦場は混乱し、多大な被害が出たのである。
だが、いくら大きな被害が出たとは言え、西海岸同盟諸国の暴挙を許しておくわけにはいかない。スカード島は全島挙げての争乱から脱して間もない時期であり、今は本来その傷を癒すべき時であるのだ。この戦争を、これ以上大きくしてはならなかった。そのためにも、スカード島連合は、早急に西海岸同盟を叩かなくてはならないのだ。
幸いと言ってはなんだが、従兵機は死操兵化しなかった。元々死操兵化するほどの潜在力が無い機種だと言う事が大きいのだが……。そのため、今回の戦いで破壊された敵味方の従兵機は回収され、早急に修理されている。修理が完了すれば、死操兵化したために修理する事も叶わなかった、2騎の味方狩猟機の穴を埋める事ができるだろう。
その様な事情があり、ミレノ市の主城では、操兵戦力だけでも完璧にするべく、必死の修理作業が行われていたのだ。
フィー達一同は、連合軍にくっついて来たフェリカの元を訪れていた。目的は、ダーヅェン・バリスタの逃亡先を占術で占ってもらうためである。彼等……正確には彼等の仲間であるハリアーには、使命があった。あの宝珠、『オルブ・ザアルディア』を8つ集めて、永遠に葬り去ると言う使命である。現在までに彼等は、『オルブ・ザアルディア』を4つまで集めていた。残るは4つだが、その内の1つをダーヅェンが持っているのだ。
フェリカは宿舎として割り当てられた建物の1室で、水晶球を前に精神集中をしている。そしてその口がゆっくりと開かれた。
「冠を被りし赤き嘴の烏、その下に恐怖の核たる珠はあり。双頭の蛇が烏を庇護す。されど双頭の蛇の腹に、邪なる神の僕の影あり。風纏いし魔導師、恐怖の核たる珠を求めん。其は死と破壊の嵐を撒き散らさんとす。心して備えよ……。
と、まあこの程度かねぇ。」
「だから……まあこの程度かねぇ、じゃ無ぇっての!せっかく格好付けてんだから、最後までソレでやれよ!」
ブラガが文句を言った。フィーがそれには構わず、占術の内容を纏め直す。
「ええと、まず出て来たのは『冠を被りし赤き嘴の烏』ですよね。どこかで見た様な気がするんですけれど……。」
「バリスタ準爵家の紋章だ。見たのは、ここミレノ市の教会前で、掲げられていた旗でのはずだね。」
クーガが解説する。一同は納得した。フィーが続ける。
「とすると、要はバリスタ準爵……つまりはダーヅェンですね。それが宝珠を持ってる、と。」
「何よ、既に知ってる事じゃないの。」
「まあまあ。そして『双頭の蛇』が『烏』つまりダーヅェンを庇護下に置いてる。ただ『双頭の蛇』の腹……つまり内懐には、既にトオグ・ペガーナの手が伸びてる……って事でいいのかな?」
シャリアを宥めつつ、フィーは占われた内容を解釈していく。彼は仲間達に訊いた。
「双頭の蛇も紋章だと思うんだけれど、その紋章って、誰か知ってますか?」
「あたしは貴族とかには詳しくないのよ……。」
「すいません、私もわかりません。」
「すまない、私もスカード島の全騎士、全貴族、全国家の紋章を熟知しているわけでは無いのだよ。」
「俺に聞くな。」
仲間達は、残念ながら頼りにならなかった。フィーはフェリカに顔を向ける。だがフェリカも首を左右に振った。
「あたしもちょっと分からないねぇ……。」
「駄目か……。」
「そんな事ないさね。それが紋章だって言うなら、周りにいる騎士さま達に聞いてみりゃいいのさ。」
フェリカは気軽に言う。フィーは少し考えた様だったが、結局頷いた。
フィー達は疲れた顔をして、連合軍の兵達と食事を摂っていた。連合軍で狩猟機を駆っている騎士達は、死操兵を倒す切っ掛けをくれたフィー達に好意的であり、質問には気軽に答えてくれた。だが結局の所、有益な情報は得られていなかったのである。そしていくら相手が好意的であり、気軽だとは言え、身分が上の相手と話すのは大層疲れる物なのだった。
ブラガが面白くなさそうに言う。
「結局のところ、双頭の蛇っていう紋章は、誰も聞いた事なかったか。」
「1匹の蛇が杖に絡んだ紋章とか、双頭の鷲の紋章とかはあったんですけどね。あと大陸の方には2匹の蛇が絡んだ剣もあるか。だけど『双頭の蛇』は無かったですね、結局。」
「もしかしたら、紋章じゃあ無いのかもね。あだ名とか、ひょっとしたら地名とか。」
フィーの台詞に、シャリアが思いついた様に呟いた。全員の顔がそちらを見る。シャリアは思わず退いた。
「な、何よ……。」
「いえ、その考えが正しいのでは、と皆思っただけですよ、シャリア。」
ハリアーが優しく言った。シャリアはほっとした様に笑う。そこへ1人の小姓――おそらくはクロイデルの――がやって来る。
「フィー殿の御一行ですね。夫君殿下がお呼びです。食事が終わってからでよろしいので、おいでください。」
急な呼び出しに、一同は顔を見合わせた。
フィー達一同は、クロイデルの前で直立不動でいた。以前クロイデルは、普通にしていて良いと言ったが、今は他の者もいる前だ。この場では、あくまで夫君殿下に対する礼を取らねばならない。
クロイデルは徐に口を開く。
「よく来てくれたな。実は諸君に、ぜひとも頼みたい事がある。無論、諸君らの目的に反する物では無い。」
「はっ、なんなりとお申し付け下さい。」
フィーは一同を代表し、直立不動のまま応える。クロイデルは重々しく頷くと、フィー達一同を見渡して言った。
「実は諸君らに、ダーヅェン・バリスタの行方を捜索してもらいたい。その際、諸君らの行動には最大限の便宜を図らせてもらう。無論、出来得るならば捕らえてもらっても構わないし、万が一殺してしまう様な事になった場合も、目を瞑ろう。それと見つけたら、あの占術師のフェリカを介してこちらに連絡をくれれば良い。」
「はい……。で、ですが……。」
「勿論情報が少なすぎる事は、承知の上だ。そこを曲げて頼みたいのだ。山師には、山師なりのやり様があるだろう。無論、こちらでも捜索に手は尽くすが、今はミレイル全土の解放が優先されるのだ。今、西海岸同盟軍に攻められている、キムナストを支援する意味でもな。」
フィーは仲間達の顔を見遣る。皆は頷いた。それを見てフィーは心を決める。
「はい、お引き受けいたします。」
「そうか、感謝するぞ。では下がって良い。」
クロイデルに礼をし、フィー達一同はその場から退出した。シャリアがフィーに向かって文句を言う。
「なんでフェリカの占術の事、言わなかったのよ?」
「フェリカさんは腕は確かだと思うけど、知名度が無い人だからね。偉い人からの信頼が、あまり無いのさ。そう言った人の占術を元にして動く、なんて事をクロイデルさんはともかく、他の偉い人達の前で言ったりしたら、一寸ね……。」
シャリアはむくれる。
「なんか嫌な感じ。」
「世の中、そんな物だよ……。」
フィーは遠い目をして言った。
捕虜となって拘束されているバリスタ国の高級士官を前に、フィー達一同はどう尋問すべきか考えていた。フィー達はダーヅェンの逃亡先を知るために、クロイデル達スカード島連合軍上層部に、捕虜の尋問をさせてもらえる様に願ったのだ。要請はあっさりと通り、捕虜の中で最も位の高いこの高級士官の尋問が許されたのである。この高級士官は、ダーヅェンの側近であり、同時に西海岸同盟軍の将の1人でもあった。名をディフォンズ・ダラーと言う。
ディフォンズは言葉少なに言った。
「誰が来ても同じだ。何も話す事は無い。」
「大した忠誠心だな。けどよ、ダーヅェンはお前らを捨てて逃げたんだぜ?」
「……。」
ブラガの揺さぶりにも、ディフォンズは動ずる事なく、ただ黙して語らなかった。フィーは仕方無い、と言う様にクーガに向かい頷く。頷き返したクーガは、ディフォンズが座る椅子の前に立ち、心で念じて『魂の指輪』の秘められた力を開放する。クーガはディフォンズの肩に手を置いて、彼に訊いた。
「……ダーヅェン・バリスタは何処に逃げたのかね?」
「……。」
「では、『双頭の蛇』と言う言葉に、何か聞き覚えは無いかね?」
「……。」
「キムナスト遠征軍の編成は、どうなっているかね?」
「……。」
「ナインズ国に残っている兵力は?」
「……。」
「バリスタ本国の残存兵力とその編成は?」
「……。」
ディフォンズは、一切反応を返そうとはしなかった。しかし『魂の指輪』には、他者の心を読む練法の力が秘められているのだ。質問をされて、その答えを思い浮かべないと言う事は、特別な訓練を受けた者以外には困難である。そしてディフォンズは、特別な訓練を受けた者ではなかった。
思いつく限り、洗い浚いの事を質問したクーガは、ディフォンズの肩に置いた手を離す。そしてフィー達を促して、部屋の外へ出た。
「……どうでしたか、クーガ?」
「うむ、彼は直接にはダーヅェンが逃げた場所を知らなかった。だが『双頭の蛇』と言う単語には引っ掛かる物があった様だな。」
ハリアーの言葉に答えたクーガの、その台詞に一同は色めき立った。ブラガとシャリアが騒ぎだす。
「ちょ、それは!」
「ねえねえ、『双頭の蛇』って、どういう意味だったの!?」
「み、皆、クーガさんの話をまず聞こう!」
フィーが一同を宥め、皆が落ち着いた所でクーガが話を続ける。
「『双頭の蛇』は、人のあだ名の様だね。キムナストに攻め入った軍を率いている将と、その弟の2人の事を言うらしい。彼等は1人ずつが蛇に例えられている。名前は確か、ジャバー・ズナイクとテイダーン・ズナイク。
ディフォンズの知っている限りでは、特に優れた将では無い様だが、兄弟そろって執念深い性質の様だ。それで蛇に例えられているのだね。それが2人いるから、『双頭の蛇』と言うわけだ。」
「げ、そんな奴らが相手なのかよ。」
ブラガは嫌そうな様子だ。と、フィーが泡を食った様子で言った。
「ちょ、一寸待って下さい。となると、ダーヅェンはキムナスト遠征軍に保護を求めたわけですか?」
「そうなるな。だから私はキムナスト遠征軍の編成を訊いたろう。もっとも、もしも外れだった場合の事を考えて、ナインズ駐留軍や国元のバリスタに残っている軍勢についても訊いたがね。」
クーガは平板な声で言う。シャリアはふと思いついた様子で、口を開いた。
「ねえ。その兵力の編成に関する情報って、クロイデルさん達にも教えた方が良いんじゃない?」
「うむ。ただこの情報はハリアー、君が僧侶の秘術で心を読み取って得た事にしておいてくれないかね?」
クーガの言葉に、ハリアーは頷く。一般の人々には、その様な説明をした方が、まだ受け入れられ易いからだ。
ブラガが一同に向かって話す。
「んじゃあ、キムナストに向かって出発しないとな。保存食料とか、その他の消耗品とかも、たっぷり貰っておこうぜ。準備は万全にしとかないとな。」
一同は、ブラガに向かって頷いて見せた。
1日が過ぎた後、フィー達一同はキムナストの地を踏んでいた。彼等はディフォンズの尋問で得られた情報を報告した後、すぐにミレイル首都ミレノを出立していたのだ。正直旅立つには中途半端な時間ではあったが、一刻も早くダーヅェンの足取りを掴みたかった事や、これ以上宝珠『オルブ・ザアルディア』を放置して置くのは危険である事もあり、昼過ぎにミレノ市を出て来たのである。当然、途中で一泊野営をする羽目になったが、慣れている彼らには大した事は無かった。
ちなみに彼等は、クロイデルを始めとしたスカード島連合軍の全面的な支援を受けていた。保存食や様々な消耗品はおろか、軍用の詳細な地図の写しなども彼等は受け取ってきていた。更には、いざと言う時のためにスカード島連合軍の軍旗までも1組借り受けて来ていた。これはいざと言う時の、身分証明になる。もっとも、おいそれと使う事ができない代物でもあったが。
フィーが狩猟機ジッセーグ・マゴッツの操手槽内で、軍用地図を広げて言う。
『この道をまっすぐ行けば、西海岸同盟の遠征軍が拠点として接収した村々の1つに行きあたるはずですね。』
「だがその村には既に輜重部隊ぐらいしか残っていないはずだね。ディフォンズの心を読んで得た情報によれば、遠征軍の主力は既にキムナスト第2の都市、ベーゾン市を包囲しているはずだ。」
クーガがフィーのジッセーグに向かって言った。その顔は仮面に覆われており、表情は窺えない。もっとも窺えた所で何時も通りの無表情なのだろうが。彼は続ける。
「遠征軍の主力総数は、狩猟機16騎、従兵機が25台、騎兵歩兵が合わせて2,800と言う大戦力だ。その中にダーヅェンが逃げ込んだとなれば、少々やりづらい事態ではあるな。少なくとも、こちらの狩猟機3騎では、太刀打ちできまい。」
『ダーヅェンが逃げ込んだかどうか確認するには、どうしたもんだろうな?』
狩猟機フォン・グリードルから聞こえてきたブラガの声に、クーガは肩を竦めながら答える。
「目印になるのは、ダーヅェンの馬車だな。それが陣中にあれば、そこにダーヅェンが逃げ込んだ証拠になる。」
「なるほど、その通りですね。ではこの辺から山中の裏道に入って、ベーゾン市の近くまで行ってみましょう。」
ハリアーが提案する。わざわざ通行が困難な険しい裏道に入るのは、彼等の姿を見られたくないがためであった。操兵で山道を行く困難を思い、狩猟機エルセ・ビファジールのシャリアが愚痴を吐く。
『あ〜あ、また山道かあ……。操兵で行くのは厳しいのよねぇ……。』
『シャリア、シャリア。急がないと、置いていかれちゃうよ。』
『あ、ま、待ってよ!今行くって!』
フィーの言葉に、シャリアは慌てた、彼等は街道から外れ、険しい山道へと踏み込んだ。
キムナスト第2の都市、ベーゾン市は山間の小さな平地に築かれた街である。ここは崖の法面にへばり付く様な形で、街が形作られていた。市壁は高く頑丈で、籠城戦に適した街である。
フィー達は山中を歩きまわり、ベーゾン市が見下ろせる様な場所を探していた。その時、シャリアが驚いた口調で言う。
『ちょっと、フィー!今感応石の端に反応が出たんだけど!これは……従兵機ね。3台いるわ!』
『なんだって!?……こっちの感応石にはまだ反応は無い。こんな山の中に、操兵を持ち込むなんて、何処の誰だろ?』
「我々も、この様な山中に操兵を持ち込んでいるがね……。とりあえず、私とハリアーで様子を見て来よう。」
フィーの疑問に軽く突っ込むと、クーガはハリアーを伴って馬で先行偵察に出た。フィー、シャリア、ブラガの操兵に乗った3人は、この場で騎馬組2人の帰りを待つ。やがて2人が戻って来た。クーガが皆に報告する。
「たしかに従兵機が3台だ。そしてそれに加え、工兵が6人ほどいた。どうやら、この先の崖上から、その真下になっているベーゾン市の街中まで、軽装従兵機を鋼線で吊って降ろそうとしている様だ。ベーゾン市を奇襲しようと言う作戦らしいね。ちなみに軽装従兵機は、ガレ・メネアスを改装した物だ。」
「……つまりは、ベーゾン市を攻めている側、西海岸同盟の特殊部隊だと言う事です。機体に描かれている紋章も、同盟軍の物でしたし。」
ハリアーがクーガの話を捕捉した。ブラガがフィーに向かい、尋ねる。
『じゃあ、どうする?他の場所を探すか?』
『いえ、その部隊を殲滅してその場所を確保しましょう。その作戦を放っておいて、成功でもされたら、ベーゾン市は陥落しかねません。』
『了解!じゃあ行きましょう!』
フィーの決定に、シャリアが賛同する。他の者も、まあ異論は無い様だ。フィーが先頭に立って、操兵を走らせて行く。シャリアとブラガも後を追うが、操縦技量が違うために、足場の悪い山道では少々引き離され気味だ。クーガとハリアーも、馬を走らせた。
そしてフィーは、ベーゾン市を見下ろす高台の広場に辿り着いた。そこでは工兵が鋼線の巻上げ機を設置して、軽装従兵機にその鋼線を繋ぐ作業中だった。操兵の走る時に立てる騒音はかなりの物であるために、その部隊の者達はフィーの接近に既に気付いている。彼等は作業を中断し、従兵機に小ぶりの戦斧を持たせてフィーのジッセーグ・マゴッツに襲いかかって来た。
フィーは機体の足を止め、操兵に魔剣を構えさせて敵が攻撃圏内に入って来るのを待ち構えた。そして先頭の軽装従兵機が剣先の届く所に来た瞬間、彼は魔力の込められた破斬剣を振り下ろす。魔剣の刃は、軽装従兵機の武器を持った右腕を斬り飛ばした。その従兵機の操手は、だが戦意を失わず、操兵の左手で落ちた武器を拾い上げる。更に他2台の従兵機も、戦斧でフィーのジッセーグに斬りかかってきた。フィーのジッセーグは、その攻撃を軽く躱す。
そして一拍遅れてシャリアのエルセ・ビファジールと、ブラガのフォン・グリードルが戦場に到着した。彼等の操兵は、各々の武器で無傷の従兵機1台ずつに斬りかかる。これで1対1の組み合わせが3組出来上がった事になる。だが、ただでさえ狩猟機と従兵機の間にはかなりの性能差がある。しかも敵側は、崖を降りると言う特殊任務のために無理な改造を施された、軽装従兵機だ。まずフィーのジッセーグ・マゴッツが持つ魔剣に機体を貫かれて、1台目の軽装従兵機がばらばらに分解する。そしてシャリアのエルセ・ビファジールの二刀流が閃き、2台目の軽装従兵機が両腕を失って転倒し、動かなくなった。3台目の軽装従兵機もまた、ブラガのフォン・グリードルに機体を叩き壊される。操兵同士の戦いは、フィー達の圧勝に終わった。
フィー達が戦いを終えて、周囲を見渡すと、クーガとハリアーもまた、6人いた工兵達を制圧していた。クーガはまず敵中に飛び込み、周囲の者を眠らせる術を用いた。幸いな事に、敵工兵は全員が術に抗う事ができず、眠り込む。これにより、あっと言う間に敵は制圧されたのである。ちなみにハリアーは、何もする暇が無かった。
フィー達は操兵を降り、生き残った敵を縛り上げた。と言っても、敵で死んだ者は従兵機の操手のうち1人に過ぎない。残りは全員が生き残っていた。ブラガは仲間達に問いかける。
「こいつら、どうする?」
「まずはダーヅェンが何処にいるか、話を聞いてみましょう。」
フィーが答えた。ブラガは頷き、捕虜達に問うた。
「なあ、お前ら。ダーヅェン・バリスタが何処にいるか、知ってるだろ?教えちゃくれねぇかい?」
「断る!ダーヅェン様を裏切る様な真似は、絶対にできん!」
「そうだ!」
「殺すなら、殺せ!俺達は絶対に屈しないぞ!」
「……駄目だ、こりゃ。クーガ、例のアレ、やるしか無いんじゃねーか?」
ブラガは、この者達の心を読んでみる他無いのではないか、と言っているのである。だがハリアーが割って入る。
「待ってください、少々考えがあります。うまくすれば、この人たちをダーヅェンの呪縛から解放する事にもなります。」
「……いちいち呪縛を解除していては、とてもやっていられた物ではないぞ?しかもこの人数では、全員の呪縛を解くまでに力尽きてしまうだろう。」
クーガの言葉に、ハリアーは笑って言う。
「まあ、見ていてください。ああ、皆さんは術の影響を受けない様に、離れていてくださいね。クーガは特に注意してください。」
ハリアーの言葉に、仲間達はかなり遠くまで離れる。ハリアーは捕虜達の中心まで歩いて行く。そしてそこで八聖者に祈りを捧げ、彼女は招霊の秘術を使った。その瞬間、捕虜達の顔色が変わる。彼等は縛られたままではあるが、あわててハリアーに頭を下げた。ハリアーは彼等に言う。
「皆さんにお願いがあります。」
「は、はい!なんでも言ってください!」
「なんなりと、お申し付け下さいませ!」
「ああ、ありがたや……。」
捕虜達の変わり様に、フィー達は唖然とする。ただクーガだけは、なるほど、と頷いていたが。ハリアーは捕虜達一同に訊いた。
「ダーヅェン・バリスタが今何処にいるか、教えてくださいませんか?」
「そ、それは……。し、仕方ありません。お教えしましょう。ダーヅェン様は、今本陣にいらっしゃいます。」
捕虜の1人、従兵機の操手だった男が言った。他の捕虜も、仕方なさそうに頷く。ハリアーは続けて彼等に向け、徐に言う。
「どうもありがとうございます。では、貴方がたを解き放とうと思いますが、その前に……。どうかダーヅェンに味方するのは、今後もうやめてください。」
「ええっ!?」
「そ、そんな!」
捕虜達から悲鳴が上がる。だがハリアーの術には逆らえない様子で、彼等はがっくりと頭を下げた。
「仕方ありません。あなた様の言う事であらば……。では我々はこれから、どうしたら良いのでしょうか。」
「ここから南、ミレイルの首都ミレノに行って、そこにいるスカード島連合軍に降伏してください。いいですね?」
「はい、仰せの通りにさせていただきます。それでは途中、接収した村に寄って、馬を借りて行こうと思います。」
捕虜達一同は、一斉に頭を下げた。ハリアーは捕虜達の縄を解いて行く。捕虜達は、ぞろぞろと山道を、南へ向かって歩き始めた。
フィー達は、ぞろぞろとハリアーに歩み寄って来る。シャリアが口を開いた。
「いやー、凄いわねハリアー!あいつら皆、ハリアーの言うがままじゃないの!」
「正直、相手の呪縛の上に、こちらの呪縛を重ねた様な物ですがね。」
クーガはそんな2人の様子を見つつ、言葉を発する。
「さて、どうするね。ダーヅェンの居場所はわかった。ではどうするか。……正直、ここで敵従兵機を3台潰したが、それでもまだ敵とこちらの戦力差は圧倒的だ。」
「まずはフェリカさんを通じて、クロイデルさんに報告しましょう。ブラガさん、『遠話の首飾り』でお願いできますか?」
「わかった。ちょい待ってろ。」
フィーの頼みをブラガは快諾し、首飾りに念を送り始めた。
「んー。フェリカ、フェリカ聞こえっか?」
(ん?ああ、あんたブラガかい。どうしたんだい?ダーヅェンの居所でも掴んだかい?)
ブラガの脳裏に、フェリカの声が響く。ブラガはフェリカにダーヅェンの居所を伝える。
「ああ。ダーヅェンの野郎は、今キムナストの街、ベーゾン市を攻めてる西海岸同盟軍の、その本陣にいるそうだ。同盟軍の兵士を捕らえて尋問したから、まず間違い無ぇ。そっちはどんな具合だ?」
(こっちは明日にはここミレノ市に少数の部隊を残して、ミレイル西半分の制圧に向かう事になってるみたいだよ。操兵の修理も目処が付いたみたいだし、ね。)
「そっか、そいつぁ良かった。こっちはちょいと手づまりでなあ。ダーヅェンの居所が分かったのはいいんだが、大軍の中だもんで、ちょいと手が出せねぇ。」
ブラガはどうしようもない、と言った感情を思念波に乗せて送り出す。フェリカは慰める様な感じで、それに応えた。
(まあ、しばらく我慢するんだね。ベーゾン市には、今スカード島連合軍のキムナスト救援部隊が、キムナスト軍と共に向かってるはずだからねぇ。)
「ってぇ事は、援軍の到着までベーゾン市が持ち堪えれば、こっちが手を出す余裕も出来るって物だな?」
(ま、そう言うこったねぇ。)
その時、フィーが皆に言った。
「皆、ベーゾン市に入城しないか?このままだと、ベーゾン市は援軍が来る前に陥落しかねない。ブラガさん、援軍は来るんでしょう?」
「あ、ああ。フェリカはそう言ってる。」
「陥落までの時間を少しでも引き延ばせれば、ベーゾン市は援軍の到達まで持ち堪えられるかもしれない。」
フィーの台詞に、ハリアーとシャリアは頷いた。クーガは少しの間考えたが、彼も頷く。ブラガはそれを見て言った。
「わかった。じゃあベーゾン市に入城することにすっか。フェリカ、まだ術は打ち切ってねぇよな?」
(ああ、大丈夫。打ち切ろうかとも一瞬思ったけどねぇ。)
「おいおい。んじゃあ、ちょいとクロイデルさんに報告がてら聞いてみてくんねぇか?預かってきた軍旗、使っていいかどうか、よ。」
(わかったよ。用事はそれだけかい?じゃあまた後でね。)
遠隔通話の術を打ち切り、ブラガは溜息を吐く。『遠話の首飾り』による遠隔通話は、首飾りの持ち主にかなりの精神的疲労を与えるのだ。
フィー達一同は、高台の広場からベーゾン市とその周辺を眺めた。西海岸同盟のキムナスト遠征軍は、数組の陣に分かれてベーゾン市を包囲している。もっとも街の西側は直接山になっており、さすがにそちらまでは部隊を展開してはいない。シャリアは遥か下の様子を見つつ、言う。
「……あいつらが残していったこの巻上げ機とかの装備を使えば、この崖を操兵で下りられないかな。そうすれば楽に街に入れると思うんだけど。」
「う〜ん、ちょいと操縦が厳しいんじゃねぇか?フィーなら出来るだろうが、よ。」
「でも、一度山を下りて、その上で外側から回り込んで街に入るのって、かなり難しいんじゃないかな。あの囲みを破るのは、骨よ?」
「う〜ん。」
シャリアの言に、ブラガは唸る。フィーはクーガとハリアーに訊く。
「お2人は、この崖を下りられますか?」
「ふむ……。その巻上げ機で馬を吊るして下ろし、自分の足で下りればなんとかなるだろうな。」
「私も自分の足で下りれば、なんとか……。」
「じゃあ、この崖を下りよう。囲みを破るよりかは、楽だ。」
フィーは決定を下した。ブラガは、げ、と言う顔をする。
「フィー、お前時々強引だな。」
「……そうですか?」
そこへフェリカから、遠隔通話の練法で連絡が来た。
(ブラガ、ブラガ!聞こえてるかい?)
「おう、フェリカか。どうだった?」
(軍旗の使用は問題なし。お前さん方の判断を信じてるってさ。)
「そっか、助かる。他には何か?」
フェリカは続けて言った。
(援軍だけどね。今夜か明日の朝には到着するってさ。)
「ほう……。でもなんで、そんな事がミレイルにいるクロイデルさんに分かったんでぇ。」
(大抵どこの軍でも、《遠話》だけのために練法使いが雇われてるもんさね。当たり前だろ?)
《遠話》とは、今彼等が行っている、遠隔通話のための練法の術である。これによる通話は、最長で200リー(800km)ほども届く。フェリカは続ける。
(勿論、お前さん方が掴んで来た、ダーヅェンがそっちにいるって情報も、キムナスト救援部隊に届いてるはずさね。)
「なるほどな。ありがとよ。んじゃ、また連絡すらぁ。」
(またね。)
ブラガは遠隔通話の術を打ち切った。連続で『遠話の首飾り』を使用したため、彼はかなり精神的に疲労した模様である。ブラガは音を立てて首を回した。
「あー、疲れたぜ。」
「ご苦労さまですブラガさん。それで何と?」
「軍旗の使用は問題なし。援軍は今夜か明日の朝、だってよ。」
ブラガの返事を聞き、フィーは頷いた。彼は仲間に向かって言う。
「さあ、この崖を下りましょう。」
彼等はまず最初に、フィーのジッセーグ・マゴッツの背中に軍旗を立てる事から始めた。これで彼等が、スカード島連合軍の味方であり、つまりはキムナスト国やベーゾン市の味方である事を示すのである。
そして次に彼等は、クーガとハリアーの馬を崖下まで下ろす事にした。これには少々手間取った。馬が崖の高さを怖がって暴れるからである。そこでクーガが術を使い、2頭の馬を眠らせた。そしてその馬を麻縄で吊るして鋼線に繋ぎ、巻上げ機で下まで下ろした。
その次がフィーの番である。フィーのジッセーグ・マゴッツを鋼線に繋ぎ、懸垂降下の要領で崖下まで下りる。この街は前にも述べた通り、崖の法面に張り付く様にして作られており、崖を下りるとすぐ街中になっている。フィーのジッセーグは、フィーの操縦技量の高さもあって、見事に崖下まで下り立った。
その頃になると、街を護っている守備隊の中にも、崖を下りて来る操兵に気付く者が現れる。そしてキムナスト軍ベーゾン守備隊が、一部の兵を崖下まで向かわせて来た。2台の従兵機の姿すら見える。フィーは操兵の拡声器を使い、声高に叫んだ。
『私はスカード島連合の傭兵フィー!貴君らにお味方するためにやって来た!責任者にお会いしたい!』
そして彼は、ジッセーグの背中に翻るスカード島連合軍の軍旗を指し示す。それを見た守備隊の中から声が上がる。
「おい、あの旗の真中に描かれている紋章は、オルノーサ王家の紋章じゃないか!?」
「間違い無い。じゃあ、味方って本当だったのか!?」
そして守備隊の中から、1人の高級士官らしき人物が進み出る。その人物はフィーのジッセーグに向かって言葉を発した。
「私はキムナスト国ベーゾン守備隊長、エイブ・ミーラー!フィーと申したな。我らに味方するとはまことか?」
『はっ!』
「ふむ……。おい、ここはもう良い!持ち場に戻れ!」
「は、はい!おい、お前ら!持ち場に戻れ!」
エイブの命を受けて、2台の従兵機をはじめとした兵士達は、急ぎ元の配置へと戻って行った。エイブは再度、フィーに向かって言う。
「来てくれて感謝する。だが、何故に崖の上から現れたりしたのだ?」
『元々我等は、西海岸同盟の盟主にしてバリスタ国の簒奪者、ダーヅェン・バリスタを追っていたのです。ダーヅェンはミレイル首都ミレノでの戦いに敗れた後、キムナストを攻めている軍勢と合流致しました。そう、今この街を攻めている軍勢です。あの中に、事の元凶であるダーヅェンがいるのです。
それを追って来た我等は、あの崖の上の高台までやって参りました。そしてそこで、崖を降下しようとしている西海岸同盟軍軽装従兵機隊を発見、殲滅いたしました。その後、外を回って開門を願うよりも、その敵部隊が残した装備を用いて崖を降下した方が安全確実にこの街の守備隊と合流できると考え、そのようにした次第であります。』
その時、シャリアのエルセ・ビファジールがことさらゆっくりと崖を下りて来た。エイブはフィーに問う。
「貴公らの持つ操兵は、この2騎か?」
『いえ、あと1騎ございます。それと騎馬の者があと2名。』
「そうか。あと1騎、と言う事はそれも狩猟機か。狩猟機が3騎となれば、心強い援軍だな。」
フィーはエイブに言い忘れていた事があるのを思い出す。彼は慌ててその事を口にした。
『申し訳ありません、伝えるのを忘れる所でした。我々が受けた連絡では、キムナスト軍とスカード島連合軍の救援部隊が、今夜遅くか明朝には到着する事になっておりますれば……。』
「なに、まことか!ならばその事を守備隊全員に伝えねば。あまりの敵の大軍に、士気が少々落ちかけていたのでな。あと少し待てば味方が来ると言うならば、きっと持ち堪えられるぞ!」
エイブは傍らに控えていた兵士に、各部署への伝令を命じる。兵士は援軍が来ると言う知らせに喜び、走り去った。
その時、ブラガのフォン・グリードルもそろそろと慎重に崖を下りて来た。エイブはしみじみと言う。
「この街にあった操兵戦力は、私の個人所有の機体を合わせても狩猟機2騎、従兵機4台でしか無かった。ここに貴公らの3騎が加われば、明日の朝までなら充分持ち堪えられるだろうて。貴公ら、我が指揮に従ってくれるな?」
『了解いたしました。』
「感謝する。貴公らは街の中央広場に待機し、危険な所へ急ぎ駆けつける遊撃部隊として働いてもらいたい。良いかな?」
『はっ!』
そこへクーガとハリアーも崖を下りてきた。揃った仲間たちは、街の中央広場へと移動して、そこで待機する事になった。
ベーゾン市の中央広場にて、フィー達は知らせが来るまで待機していた。彼等の狩猟機は全機駐機姿勢で置かれており、今は全員が機体から降りている。ブラガが退屈そうに言葉を発した。
「あ〜あ。なあ、あの敵をクーガの地震の術でぜんぶやっちまう訳にはいかねぇのかな。」
「それは危険だ。」
クーガが言う。ちなみに今、彼は仮面を被っていない。理由は人目があるからだ。街の住民は皆、公民館に退避しているとは言え、守備隊の兵士達の目があった。
ブラガは眉を顰めて言う。
「何が危険なんでぇ?」
「あの宝珠ですよ。あの術を使って人死にを大量に出して、宝珠が発動したら大変ですよ。」
「以前あったろう。トオグ・ペガーナの輩を殲滅した時に、宝珠が発動して死操兵や死人を作りだした事が。」
「ああ……。」
ハリアーとクーガの台詞に、ブラガは一旦納得した様な声を上げる。だが彼は、すぐに何かに気付くと言い返した。
「けどよ、あのダーヅェンの野郎が宝珠を発動させても同じ事なんじゃねぇの?前回の戦いで、死操兵や死人が出たのって、そう言う事だったろ?」
「かと言って、私達がその引き金を引くことはできませんよ。上手くいけば、ダーヅェンが宝珠を使う前に取り押さえる事ができるかも知れないですし。」
「そんなもんかねぇ……。」
一応ブラガは、ハリアーに説得された様だった。
その時である。彼等の所まで届く、轟音が鳴り響いた。方角は北である。フィー、シャリア、ブラガの3人は操兵に乗り込んだ。そこへ伝令が来る。
「北の壁が敵操兵の攻撃により破壊されました!ただそちらには、エイブ隊長とナード卿が行かれるそうなので、皆様方には万一の事態に備え、引き続き待機していただきたいとの事です!」
『わかりました。』
『何よ、行かなくていいの?』
『待機してろってんだから、そうしときゃ良いんだって。』
フィーが伝令の兵に応える。シャリアは待機命令に不満そうだったが、ブラガは逆に安心した様子だった。だが一瞬後、南側から似た様な轟音が聞こえて来た。ブラガは憂鬱そうに呟く。
『万一の事態、だな。』
『行っていいのかな?』
『従兵機隊は東の正門を守備している。予備兵力は俺達しかいない。行きましょう皆!』
フィーのジッセーグ・マゴッツが駆け出す。シャリアのエルセ・ビファジールとブラガのフォン・グリードルも、その後を追った。クーガとハリアーもまた、南側の市壁に向けて馬を走らせる。
彼等が南側の市壁に着いたとき、そこの市壁には操兵が通れる様な大穴が開いており、そこから1台の従兵機がゆっくりと後ろへ退いて行く所だった。その従兵機は、背中……と言うか上半身に、巨大な衝角が取り付けられており、それを以って突撃する事で市壁を破壊したと思われる。クーガは眉をぴくりと動かして言った。
「ブル・ドレーク!……あんな骨董品を持ち出すとは。」
「骨董品、ですか?」
「うむ、あれは攻城兵器として造られた従兵機なのだが、通常の格闘戦が全くできない事、堀で囲まれた城には無力な事などから、あっと言う間に製造中止になった機種なのだ。」
彼等がそう言っている間に、ブル・ドレークが退いた場所に1騎の狩猟機が交代して入って来た。どうやらマルツ・ラゴーシュの改造機であるらしい。そしてそこにフィー達の狩猟機が来ている事を見て取ると、その狩猟機は名乗りを上げる。
『やあやあ我こそは、ノーゾ国にその人ありと知られた猛将テイダーン・ズナイクとその狩猟機、トグル・ヴァーンなり。誰ぞ我に挑まんとする、勇気ある者はおらぬかや。』
フィーはジッセーグの首を左右に振らせ、仲間達の様子を窺わせる。シャリアのエルセは頷く。ブラガのフォン・グリードルもまた、頷いて見せた。クーガとハリアーは、フィーに判断を任せるとばかりに黙っている。フィーはジッセーグを前に進みださせた。彼は同時に、操兵との同調を強化する聖刻器の短剣の力をも使う。フィーの精神が、ジッセーグの仮面とより強く結び付けられた。
『その勝負、私が受けましょう。私の名はフィー。貴方とは比べ物にならぬ小物の、一介の山師です。ですが、この街を護るとエイブ卿と約しましたからね。ここから先を通すわけには参りません。』
『よくぞ言った、一介の山師よ。では立ち会おうではないか。』
フィーはジッセーグに魔剣を引き抜かせると、テイダーンのトグル・ヴァーンが抜いた破斬剣と軽く打ち合せる。そして互いに1歩下がり、次の瞬間同時に前へ出た。
『おおおおお!!』
『だああああ!!』
フィーとジッセーグ・マゴッツが吼え、テイダーンとトグル・ヴァーンが叫ぶ。両者は激しく剣を打ち付け合った。つばぜり合いに持ち込んだ状態で、トグル・ヴァーンがじりじりと押す。どうやら腕力ではトグル・ヴァーンの方が上の様だった。だが機動性と操縦の技量では、ジッセーグとフィーの方が明らかに上である。ジッセーグはトグル・ヴァーンの力任せの押しをいなした。トグル・ヴァーンがつんのめる。そこへジッセーグの魔剣が閃いた。
『ぐふっ!』
『うおおお!』
トグル・ヴァーンは左肩に魔剣の直撃を受けた。フィーはこの好機を逃すまいと、連続して魔力の込められた刃を打ち付ける。だがテイダーンも只では転ばなかった。肉を切らせて骨を断つつもりで、自機に命中する聖刻器の破斬剣を無視すると、トグル・ヴァーンが持つ破斬剣の切っ先を突き出す。シャリアが叫んだ。
『フィー!』
『相打ち、か?』
ブラガが息を飲んで言う。確かに相打ちではあった。だがフィーのジッセーグの方が、若干傷が浅い。テイダーンは肉を切らせて骨を断つつもりであったが、逆に肉を切って骨を断たれたのだ。しかしテイダーンは諦めてはいなかった。大きく機体を跳び退らせると、その剣を掲げて構えを取る。フィーもジッセーグの魔剣を正眼に構えさせた。そして両者が再び交錯するその瞬間、両者の間に割り込む者がいた。
それはただの人間だった。いや、ただの人間に見えた。ただしそれが空を飛翔していなければ、の話だったが。その空飛ぶ人間は、フィーのジッセーグの顔に向かって飛ぶと、何かを投げつける。ジッセーグの操手槽でフィーは、映像板が真っ暗になるのを見た。彼は叫んだ。
『塗料弾か!』
トグル・ヴァーンの剣が迫る。誰もがフィーは避けられない、と思った。シャリアが思わず目を瞑る。
だがその破斬剣がジッセーグに当たる事は無かった。トグル・ヴァーンはぎりぎりで剣を止めていたのである。トグル・ヴァーンの拡声器からテイダーンの怒声が上がった。
『愚か者!名誉ある決闘に、泥を塗ってくれたな!?』
「し、しかしテイダーン様。」
『黙れ!……済まぬ、山師フィーよ。この勝負、こちらの負けだ。ここは退かせてもらう。』
一同はあっけに取られた。彼等の得た情報では、ジャバー・ズナイク、テイダーン・ズナイクの兄弟は、蛇の様に執念深いとしか聞いていなかった。しかし目の前のテイダーン・ズナイクは、おそらくは部下であろう人物の先走りを咎め、負けを認めたのである。テイダーンがここまで誇り高い男であると言う話は、聞いていなかった。
しかしそこへ新たな声がかかる。
「そうは参りませぬぞ、テイダーン様。ダーヅェン様に、何と申し開きをするのです。」
『黙らぬか!この腐れ僧侶が!キリフが空を飛んだのは、貴様の術であろう!』
「黙るのはそちらですぞ。ダーヅェン様には、大いなる魔神の意志が御味方されているのです。その御方の大望を実現するためでしたら、どの様な恥辱も我慢なされるべきでは無いのですかな?」
市壁の崩れた所へ新たに現れた男は、テイダーンを叱りつける。テイダーンは黙り込んだまま返事をしない。だが操兵の拡声器から聞こえる歯ぎしりの音からして、どうやら怒り狂っている様だ。
ハリアーが呟いた。
「トオグ・ペガーナ……。」
「ほう!よく分かったな。貴様は何者だ?どうやら徒者ではあるまいに。」
その男は、ハリアーの呟きを肯定して見せる。ハリアーはそれ以上言葉を発せずに、その手に鎚矛を握った。だがその時、男の前に3人の別の男が走り込んで来て、立ちはだかる。同時に、トオグ・ペガーナの僧侶は魔神ジアクスに短く祈りの言葉を捧げた。
その時、フィーのジッセーグが動いた。操手槽の扉が開いて、視界を確保している。魔剣の一撃がトオグ・ペガーナの僧侶を襲った。
『こんのぉ!邪教の輩め!』
「ふん!そんな攻撃など、我が秘術の前に効く物か!」
だが攻撃が決まったにも関わらず、その斬撃はトオグ・ペガーナ僧の身体に当たるとぴたりと止まってしまう。フィーは舌打ちした。
『くそ、打撃を殺す術か!』
そう、この術は招霊の秘術の1つで、一定範囲内の空間において、あらゆる打撃が効果を失うと言う術なのである。この術が効果を持つ空間内では、たとえ操兵による打撃でも威力を失うのだ。
そしてトオグ・ペガーナ僧を護る様に現れた3人の男もまた、両手を組み合わせて祈りの体勢を取る。あろうことか、この3人も――おそらくは下級ではあろうが――トオグ・ペガーナの僧侶であったのだ。そしてその3人は、掌をハリアーに向けて突き出す。するとその掌から、稲妻に似た閃光が放たれ、ハリアーに直撃した。フィーは叫んだ。
『ハリアーさん!ちくしょう!』
フィーは4人のトオグ・ペガーナ僧に向かい、何度もジッセーグの剣を振り下ろす。だがその攻撃は、まったく意味を為さなかった。
しかしブラガが叫ぶ。
『フィー!よく見ろ!ハリアーは無事だ!』
『え?』
ハリアーは、トオグペガーナの下っ端僧侶達の術をその身に受けながら、何一つ打撃を被っていなかった。彼女は両手を組んで、黙々と八聖者に祈りを捧げている。おそらく何か術を使うつもりなのだろう。
そしてハリアーよりも早く、クーガの術が発動する。彼は何時の間にか、仮面を被っていたのだ。突然、4人のトオグ・ペガーナ僧のいる所で、カマイタチの嵐が巻き起こる。クーガが一瞬念じただけで、この術を発動させたのだ。トオグ・ペガーナ僧達は、カマイタチによりずたずたに切り裂かれた。彼等の悲鳴が上がる。
「ぎゃああぁぁっ!」
「ひいいっ!」
「うわああぁぁぁっ!」
「ぬううっ!」
次の瞬間、ハリアーの術が発動した。天から雷が降り注ぎ、トオグ・ペガーナ僧達を焼き尽くそうとする。3人の下っ端僧侶達は、ひとたまりも無く倒れ伏した。だがただ1人、頭目格のトオグ・ペガーナ僧だけは生き残り、何やら魔神ジアクスに祈りを捧げている。おそらくは何か招霊の秘術を使おうと言うのであろう。しかしそのトオグ・ペガーナ僧に、術を使う機会は訪れなかった。
シャリアの気合いの乗った叫び声が響いた。
『これでも……くらいなさいッ!!』
エルセ・ビファジールの面当ての下から、明滅する光が溢れ出る。操兵の仮面に埋め込まれた聖刻石が輝きを放っているのだ。そしてエルセの突き出された手から、凄まじい『気』の塊が放出される。操兵により尋常でない威力まで増幅された『気』の塊は、トオグ・ペガーナ僧を直撃する。名も知れぬトオグ・ペガーナ僧は、全身から血を吹き出して地面に倒れた。
フィーがテイダーンに向かって言葉を発する。
『……余計な事をして、余計な事を言った奴は死にました。勝負は無かった事にしましょう。……今の所は、これで引き上げてもらえますか?』
『……うむ。だが何時の日か、必ずこの決着はつけようぞ。そちらの援軍が近づいていると言う報告は、こちらでも受けている。ここで勝てなかった以上、この戦はこちらの負けだな。急ぎ、撤退せねばなるまい。ダーヅェン様は敗北を認めたがるまいが……。
ではさらばだフィーよ。お前の名、覚えておくぞ。』
テイダーン・ズナイクは、そう言うと傷ついたトグル・ヴァーンに踵を返させた。トグル・ヴァーンは、真っ直ぐ自陣へと歩いて行く。フィー達はそれを見守った。
その時、クーガが叫ぶ。
「ブラガ!君の『遠眼鏡』を貸してくれないか!」
『お、おいおい。一体どうしたんでぇ。』
「まさかとは思うが、必要なのだ。」
ブラガはフォン・グリードルの操手槽の扉を開くと、クーガに『遠眼鏡』を投げ渡す。と、ハリアーが呟いた。
「……雨になりそうですね。先程まではあんなに晴れていたのに。まあ……そのおかげで雷を呼べたんですが。」
「それが問題なのだよ。」
クーガが呟く様に言う。彼は『遠眼鏡』を覗きこむと、その力を開放する合言葉を唱えた。
「レックリック!」
『遠眼鏡』に秘められた力が解放され、クーガははるか遠くを見通す事ができるようになる。少しの間、彼は『遠眼鏡』を覗いていたが、やがてそれから目を離す。そして彼はハリアーにその『遠眼鏡』を手渡すと、近場の建物まで走り寄り、長剣を振り上げた。
「ちょ、何をするんですクーガ!?」
「……!」
クーガは建物の扉の蝶番に、長剣を振り下ろした。蝶番は壊れてはじけ飛ぶ。彼は数回それを繰り返して、全ての蝶番を壊して、建物の戸板を外してしまった。クーガは戸板の上に乗ると、何やら術の結印を始める。周囲の皆は、呆気に取られてしまい、その様子をただ眺めるだけだ。クーガは術を完成させる。すると、戸板は宙にふわりと浮かんだ。
その時、突然雷が鳴った。雨が降り出して来る。そして風も強く吹き始めた。ハリアーはクーガに言う。
「一体どうしたんです、クーガ!」
「……もうすぐ、大嵐になる。そしてその大嵐は、練法で召喚された物なのだ。あの風門練法師は、ここら辺全てを嵐で押し流してしまい、その後であの宝珠を探すつもりなのだ。ここベーゾン市も、西海岸連合軍のキムナスト遠征軍も、全て皆殺しにしてな。」
「なんですって!?」
ハリアーは、クーガの台詞に驚く。フィーは叫んだ。
『なら、早くそいつの所へ行って、止めないと!』
「相手はここから5リー(20km)先の山の頂上だ。この術が、一番早く向こうに着ける。だが、他の人間を連れて行く事は不可能ではないが、それは私の消耗も意味する。だから私1人で行く。」
『無茶よ!』
「ええ無茶です!」
クーガの言葉に、シャリアとハリアーが叫び返す。だがクーガは聞かない。
「私は向こうに到着した時、敵の術を解除するための余力が必要なのだよ。だから、誰かを連れていく事はできないのだ。わかってくれないかね。……それと、私が失敗する可能性もある。その時のため、半刻経っても天候が治まらない場合は、何もかも見捨ててここから逃げ出してくれ。頼む……。」
「クーガ!」
『クーガ!あんた……!』
ハリアーとシャリアは、必死に彼の名を呼ぶ。だがブラガが言った。
『行かせてやろうや。現実問題としても、クーガが行くしか間に合わねぇんだ。』
『クーガさん、必ず戻って来てください。俺は逃げたりしませんよ。絶対に。だから、必ず成功してください。』
フィーもクーガが行く事を認める発言をする。シャリアは少し黙っていたが、やがて言った。
『クーガ!頑張ってきなさい!』
「うむ。」
クーガは戸板を上昇させた。その時、ハリアーが叫ぶ。
「クーガ!必ず帰って来てください!必ずですよ!」
「……任せてくれたまえ。」
そしてクーガは空飛ぶ戸板を操り、高速で空を駆けた。
白翼は、山の頂上で風雨に晒されながら、気象を制御していた。だがその時白翼は、何者かが空を飛んで近づいてくるのを見つける。彼は山の頂上に立ち上がった。やがてその何物かは、彼の眼前の空中に静止する。何を考えているのか、その者はあろうことか戸板の上に立って宙に浮いていた。そう、その何者かとは、クーガである。
クーガは白翼に向かい、言った。
「君が何を考えて宝珠を欲しているかは分からない。だがそのためにベーゾン市や西海岸同盟軍ごと殺されてはたまらないな。迷惑だ。やめてもらいたい。」
「笑止。」
白翼は一挙動で懐から誘印杖を取り出す。誘印杖は、自前の精神力を消費しなくとも術法を使う事ができる道具だ。実の所、白翼は気象を制御する術のために、力を殆ど使い果たしていたのである。
クーガは急いで、術の効果を破壊する術の結印に入った。同時に白翼もまた誘印杖を用いて術の結印を行う。先に術が発動したのはクーガだ。彼の術が、白翼が使った気象を制御する術の効果を破壊せんとする。あとは破壊される術の強さと、クーガの意志力の強さの真っ向勝負である。そしてかなりあっさりと、クーガが勝利した。白翼が多大なる消耗と引き換えに行使した、気象を制御する術は、あっさりと解除されてしまったのである。
だが同時に、白翼が用いた誘印杖の術が発動した。誘印杖は未だ崩れ去らない。まだ術の力が残っている様だ。発動した術の力に、クーガは呻く。
「くうっ!」
「ふ、そのまま苦しんで死ぬが良い。手間と金のかかった、我が秘術を破った報いである。」
クーガは自分を死の世界へ連れ去ろうとする力に、必死で耐えた。そして彼は思う。
(この術は効果範囲がさほど広くは無いはずだ……。ならば!)
そしてクーガは、いきなり自分が乗っていた戸板を前方に全速力で飛行させる。彼は術により形成された、死をもたらす空間を一瞬で抜けだした。彼は手に長剣を抜き放つ。
「……!!」
「ぬおっ!貴様!」
だがクーガの斬撃は、白翼から逸れ、白翼が立っていた脇の地面を叩く。白翼はその瞬間、一瞬念じただけで、自分の精神力を一時的に回復させる術を発動させた。そして白翼は誘印杖を已む無くその場に落とし、即座に空間跳躍の術を結印する。クーガは長剣を再び振り下ろした。だが一瞬遅く、白翼の姿はその場から消えていた。
クーガは溜息を吐くと、空飛ぶ戸板を着陸させて、白翼が落として行った誘印杖を拾い上げる。そして彼は再び戸板を離陸させ、ベーゾン市へと帰還していった。
その夜、ベーゾン市では、2人の英雄が祭り上げられていた。1人は守備隊長エイブ・ミーラー。もう1人はフィーである。彼等は、ほぼ同時に壁を破りベーゾン守備隊に2正面作戦を強いると言う敵軍の作戦を、各々敵将を退けて、なんとか防いだのである。その様な手柄を立てたため、夕食の席は宴会の様なあり様であった。
なお、彼等の操兵は現在突貫で修理されている最中だ。どちらの操兵も、けっこう損傷しており、特にエイブ守備隊長の操兵ザングル・デームリ――これもマルツ・ラゴーシュの改造機だった――は、なんとか敵を撤退に追い込んだと言えども、装甲は罅割れ、筋肉筒は断裂すると言う酷いありさまであった。ちなみに、穴を開けられた市壁は、従兵機隊やブラガ、シャリア、ナード卿などの操兵持ちが交代で守備についている。
そんな中、ハリアーはクーガの姿を探した。彼とは、彼が人目につかない様に低空飛行で戻ってきてから、まだ話してはいなかった。ハリアーは、正直彼と何を話して良いのかわからない。しかしそれでも、彼女はクーガと何か話したかった。
その時、彼女に声がかかる。
「ハリアー、誰か探しているのかね?」
「クーガ……。」
ハリアーは、いざクーガを前にして、何故か言葉が出てこなかった。彼女は一生懸命言葉を探す。そして1つだけ、思いついた。彼女はそれを口にする。
「……おかえりなさい。」
「……。ただいま。」
クーガは少々戸惑った。が、そのまま返す事にした様だった。しばらく沈黙の時が流れる。ハリアーが徐に口を開いた。
「よく帰って来てくれましたね。貴方のおかげで、この街も私達も無事です。」
「うむ……。しかし元凶を断てなかった。」
彼が言うのは、白翼を取り逃がした事である。今回白翼は、気象制御の術により極度に消耗していた。倒すには絶好の機会だったはずなのである。それを為し得なかった以上、奴は今後も手出しをして来るに違いないのだ。
「大丈夫ですよ、きっと。皆がいれば大丈夫です。」
「そうだな、きっと。きっとそうだ。」
クーガとハリアーは、しばし会話も無しにその場に立っていた。
次の朝である。スカード島連合軍の救援部隊とキムナスト軍とがベーゾン市に到着した。だがそれを察知していた西海岸同盟のキムナスト遠征軍は、夜が明けないうちにミレイル西部へと撤退していた。どうやら戦力の集中を図るつもりらしい。
フィーのジッセーグ・マゴッツの修理は、突貫で終了していた。フィー達一同はスカード島連合軍キムナスト救援部隊と共に、撤退した西海岸同盟キムナスト遠征軍を追う事になる。今度こそ、なんとしても宝珠『オルブ・ザアルディア』をその手で封じなければならないのだ。
あとがき
フィー達一同は、占術に頼ってダーヅェン・バリスタの行方を捜索しました。お手軽と言えば、お手軽ですね。ですが占術はあいまいな表現が多いので、それの解釈がまた難しいのです。その辺が上手く描写できたかどうかが、不安と言えば不安です。
それでもって、結局今回もまたダーヅェン・バリスタ本人とは会えずじまいでした。更に前回登場した練法師が、余計な手出しをしてくる始末。おまけに、とうとうトオグ・ペガーナの僧侶達も出てきました。主人公達は、これだけの敵の矢面に立たなければならないのです。さて、主人公達に明るい明日は来るのでしょうか?
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