「宝珠の力」


 ブラガはこの所、毎日の様に外の酒場へ出かけていた。目的は、噂話を仕入れるためである。山師の生活では、いつどんな事が、仕事に結びつくかも知れないのだ。仲間の練法師クーガが、商人であるデンバー氏の蔵から発見した、古代遺跡に関する古文書を解読中であるが、それだけに頼ってはいけないと言うのがブラガの主張である。第一、その古文書が全く役に立たない代物だった、と言う可能性だってあるのだ。仕事の種は、いつも積極的に探しておくべきなのである。
 ブラガがよく行く酒場は、盗賊匠合の拠点になっている酒場である。別にここだけしか行かないわけでは無いが、ここでは上手くすれば他の酒場で聞けない話が聞ける。彼はカウンターに陣取ると、酒場の主人に酒を注文した。

「おっさん、いつもの一杯。」
「はいよ。」
「おっさん、最近変わった話はねえかい?」
「この所、そればっかりだねぇ。まあ……無い事も無い、が。」
「へぇ。どんな話だい?」

 ブラガは尋ねる。酒場の主人は、軽い口調で言った。

「いやなにね。笑い話の類なんだけどね。この街の貴族・上級市民街にある聖拝ペガーナ寺院。あそこにさ、泥棒が入ったらしいよ?なんでも、とある山師が持ち込んで納めた宝物を盗まれたって話だ。厳重なはずの警備を、あっさりと抜いて、ね。あのお高くとまった坊主共がどんな顔してるか、見てみたいもんだ。」

 ブラガは酒を吹き出す。彼は慌てて酒場の主人に問い質した。

「お、おい!その宝物って……!」
「うわっ……汚いねえ。落ち着きなよ。なんでも面子に関わるからって、聖拝寺院じゃ極秘にしてるけどね。裏じゃあけっこうこの噂話、流れてるみたいだよ。」
「そ、それはいいから……。」
「ああ、どんな宝物か、だったね。なんでも握り拳か、それより一寸大きい程度の、丸い美しい珠……宝珠だって話だがね。……ありゃ?」

 ブラガは既に駆け出しており、そこにいなかった。カウンターの上には飲みかけの酒と、その代金にしてはやや多目の金額が置かれていた。酒場の主人は呟く。

「今の話の何処がどうしたのか。せっかちだねぇ……。」



「……裏目に出た、な。」

 ブラガから話を聞いたクーガの第一声が、それである。彼は聖拝ペガーナ寺院の堅牢な護りならば、盗まれる事も無いだろうと考え、古代遺跡から発掘した呪いの宝珠『オルブ・ザアルディア』を寺院に納める事にしたのだ。しかしその思惑は外れ、宝珠はどうやら盗まれてしまったらしい。
 問題なのは、あの宝珠を邪教トオグ・ペガーナの者達が狙っている事である。いや今回の盗み自体、トオグ・ペガーナの者達による行いであるかもしれない。最悪の場合、あの宝珠がトオグ・ペガーナの手に渡っているかも知れないのだ。

「どうしましょう。もしあの宝珠がトオグ・ペガーナの者達の手に入ってしまっていたら……。」
「そうですね、あいつらあの宝珠を手に入れるために、操兵を最初3体、この間1体の全部で4体も繰り出して来ましたからね。よっぽど奴らにとって重要なんでしょう。もしあれが奴らの手に渡ったら、一体何が起こる事やら……。」

 ハリアーの台詞に、フィーが応える。2人とも、心配そうな声音だ。それに続けるように、憤懣やるかたなし、と言った風情で、シャリアが言葉を吐き出す。

「あんなにいっぱいお布施を取っておいて、あっさり盗まれるなんて、だらしないったら!ん、もう。こんな事になるんなら、いっその事、あの宝珠を遺跡から取ってこなけりゃ良かったかも。」
「そうもいかんだろ。あの遺跡にあの宝珠を置きっぱなしにしてたら、奴らはそれを発掘してたぜ、きっと。」
「むう……。」

 ブラガのもっともな台詞に、シャリアは口籠る。皆はしばし考え込んでいたが、やがてハリアーが言葉を発した。

「皆さん、あの宝珠を遺跡から発掘したのは我々です。そう言う点から見て、責任が我々に一切無いとは言い切れません。なんとかしてあの宝珠を取り戻し、トオグ・ペガーナの手による悪用を防ぎましょう!」

 聖職者らしい、ハリアーの力強い言葉だった。それに頷いたのは、クーガである。

「うむ。あの遺跡にいた亡霊、ツァード師もあの宝珠には気を付ける様言っていた。それを聖拝寺院に預けるなど、少々無責任だったかも知れん。」
「でもよ、あの時点ではアレを聖拝寺院に預けるってぇのは、現実的な選択肢だったと思うぜ。聖拝寺院の警備を破る奴がいるなんざ、誰も思わねえさ。それほど気に病む事ぁねえよ。
 ……あ、別にあの呪いの宝珠を取り返すのが嫌だなんて、言ってねえからな?」

 ブラガもまた、多少やる気は薄い様だが協力はする様だ。

「俺も協力しますよ、勿論。あんなトオグ・ペガーナの狂人達に、危ない玩具を渡すわけには行きませんからね。」
「あたしも!あんな人質を取る様な外道ども、放ってなんかおけないもの!」

 フィーとシャリアもまた、やる気満々の台詞を言い放った。だが、そこから先が続かない。

「……でも、どうしたらいいのかな?」

 シャリアが言葉の調子を落として言う。正直、どうしたら聖拝寺院から盗みを働いた盗賊を捕捉できるのか、まったく見当がつかない。全員の視線がクーガに集まる。こういう時、いつも良い考えを示すのがクーガだからだ。
 クーガは徐に口を開いた。

「ブラガに頼るしか、あるまいな。」
「え、お、俺!?」

 今度は全員の視線がブラガに集中する。ブラガは焦った様子できょろきょろと周囲を見まわした。クーガは続ける。

「ブラガに頼んで、盗賊匠合の情報屋や、場合によっては幹部に聞き込みをしてもらうしかあるまい。この街の盗賊匠合としても、世界を滅ぼす事を教義としているトオグ・ペガーナの様な邪教とは、上手くやっていけないはずだ。上手く話を持って行けば、情報を得る事ができるだろう。
 ……代価はいるだろうが、ね。」
「そうだ、な。んじゃ、一寸行ってくるか。」
「頼みます、ブラガさん。」
「頑張ってね!」
「これ、活動資金にしてください。期待してますよ。」

 ハリアー、シャリア、フィーの声援を受けて、ブラガは再び出かけて行った。残った者達は、互いの顔を見回す。

「……さて、俺たちは何をしましょうか。」
「する事がないわね……。」
「そうですね……。」

 するとクーガが口を開いた。

「いや、一応やる事はある。」
「「「!?」」」
「街の古物商や古道具屋などを廻って見るのだ。特に下町の、治安のあまり良く無い所、だな。盗品を買い取る様な所だ。
 ……聖拝寺院に入った盗賊が、トオグ・ペガーナの手の物だと言う証拠は無い。もしそうでない普通の……盗賊を普通の、と言うのも何だが、普通の盗賊なら、盗品をそう言う所でさばくやも知れない。」

 クーガの考えに、一同は頷く。

「そうですね、じゃあ手分けして廻りましょうか。」
「じゃ、あたしとフィー、ハリアーとクーガの組み分けでいいかな?」
「わかりました。私はそれで構いませんよ。」
「私もそれで良い。ああ、一応武装はしていく様に。」

 そして彼等は、街へと出かけて行った。



 ブラガは、盗賊匠合の配下である情報屋にやって来ていた。ここは一見、普通の民家に見える。だがその実、デン王国首都サグドルに巣食う盗賊達に、情報を売る場所なのだ。
 ブラガの向かい合わせに座っている初老の男が、口を開く。

「何が聞きたいのかね?」
「あのよ……。上級市民・貴族街にある聖拝寺院から、そこに納められた宝珠が盗まれた……ってぇ話を聞いたんだがよ。その宝珠を納めた山師ってぇのが、実は俺達なんだわ。それで、盗まれたその宝珠をなんとかして取り返したいんだが、盗んだ奴の情報が知りたいんだわ。」
「……何故、一旦寺院に納めた物を、取り戻したいのかね?聖拝寺院になんぞ借りでもあるのか?」

 ブラガは話すのを少々躊躇う。初老の情報屋は、話を続けた。

「何、少々微妙な問題だからな。背景の事情を知っておきたいのだよ。」
「……わかった。実はあの宝珠は、呪いの品物で危険なんだ。しかもソレをトオグ・ペガーナの連中が狙ってやがる。奴らはなんか、奴らが信仰してる魔神の託宣によって、あれを手に入れようとしてるらしい。
 ……トオグ・ペガーナなんて邪教の連中が信じてる邪神の神託だ。あれを奴らに渡したら、きっととんでもねぇ事になるに違ぇねぇんだ。だからあれを発掘した者として、放っちゃおけねえってな。」
「そうか……。」

 そう言うと、初老の情報屋は手をぱんぱん、と叩いた。すると1人の男が、部屋の中へ入って来る。ブラガは訝しむと同時に、油断なく身構えた。

「何のつもりだ?」
「いや、別にあんたをどうこうするつもりは無い。ただ、ボスに会ってもらいたいだけさ。この男は案内人さね。」
「ボス?ダイカさんか?」
「ほ、知っておるのか。なら話は早い。ダイカさんに会って、改めて今の話をしてくんな。」
「……さ、行くぞ。ついて来な。」

 新たに入って来た男がブラガに言う。ブラガは仕方なく、その男について歩きだした。街中をしばらく歩き、やがて彼等は盗賊匠合の拠点になっている酒場に辿り着く。そして男とブラガはそのまま酒場の奥の部屋に入り、床の隠し扉を潜って地下通路に入り込んだ。彼等はそのまま地下通路を歩き、奥まった場所にある部屋へとやってくる。その部屋には、ブラガは一度来た事があった。
 部屋の中には大きな執務机があり、それに着いている男が居た。その男こそ、デン王国首都サグドルの盗賊匠合の頭、ダイカ・ロムウである。ダイカはブラガを連れて来た男に問いかけた。

「おい、何事だ?」
「へえっ!実はこいつが、例の聖拝ペガーナ寺院から盗まれた宝珠を発掘した山師だってぇ事で。おい、ボスにお話ししねえか。」
「なんだ、誰かと思ったら……。ブラガ、だったな。前の件は御苦労だった。」
「へい。ありがとうございます。ええと、実は……。」

 ブラガは一連の事情を、ダイカに話す。ダイカの表情が、やや険しくなった。

「そうか……。トオグ・ペガーナの連中が、な。しかし魔神の託宣とは、話がでけぇな、オイ。
 いや実はな、聖拝寺院からその宝珠を盗み出した盗賊ってのは、ウチの匠員の1人だ。いや、『だった』と言うべきだな。腕利きなんだが、それを鼻にかけて上の言う事を聞かねえ奴でな。ウチのシマを荒らしてやがる組織に鞍替えしようとしやがった。」
「へ?そう言えば、そんな話を聞いた事ありまさあ。何でも、この街に他所の裏の組織が手を出し始めた、とか。」
「おう、その組織よ。」

 ダイカは頷く。彼は続けて言った。

「ところが、だ。その組織てぇのは何だかわかるか?」
「いえ、そこまでは……。」
「それがトオグ・ペガーナの連中よ。もっとも、つい最近までは何が何だかわからねぇ秘密組織だったんだが、な。ひょんな事から、そいつらがトオグ・ペガーナっつう邪教の下部組織だってぇ事が分かったのよ。」
「さっすが、よく分かりましたねぇ。」

 ブラガの台詞に、ダイカは呆れた顔をする。

「何言ってやがる。食糧商人デンバーの孫娘を助け出して、それを攫ったやつらの生き残りを衛兵に突きだしたのは、手前らじゃねぇかよ。」
「へ?」
「そのおかげで、衛兵と通じてる俺らの手先が、奴らがトオグ・ペガーナとその下部組織だって事を教えてくれたんだぜ?」

 ブラガは開いた口がふさがらなかった。まさか自分達がやった事が、まわりまわってこの様な影響を与えていようとは、思いもしなかったのだ。
 ダイカは眉を顰めて言う。

「ともあれ、今の所はその事はまだ公開してねぇ。邪教相手だっつー事で、ブルっちまう奴が出ないとも限らねぇからな。もっともそのせいで先程言った、言う事を聞かねえはねっかえりが、敵方に寝返ろうなんてしてたんだがよ。邪教の手先だなんて知ってりゃあ、寝返ろうなんて思わなかったんだろうに、よ。」
「そいつがよりによって例の宝珠を聖拝寺院から盗んだのは、何でです?トオグ・ペガーナの連中から命令されたから、ですかね?」
「近いな。ウチから寝返る土産がわりに、それを盗ってこいと言われたらしい。そいつに、一緒にウチを抜けねぇかって声をかけられた奴がいてな。そいつが教えてくれた。」

 ブラガは恐る恐るダイカに尋ねる。

「で、その裏切り者は今どこにいるんで?」
「それが分かれば苦労はしねえ。……まあ、待て。気を落とすのは早ぇ。トオグ・ペガーナの連中が拠点にしている村があるんだ。こっから南西にずーっと行って、ソーダルアイン連邦との国境近くにある小さな村で、ワプタって言う。どうも、その村全体が改宗したわけじゃねえらしいが、その村の長はどうやら、トオグ・ペガーナに改宗しているらしい。表向きは敬虔な聖拝ペガーナの信徒を装って、な。そこを調べれば、もしかしたら……。
 ところでな、お前らがその裏切り者を見つけたら、できれば生かして捕まえちゃくれねぇか?何、そいつからはウチでけじめ取らなきゃならねぇんでな。」

 そう言って、ダイカは1枚の似顔絵……裏切り者の人相書きをブラガに放ってよこす。その裏切り者は男で、名前はエイムと書いてあった。ブラガはダイカに頷く。ダイカは満足そうに笑った。

「よし、頼んだぞ。とりあえず情報料と手付に、これだけくれてやる。もしそいつを生かして捕まえられたら、追加で報酬を出す。」

 ダイカは金が詰まった袋をブラガに投げてよこした。ブラガは中身を確かめる。交易用の金貨で、25枚ばかり……2,500ゴルダが入っていた。仲間5人で分けても、1人あたり500ゴルダになる。手付には若干過剰な額だ。ダイカは太っ腹らしい。

「よし、帰っていいぞ。」
「へい。」

 ブラガはダイカに頭を下げると、帰途についた。



 フィー達一同は、街道を外れた細い道を歩いていた。目的地は、ワプタの村である。結局のところ、有効な情報を掴んできたのはブラガだけだった。それ故、彼等はその情報に従い、ワプタの村へ向かう事にしたのである。
 フィーは従兵機ゴルタルに乗り、残りの面々は馬に乗っていた。フィーが本来の乗機、狩猟機ジッセーグ・マゴッツに乗っていないのは、未だ修理が完了していなかったためだ。ちなみに街中では無いので、クーガは仮面を被っている。
 最後尾を行くフィーのゴルタルから、拡声器を通して声が響いた。

『あともう少しでワプタの村ですけれど、どうします?』
「普通の旅人のフリをして、村に入るってのはどうだ?」

 フィーの問いに対し、ブラガが提案の形で答える。だがそれにハリアーが疑問を投げかけた。

「それだと、いざと言う時動きづらくありませんか?」
「なあに、大丈夫だって。実際やる事の大半は、情報収集だ。だったら動くのは、俺ぐらいなもんだろ?」
「ですが、村人たちは、トオグ・ペガーナの魔の手に晒されているのでしょう?なんとか助けたいものですが……。このまま放っておいたら、村人たち全てがトオグ・ペガーナの信徒にされていた、などと言う事になりかねません。情報収集だけで済ませるには……。」

 ハリアーの表情は暗い。そこへクーガが口を挿んだ。

「旅人のふりをして村に入るのは、反対だな。」
「なんでよ?クーガ。クーガの事だから、ちゃんとした理由があるんでしょ?」

 シャリアが確認する様に尋ねる。クーガは頷くと、理由を語った。

「トオグ・ペガーナの僧侶は、ハリアーと同じく招霊の秘術を用いる事ができる。邪教とは言え、僧侶は僧侶と言うわけだ。招霊の秘術には、僧侶や神の敵を感知する術があったはずだな、ハリアー。」
「は、はい!あります!それも非常に簡単に使う事ができる低位の術です!」
「もし村に入った時、その術を使われでもしたら、我々が『トオグ・ペガーナの敵』である事がばれてしまう。私であれば、重要な任務中に見知らぬ旅人が拠点である村に入って来たなら、用心のためだけにその術を用いる。
 更に、だ。招霊の秘術には、相手の心を読む術があったはずだ。それを使われてしまえば、我々の目的までもが知られてしまいかねない。相手は曲がりなりにも僧侶、つまり術者なのだ。用心に用心を重ねなければなるまい。」

 ブラガは絶句する。彼は今まで、普通の人間を相手にする様な感覚でいたのだ。だが言われてみれば、その通りである。第一彼には、今までトオグ・ペガーナの僧侶と戦った際、その術法によって痛い目を見た経験がしっかりとあった。彼は自分の認識の甘さを恥じる。

「……すまねえ。考えが甘かった。」
「そこまで凹ませるつもりは無かったのだがな。」
「……よしっ!第2案だ!近場の山中に隠れ潜んで、夜闇にまぎれて村に入り込む。そして村長の館に侵入して村長を拉致するってのはどーでぇ!」
『ああ、村長はトオグ・ペガーナに改宗してたんでしたっけ?』

 フィーの声に、ブラガは今度こそ、とばかりに胸を張る。

「おう!そいつに誰がトオグ・ペガーナの関係者か吐かせて、夜が明けないうちに襲撃するんでぇ!誰か偉い奴でも捕まえる事ができたら、そいつに詳しい話を聞けばいい!」
「結局力づくなのね。」

 シャリアが呆れた様に言った。だが今度はクーガも反対しない。

「まあ、それしかあるまい。」
「あら。クーガも?」
「前にも思いましたけど、結構好戦的ですよね、貴方は。」
「……そうかね?」

 クーガはハリアーの台詞に、平板な声で応えた。
 やがて彼等は道を外れて、山中へと分け入る。最初はフィーの高度な操縦の腕前もあり、順調に進んでいたのだが、やがて到底従兵機では通れない様な狭い隘路に出くわす。仕方なく彼等は、ゴルタルの仮面だけを外して、機体はそこに木の枝などで偽装して、置いておく事にした。
 そして彼等は、目的の小さな村――ワプタ村を見降ろす山中に拠点を定めた。ここからならば、村までさほど距離は無い。天幕はゴルタルの所へ置いて来たので、各自毛布にくるまり、夜が来るまで交代で仮眠を取る事にした。
 だが、ブラガが起きている順番の時である。ブラガは何がしかの物音に気付いた。

(何だ?)

 ブラガはそちらに注意を向ける。すると、再び何かが聞こえる。

「う……。」
(うめき声!?人間か!)
「ブラガ、敵か?」
「うわ!」

 後ろから、いきなりクーガが話しかけてきた。小声だったとは言え、ブラガは驚いた。彼は小声で返す。

「クーガ!脅かすんじゃねーよ!……なんで起きてきたんだ?」
「召喚して見張りに立てていた霊魂が、異常を知らせて来た。」
「そ、そっか。んじゃあ皆を起こしてくれや。俺は様子を見て来る。」
「わかった。」

 クーガは皆の所へ歩いて行く。ブラガは気配を殺して、うめき声の方へそっと歩きだした。そして彼は、茂みを覗いてみる。彼は小さな声で、叫ぶように言った。

「クーガ!ハリアーをよこしてくれ!なんか怪我人がいやがる!」



 怪我人は、まだ若い男だった。その男は、体中引っかき傷と打ち身だらけで、相当に体力を消耗していた。ハリアーの手当てで、多少元気を取り戻したその男は、一同に礼を言う。

「あ、ありがとうございました。助けてもらって、手当までしていただいて……。」
「兄ちゃん、あんたワプタの村の人間かい?」
「あ、はい。私は村長イープの息子で、ダープと申します。」

 その言葉を聞いた瞬間、一同に緊張が走る。情報では、村長はトオグ・ペガーナに改宗しているはずだ。
 ダープはフィー達に問いかける。

「貴方達はいったい……。」
「俺たちは山師です。この辺に、古代の遺跡があると言う噂を聞いて、やって来たんですよ。でも、ガセだったみたいですけどね。」

 フィーが、しれっと嘘でごまかす。だがダープは、意外な事を言い出した。

「山師、ですって?じゃあ戦いとか、慣れてらっしゃるんですね?お願いです、助けてください!父が、父は、狂ってしまったんです!」
「「「!?」」」
「私の父は、敬虔な聖拝ペガーナの信徒です。いえ、でした。ですが今はもう違います。恐ろしい邪教を信じる、悪魔の使いになり果ててしまっているのです!」

 フィー達一同は、顔を見合わせる。ダープは続けた。

「今日の昼間の事です。私は偶然立ち聞きしてしまったんです。父と、半年前に村にやって来たばかりの聖拝ペガーナのお坊様達の話を。いえ、あの者達は聖拝ペガーナのお坊様ではありませんでした。恐るべき邪教の使徒だったのです。その証拠に、父とあの者達は、私が覗き見しているとも知らずに、あの汚らわしい魔神の像に、祈りを捧げていたのです。ああ、なんと言う冒涜でしょう。神よ!」
「……どんな事を話していたのですか?」

 ハリアーは、ダープに尋ねる。ダープは勢い込んで言った。

「とんでもない話です!このデン王国をはじめ旧王朝全てに、自分達の魔神を崇拝させるとか!」
「狂人のたわごと以外の何物でもねーな。」
「ええ、その通りです。父は、もう以前の父ではありません。私は恐ろしくなり、こっそりその場を離れると、家を抜けだして逃げ出しました。ですがどうしたら良いかわからなくなり、山の中に逃げ込んで、そこで足を滑らしてこのあり様と言うわけです。
 どうか、お願いです。魔道に落ちた父と、あの聖拝ペガーナの僧を騙るあの異端者達を、成敗してください。」

 今は仮面を被っていないクーガが、徐に言葉を発する。ちなみに仮面を被っていないのは、ダープの前だからである。ただの村人であるダープでは、仮面の意味は分からないであろうが、用心のためだ。

「成敗しなければならんのは分かるが……。村人たちにとっては立派な村長と、立派な聖拝僧なのだろう?そう言う者達を叩きのめしてしまって、村人たちから集団で攻撃されでもしたら、困るのだが。」
「でしたら、村人は私が抑えます。あの魔神象でも探し出して、村人に見せつければ、きっと分かってくれるでしょう。」

 ダープは固い意志を見せつけつつ、言った。どうやら彼は、相当強く聖拝ペガーナを信仰しているらしい。父親をフィー達に倒してもらう事に、なんら躊躇いを見せない。
 クーガはハリアーに、目配せをする。ハリアーも頷いた。このダープに、彼らが異端者たる練法師や、異教徒たる聖刻教会法師である事を知られては、騒ぎ出す事間違いなしだ。そのため、その事を知られてはいけない、と言う意味を込めての目配せだったのだ。
 フィーは仲間達の顔を見回す。皆、彼の意図を察し、頷いた。フィーは改めてダープに向き直り、言った。

「わかりました。忌わしき魔神の僕達は、俺達がなんとかしましょう。夜闇にまぎれて行動を開始しようと思いますので、ダープさんもそれまで休んでいてください。」
「はい、お願いします。どうか、かならずや……。」
「ええ。なんとかしますとも。ですから今は休んでいてください。」

 フィーはダープに自分の毛布を貸して、休ませた。そして彼は、皆に向かって頷く。彼は言った。

「基本的に、行動方針に変わりは無い、ですね?」
「おう。変わった所と言えば、トオグ・ペガーナの連中をぶっちめた後、村人に説明するのが楽になったぐらいか。」
「もうじき陽が落ちるわ。そうしたら、行動開始ね。」

 シャリアの台詞に、その場の全員が頷いた。



 陽が落ちて、辺りは闇に沈んだ。彼等は、あえて灯りを使わずに道のりを行く。途中何度か、シャリアやハリアー、ダープが躓いて転びそうになったりした等、多少苦労した面もあった。だが一応は闇に目が慣れていた事もあり、彼等はなんとか進む事ができた。
 村長の家は、ダープの案内ですぐに分かった。もっとも、村で2番目に大きな建物であるため、案内が無くとも少し調べればすぐ分かったかもしれない。ちなみに村で一番大きく、一番新しい建物は、半年前に建てられたと言う聖拝ペガーナ寺院である。もっとも、ダープの話によれば、それは神聖な寺院などではなく、魔神崇拝の根拠地であるのだが。
 ブラガが裏口に近寄る。ダープの話によれば、村長のイープは1年前に妻――ダープの母――を亡くしており、この大きな家に2人で住んでいるとの事だ。昼間は通いの家政婦が来てくれるが、今は居ないはずだと言う。つまり今、この家には目標のイープしか居ないはずなのだ。ブラガは聴診器を扉に当て、中の音を聴いた。彼の耳には、何の音も聞こえて来ない。ブラガは仲間に手招きをする。仲間達は忍び足で、彼の近くまでやって来た。ちなみにダープは、少し離れた場所で見守っている。
 そしてブラガは針金を取り出して、裏口の鍵を弄り出した。所詮は簡単な鍵、彼の腕前にかかれば容易に開く。更に彼は蝶番に油を差し、音を立てない様にした。裏口の扉は、音も無く開いた。一同は建物の中へと侵入する。
 彼等は廊下を進み、ダープから聞いた村長の部屋の前までやって来た。ブラガが聴診器で、中の音を聴く。彼の身体が緊張で強張った。ブラガは唇の前に指を一本立てる仕草をすると、次に指を2本立てて見せた。中には2人居るのだ。ブラガは中の音を聴き続けた。



 その部屋では、魔神の祭壇を前にして、2人の男が話をしていた。1人は老人で、もう1人は壮年だ。だが、立場は明らかに壮年の男の方が高い。壮年の男は、聖拝ペガーナの僧服を着ていた。だがその胸に下がっている聖印は、聖拝ペガーナの物では無い。その聖印は、何処か禍々しさを感じさせた。……それはトオグ・ペガーナの聖印である。
 老人は壮年の男――トオグ・ペガーナ僧に話しかけた。

「……では、バザム様。ダッジル様達は今、サグドル近郊に造られた儀式場に出向いていらっしゃるのですな?」
「ああ。祭器たる、宝珠『オルブ・ザアルディア』を聖拝寺院から奪還した盗賊も、そこに来る予定だ。」
「単なる盗賊風情が、神聖なる儀式に参加できるとは……。」

 老人が、憎々しげに言葉を吐き捨てる。それを見て、バザムと呼ばれたトオグ・ペガーナ僧は嘲笑う様に言った。

「羨ましいか?」
「そ、それは……。」
「まあ気にするな。お前もそのうち儀式に出席させてやる。それにその盗賊は、その場で始末してしまう予定だからな。
 偉大なる魔神ジアクスのお役に立てるなど、光栄の極みだと言うのに、あの盗賊めは土壇場で宝珠を渡すのは嫌だなどと言いおる。寝返りを受け入れるだけでなく、もっと金をよこせなどと……。
 いいだろうとも。金はくれてやるとも。だがその金を使う暇など無く、あの世へ旅立つ事になるのだがな。」
「ほ。そうでございましたか。好い気味だ……。」

 その時、部屋の扉が大きく開け放たれた。そして数人の人間が、部屋になだれ込んで来る。トオグ・ペガーナ僧は身構え、老人は呆気に取られた。なだれ込んで来た者達は、勿論フィー達である。彼等はシャリアを先頭にして突入し、フィーとブラガが後に続き、最後にクーガとハリアーが部屋に入って来た。
 シャリアが叫ぶ。

「あんたら、覚悟しなさい!あんたらの信じる魔神の下へ送ってやるわ!」
「何を猪口才な!偉大なる魔神ジアクスよ……!」

 バザムは、両手を握り合わせ、祈りの言葉を口にする。招霊の秘術を使う気だ。だがシャリアの攻撃はそれよりも迅い。二刀が、トオグ・ペガーナ僧の身体を斬り裂く。バザムは、苦痛のあまり祈りを中断してしまった。そこへフィーの破斬剣が襲う。バザムは、あまりの重傷に気を失った。
 老人……村長であるイープは、腰を抜かしている。ブラガがそれをあっさりと取り押さえた。



「……駄目だこいつぁ。口が堅ぇったら……。」

 ブラガは、ぐるぐる巻きに縛り上げたイープを尋問していた。しかし彼は、一切口を噤み、何も話そうとはしない。彼は息子であるダープを憎々しげな眼で見つめるだけだ。
 と、クーガが言葉を発する。

「ブラガ、ここは任せた。私はこのトオグ・ペガーナの僧侶を尋問してみる。」
「意識を取り戻させるのは、危ねぇんじゃねえか?」
「大丈夫だ。ハリアー、手伝ってくれ。隣の部屋へ行こう。」

 クーガは気絶して、しっかりと縛り上げられたバザムを担ぎ上げる。意識を失った人間の身体は、とても重い。彼はふらついた。フィーとシャリアが慌てて手伝う。

「ああ、俺が運びますよ。」
「あたしも手伝うわ。」
「すまんな。」

 彼等は隣の部屋へ異動する。クーガはバザムに猿轡を噛ませると、仮面を被りつつ言った。

「ハリアー、こいつの意識を回復させてくれるかね。」
「わかりました。では……八聖者よ、お力をお貸し下さい。」

 ハリアーの指に、小さな光が灯る。ハリアーはその光をバザムに押し当てた。バザムは即座に意識を取り戻す。彼は最初、何が何だかわからない様子だったが、周囲を取り囲む者達が、自分を傷つけた者である事に気づき、もがいて唸り声を上げる。彼は猿轡を噛まされており、唸り声を上げるしか出来なかったのだ。

「うごおっ!うぐぐううぅぐがあああっ!うごご、うぐがああぁぁっ!うご……!?」

 クーガはバザムの前に立った。目前の者が練法師である事に気づき、バザムは顔を引き攣らせる。クーガはある術の結印を開始した。彼の口から朗々と、呪句の詠唱が流れる。そして結印が完了すると、彼はバザムの肩に手を乗せた。
 クーガは質問を口にする。

「エイムと言う盗賊が、宝珠『オルブ・ザアルディア』を持ってくる、儀式場とは何処かね?また、どんな目的の儀式なのかね?」
「うがう!うごごっ!!」

 バザムは、首を左右に振る。だがクーガは次の質問に移る。

「儀式場に赴いている、君らの仲間や部下は何人で、どういう奴らかね?」
「うががうう!うごうぐぐううっ!!」
「ほう、そのダッジルと言う輩が、君らの親玉かね?ほう、違う?では誰がここ、デン王国における責任者なのかね?」
「う、ぐが!?」

 バザムは、ようやく自分の心が読まれている事に気が付いた様だ。だが彼にはどうする事もできない。招霊の秘術を使おうにも、彼の口には猿轡が噛まされており、神に祈る為の詠唱をする事ができない。
 クーガは続ける。

「ビョンド・ジーカー師、か。そのビョンド師は、どこに居るのかね。……む、知らんのか。では、どこがデン王国におけるトオグ・ペガーナの根拠地なのかね。」
「うぐあ……!うぐぁがあ……!うごごぐがっ!ごががぐぐ!」
「ほう、根拠地は無いのか。それは何故かね。」
「うぐうぐう……。うごごぐぐご……。」

 バザムは唸り声を上げる事を繰り返すしかできない。だが彼は、何かを思いついたかの様に、はっとする。そして彼は、両手が縛られていると言うのに、いきなり器用に立ちあがり、クーガに体当たりをした。

「むっ!?」

 クーガは突然の事に、躱し損ねる。バザムは脱兎の如く走った。その場に居た一同は、バザムを捕まえようとする。だがバザムの行動は、その場から逃げようとした行いでは無かった。彼はなんと、いきなり部屋の片隅へ走り寄ると、その勢いのまま部屋の柱へ自らの頭を叩き付けたのである。
 鈍い音がして、バザムの頭から血液と脳漿が流れ出る。バザムは崩れ落ちると、二度と動かなかった。

「ああっ!?」
「じ、自分から命を……。」
「なんたることでしょうか、八聖者よ……!」

 その場に居た面々は、絶句する。たしかにこのまま行けばこの男は、刑場の火刑の煙と化す運命だったにせよ、自ら命を断つとは思いもしなかったのだ。
 フィーは冷や汗を流しながら、クーガに尋ねる。

「……どうします?また例の術を使って、死者の霊を尋問しますか?」
「いや……。聞きたい事の大半は、知ることが出来た。無駄な事はやめよう。第一、こいつはあまり大した事は知らなかった。
 ちなみにビョンド師とやらは、特に根拠地を定めず、流浪の身のまま活動を行っているらしい。指示を出す時は、招霊の秘術による通信で行っているそうだ。」
「なんですって!?私もまだ到底使えない、超高度な術ですよ、それは!」

 ハリアーが驚く。彼女は以前よりも随分と力量を上げていた。だが、その彼女にすらまだ手の届かない高度な術を、その邪教トオグ・ペガーナの僧侶は使っているとの事なのだ。恐るべき強敵に、ハリアーは身震いをする。そんなハリアーの肩を、クーガが宥める様に叩いた。



 あくる日の夕方近く、フィー達はサグドルから西に3リー(12km)ほど離れた山中に居た。ここはトオグ・ペガーナの信徒達が、問題の儀式を行う場所に、程近い。実際、そこからは急増で造られた儀式場の様子が、手に取る様に分かる。
 フィー達は、父イープを聖拝ペガーナ寺院へ連行するダープを連れて、サグドルまで一度戻った後で、取って返してここまでやって来たのだ。ちなみにワプタ村に居たトオグ・ペガーナの信徒達は、バザムとイープを留守番に残し、他の全員が問題の儀式場へとやって来ていた。それほど、この儀式が大事だと言う事であろう。
 ブラガがクーガに尋ねる。

「その儀式ってぇのは、一体何なんだ?結局何をやるんだ?」
「あの宝珠の力を解放し、何らかの化け物を呼びだすらしいな。それをサグドルにいる国軍へと嗾けるつもりらしい。流石にサグドルにいる全軍には勝てないだろうが、サグドル市民の心胆を寒からしめる事はできよう。その隙に乗じて、トオグ・ペガーナのサグドルへの浸透を図るつもりらしい。ちなみに儀式は陽が沈んでから始まるらしい。」
「かーっ、えらいこっちゃねえかよ。」
「たいした作戦ですね。」

 ブラガとフィーは、思わず溜息をつく。だがクーガの台詞はまだ終わっていなかった。

「だが、実の所これもあの宝珠の力を確かめるためだけの、単なる実験に過ぎんらしい。あの宝珠の本当の力は、そんな物では無いそうだ。詳しい事は、あのバザムとか言ったトオグ・ペガーナ僧も知らなかったがな。」

 ブラガとフィーは絶句する。そこへ、ブラガから借りた『遠眼鏡』――ただし、今は普通の望遠鏡として使っていたが――で、儀式場の様子を見張っていた、シャリアとハリアーが戻って来た。

「儀式場に、かなりの人数が集まってるわよ。少なく見て100人は居るわね。ついでに操兵までいるし。警備は相当厳重ね。」
「あちらこちらから集まって来たんでしょうが、あれが全て、邪教の信徒だなんて、信じたく無いですね。」

 シャリアもハリアーも、相手の数の多さに辟易していた。クーガはシャリアに聞いた。

「操兵?機種はわかるかね?」
「ゴメン、わかんなかったわ。」
「……私も見てみよう。『遠眼鏡』を貸してくれ。」

 クーガはシャリアから『遠眼鏡』を受け取ると、それを普通の望遠鏡として使って、儀式場の方を見た。彼の視界内に、確かに操兵が映る。

「……アーシュ・ドラーケン、か。狩猟機としては、あまり強くは無い。だが……こちらが従兵機では、やはり荷が重いな。」
「へえ、俺にも見せろよ」

 クーガは、ブラガに『遠眼鏡』を返した。そしてクーガは何かしら考え込む。

「……彼我の戦力差が大きすぎる。やはり、あの手で行くしかない、か?」
「あの手って、なんでぇクーガ?」

 ブラガは『遠眼鏡』を覗きながら問うた。クーガはブラガに向き直る。そして彼はいきなりブラガに謝罪した。

「すまない、ブラガ。どうやらエイムとか言う盗賊を生きて捕らえるのは、諦めてもらった方がよさそうだ。」
「な、なんだよいきなり。」
「私は『奥の手』を使う事にする。今の私が使える術のうちで、最も広範囲に破壊を撒き散らす事のできる術だ。それを使って、あの多数の敵をせん滅する。」

 ブラガはごくりと唾を飲み込む。ハリアーとシャリア、フィーも息を飲んだ。クーガは続ける。

「術法を使って敵をせん滅する以上、手加減とかはできない。エイムとか言う盗賊も、勿論巻き込まれるだろう。だから、生かして捕らえる事はできない、おそらくな。
 敵をせん滅してから、あの宝珠を探そう。死体の山を掘り返す様で、あまり愉快な作業では無いがね。」
「クーガ、本気ですか?」

 ハリアーが心配そうに問いかける。クーガは真面目な口調で返した。

「本気だ。……ハリアー、私はこの術を使う事で、全ての力を使い果たす。だから、しばらくの間はそれ以上何の術も使えなくなる。もしも、これ以上の面倒が起きたなら、その時は頼んだ。」
「……。」

 ハリアーはクーガを見つめ、ただ頷いた。残りの皆も、じっとクーガを見つめる。クーガは徐に、自分の周囲に触媒となる、魔力を込めた小石を撒き散らした。そして結印を開始する。呪句の詠唱が、辺りに響き渡った。と、その詠唱がつっかかった様に止まる。クーガはしばらく微動だにしなかった。
 ハリアーは言った。

「……術に失敗しました、ね?クーガ。」
「……うむ。難度の高い術なのでな。」

 ブラガは吹き出した。

「ぶ!ぶははっ!い、いや悪ぃ。け、けどよ。クーガでも、とちる事って、あるんだな。ぶはははっ!」
「なんか、クーガでも人間だなって、安心するわよね。」
「し、失礼だってシャリア!ブラガさんも!」

 ブラガとシャリアの言い様に、フィーは慌てる。それを尻目に、クーガは心の中で何かを念じた。すると、ある術が発動する。その術は、術に失敗した事によるクーガの精神疲労を、一時的にではあるが回復させた。彼は再度触媒の小石を自分の周りに撒き散らす。そしてもう一度、慎重に結印を始めた。再び、呪句の詠唱が響き渡る。それと同時に、クーガの手は凄まじい勢いで組み合わされ、印を切った。そして、今度こそ術が完成する。
 恐ろしい轟音が響いた。ビリビリと地面が振るえる。だが、眼下に見えるトオグ・ペガーナの儀式場はそれどころでは無かった。凄まじい大地の鳴動が、トオグ・ペガーナの一団を襲っていた。地面がぐらぐらと揺れ、人々が転倒し、大地に叩きつけられる。トオグ・ペガーナの信徒達は泣き叫んだ。だがそれだけでは済まず、彼らは2度、3度と地面に叩きつけられた。
 儀式場に造られていた舞台も、恐るべき揺れにより、崩壊している。更に、周囲を哨戒していた狩猟機も転倒し、大地に幾度となく叩きつけられていた。乗っている者は、おそらく操手槽内でひどい目に遭っているだろう。
 その様子を山中の高台から見つつ、フィー達は息を飲んでいた。これがクーガによって起こされた現象なのだ。彼等は、練法師の力と言う物に恐れ驚きつつ、クーガが自分達の味方で良かった、と心の底から思っていた。
 やがて地震が治まり、静けさが戻って来た。眼下の儀式場は無残に破壊され、ぴくりとも動く者はいない。クーガは呟く様に言った。

「……儀式場へ向かおう。あの宝珠を探さねばならん。」
「……おう。」
「行きましょう。」
「……。」
「疲れそうね……。」

 皆、言葉少なだった。



 フィー達は、儀式場……いや、その『跡地』へとやって来た。そこには、大地に打ちつけられた死体が、無数に転がっている。ハリアーは馬を降りると、小さく祈りの言葉を呟いた。見ると仲間達も馬を降りて、死体の山を眺めている。もっともフィーだけは、従兵機で力仕事をするために、ゴルタルから降りていなかったが。

「……この中から、あの宝珠を探すのは大変そうですね。陽も暮れますし。……〈聖霊話〉を試してみましょうか。」

 ハリアーは精神を集中すると、周囲に満ちている聖霊に働きかけた。聖霊はハリアーに、周囲の邪悪な力や魔力についての情報を与える。まず感じられたのは、クーガが身につけている仮面やその他の物品の魔力である。次に、フィーの乗るゴルタルが放つ強烈な気配。同時にシャリアやブラガが持っている武具の魔力も感じられた。

「見つかりませんね……。いえ……違うっ!?」

 ハリアーは驚愕した。今までに感じた事の無い、強烈な邪悪の気配を感じたためである。それは紛れもなく、あの宝珠『オルブ・ザアルディア』の力であった。ハリアーが僅かな違和感に気付くまでは、『オルブ・ザアルディア』は周囲の聖霊に対し影響力を行使し、その姿を隠していたのである。ハリアーは叫んだ。

「皆さん!気をつけてください!あの宝珠が発動し始めています!」
「む!」
「何ぃっ!?」
「そんな!?」
『な、なんですって!?』

 全員が叫び声を上げた。ハリアーが指差した方から光の柱が天に向かって立ち昇り、辺りを何か、邪悪な気配が満たしたのだ。そして異変は起きる。そこら辺に転がっていた死体が、ゆっくりと動き出し、立ち上がり始めたのだ。だが生き返ったわけではない。それは死体のままだった。
 だがフィー達は動じない。彼等はこう言った存在と、何度か戦った事があるからだ。それは『死人』と呼ばれる、低級の死霊である。フィーのゴルタルが前に出て、長槍で死人の群を薙ぎ払う。

『こいつらあっ!!』

 死人は数体がまとめて吹き飛ばされた。ゴルタルの攻撃を掻い潜って来た者達を、シャリアが攻撃する。

「おとなしく……死んでなさいっ!!」

 『気』のこもった長剣の斬撃が、死人を真っ向から唐竹割りにする。そしてブラガが聖刻器の手斧を構えて、大声で叫んだ。

「くらって寝てろ!ヴァーズバン!」

 ブラガが叫んだ合言葉に反応し、手斧『切り裂きの斧』の秘められた魔力が発動する。旋風が吹き荒れ、強力なカマイタチ現象が発生、数体の死人を切り裂いた。ハリアーも、聖なる鎚矛『光の鎚矛』を振るって、死人を死体に戻している。
 だが、いくら彼等が奮戦しても、死人の材料になる死体は100体以上存在する。死人を作り出している元を止めなければ、話にならなかった。クーガが、現象の中心になっている光の柱の下へと走り出す。そこにあの宝珠『オルブ・ザアルディア』があると見越しての行動だ。だがそこは、死人を生み出している現象の中心だった。たちまちクーガは死人に取り囲まれてしまう。

「クーガ!くっ!『光の鎚矛』よ、汝の力を発揮しなさい!オーロールゥ!!」

 ハリアーは、聖なる『光の鎚矛』をかかげてクーガの居る方向へ走る。鎚矛の頭から、聖なる光が迸り出た。死人達は、その光を恐れるかの様に後ずさる。ハリアーはクーガに追いついた。クーガは、ハリアーが聖なる光を放つ鎚矛を持って来なければ、今にも袋叩きに遭う所だった。彼女はクーガを叱る。

「何を無茶してるんですか!」
「すまない、助かった。だが、この現象はおそらくあの宝珠による物だろう。あの光の柱の下に、あの宝珠があると見た。あの宝珠をどうにかしてしまわねば、いつまでも死人は増え続ける。」
「それはわかってます!いっしょに行きましょう。」

 ハリアーの台詞に、クーガは頷いた。やがてハリアーの聖光を放つ鎚矛の力もあり、彼等は光の柱の下へ辿りついた。そこには1体の死体が転がっており、その左手に握られているのは間違いなくあの宝珠『オルブ・ザアルディア』であった。光の柱は、この宝珠から湧き出ていたのである。
 クーガはその死体を検めた。間違い無くこの死体は、件の盗賊、エイムの死体だった。クーガはその懐から、宝珠を封印していた布地を見つけ、引っ張り出す。そして彼は、『オルブ・ザアルディア』をその布地で包むために、死体の手から引き剥がそうとした。
 だが彼は一瞬の判断で飛び退る。そのすぐ脇を、小剣の刃がかすめて行った。ハリアーは驚きの声を上げる。

「そんな……嘘!聖光の中だと言うのに!」

 エイムの死体は、死人となって立ち上がっていた。その左手に『オルブ・ザアルディア』を握ったままである。そして右手には、小剣を構えていた。クーガはそれを見て言う。

「宝珠を握っているからな。特別な加護でもあるのだろう。あるいは特別製な死人、とかな。」

 クーガは長剣を抜いて、斬りかかった。だがかなり鋭い剣撃だったと言うのに、エイムだった死人は軽々とそれを躱した。ハリアーもまた鎚矛で殴りかかりつつ、言う。

「特別製と言う方が、ありそうです……ねっ!」

 だがその一撃は躱されて、地面を叩く。ハリアーの体勢が崩れた。そこへエイムの死人が小剣で斬りかかる。その攻撃は見事に当たったが、ハリアーの鎧はなんとかその一撃を防いだ。
 クーガはちらりと後ろを見る。シャリア達に応援を求めようと思っての事だ。だがシャリア達はシャリア達で、死人の群に囲まれてしまっている。フィーのゴルタルが必死で囲みを破ろうとしているが、自らの攻撃がシャリアやブラガにも当たりそうで、うかつに攻撃できない。と、クーガの眼に信じたくない物が映った。彼はフィーに向かい叫ぶ。

「フィー!敵操兵だ!躱せ!」
『え!わあっ!?』

 今まで半壊して転がっていたはずの敵操兵、アーシュ・ドラーケンが立ちあがり、ゴルタルに攻撃をかけて来たのだ。その機体は所々腐り、腐臭を漂わせている。クーガは続けて叫んだ。

「死操兵だ!平たく言うなら、操兵版の死人だ!死操兵は、首しか攻撃の効く場所が無い!気を付けるんだ!」
『く、首だけですね!?わかりました!』

 フィーは鈍い動きで迫る、腐ったアーシュ・ドラーケンの攻撃を躱し、従兵機ゴルタルに攻撃させた。長槍の一撃は、見事にその首を貫く。だが死操兵はなかなか倒れない。フィーは思わず愚痴をこぼす。

『くそ、このゴルタルが、破斬剣を扱えるだけの器用さを持っていたらなあ。あの魔剣があれば、首に当てるのも簡単だったのに……。』

 フィーは再び死操兵の首目がけて長槍を繰り出した。だがその攻撃は惜しい所で外れてしまう。死操兵の一撃が、ゴルタルを掠め、フィーは冷や汗を流した。
 クーガはこの状況をなんとかする手立てを考えていた。だが、どう考えても今手の中にある布地で、あの宝珠を包んでしまうしか方法は無さそうだ。そしてそのためには、目の前にいる特別製の死人を、なんとかして倒さねばならない。だがこいつは動きが速く、なかなか攻撃を当てられないばかりか、こちらが斬られてしまいかねない危うさがある。クーガは慣れぬ長剣を振るいながら、必死で考えていた。
 その時、ハリアーがクーガに声をかけてくる。

「クーガ、申し訳ありませんが、しばしの間1人でこいつの相手をしていて頂けませんか?」
「……術を使うのか。わかった、まかせたまえ。」

 クーガはハリアーの考えを察し、あっさりと承諾する。ハリアーは1歩下がると、鎚矛をベルトに挿み、両手を前に組んだ。そして朗々と八聖者への祈りを詠唱する。クーガはその間、防御に専念して敵の攻撃を防いでいた。
 ハリアーの術が完成する。その瞬間、敵の足元から聖なる炎が立ち昇った。聖なる炎はエイムの死人を直撃する。特別製とは言え、死人は死人、聖なる炎には太刀打ちできなかった。たちどころに灰と化し、崩れ去る。灰となったその左手から、『オルブ・ザアルディア』がこぼれ落ちた。クーガは急いでそれを拾い、呪いの力に眉を顰めながら、あの封印の布地『神力遮断布』でそれを包み込んだ。
 その瞬間、それから立ち昇っていた光の柱が消滅する。同時に、周囲に満ち満ちていた邪悪な気配が、綺麗さっぱり消え去った。もう、死体が起き上って死人になる様子も無い。

「やりましたねクーガ!」
「ああ。だが既に死人になって動きだしてしまった者は、倒さねばならない様だな。」
「そうですね……。シャリア達を助けに行きましょう!」

 そう言うと、ハリアーは光る鎚矛を掲げ、シャリア達の方へ駆けて行く。クーガも後を追った。鎚矛の光が近付くと、死人は恐れるかの様に道を開けた。やがてシャリアとブラガの様子が見えてくる。シャリアは普通の様子だったが、ブラガはかなりの怪我をしており、聖刻器の兜『風神の兜』の力を開放して身を護っていた。

「大丈夫ですか、ブラガさん。」
「もうちっと早くしてくれよ……。死人を死体に戻す前に、こちらが死体になる所だったぜ。」
「ハリアー、フィーが危ない。」
「!?」

 クーガの言う通り、フィーはついに敵から一撃喰らい、機体に大きな損傷を被っていた。だが死操兵の方も、かなりのダメージをその首に受けており、もうひと押し、と言った所である。
 ハリアーは、鎚矛を再びベルトに手挟むと、両手で印を組み、八聖者に祈りを捧げ始めた。クーガはフィーに向かい、声をはり上げる。

「フィー!もう少しだけ耐えろ!今ハリアーが敵に術を使う!」
『わ、わかりました!』

 フィーは防御に集中する事にした。フィー操る従兵機ゴルタルは、死操兵の攻撃をひらりひらりと躱していく。やがて、ハリアーの祈りが完成した。

「八聖者のお力持ちて、天よりの裁きを!!」

 轟音と共に、天より落雷が落ちた。その落雷は、死操兵を直撃する。聖なる雷に焼き尽くされ、死操兵はボロボロと灰になって崩れ落ちた。
 クーガは言う。

「さすがだな。」
「これでも、貴方ほど派手じゃありませんよ。」

 そこへフィーのゴルタルがやって来た。

『さあ、死操兵もいなくなった事だし、一気に片付けてしまいましょう。』

 そう言ってフィーは、ゴルタルを死人の群へと突入させて行った。ハリアーは、自分に一時的に精神力を回復させる術を用い、その上でブラガに治癒の術を施す。シャリアはフィーの従兵機ゴルタルの手からこぼれた死人を相手にし、クーガはそのシャリアの支援をして長剣で戦っていた。
 全ての死人を始末できたのは、もう陽も落ちるぎりぎり寸前の事であった。ばらばらに千切れた死体が散らばっており、それが夕日に照らされて、非常に気味が悪い光景である。フィーの従兵機は、死体を埋めるための穴を地面に掘っていた。
 一同の顔色は暗い。目的である宝珠『オルブ・ザアルディア』の奪還は成功したものの、それがこれほどまでに危険な道具であったとは、考えもしていなかったのだ。いや、感知系の術でこの宝珠を調べた事のあるクーガだけは、薄々感づいていた様であるが。一同は、どうやってこの宝珠を始末したものか、頭を悩ませていた。



 次の日、ブラガを除くフィー達一同は、サグドルのいつもの酒場兼宿屋で休んでいた。あれだけの戦いをしたすぐその後なので、流石に新たな仕事の事など考えられなかった。そこへブラガが帰って来る。彼は疲れた様に言った。

「盗賊匠合のダイカさんに、エイムを生かして捕まえられなかった事を謝って来たぜ。まあ軽く許してくれたけどよ。」
「それはよかったですね。」
「ところでよ、結局どうすっか決まったのか?あの宝珠は、よ。」

 ブラガが話を振るが、皆押し黙る。ブラガは溜息をついた。

「……だったら、よ。いっその事、シャルク法王国まで足を延ばさねえか?」
「シャルクまで?ブラガ、あんたシャルクからは逃げ出して来たとか言ってなかったっけ。」
「そりゃそうなんだが、よ。俺だけじゃなく、クーガやハリアーにも居心地が悪い国だとは思うが。だが、背に腹は変えられねえだろ。クーガ、前に言ってたよな。あそこの僧侶なら、なんとか封印できるかも知れねえって。」

 ブラガの言葉に、クーガは頷いた。

「うむ……。アーハーレ・タルケン……シャルク法王国の首都にある大寺院の僧正以上の者ならば、あるいは……。
 だが、旅人達の噂話を聞いて調べた所、他にも高僧は存在しているらしい。特に隣の国、モニイダス王国――元、アレイ・モア王国と言ったな。そこの首都であるデル・ニーダル市には『南のマバディ』とまで呼ばれる、由緒ある聖拝寺院が存在する。そこはシャルク法王国すらも一目置いている程だと言う。
 更にその国には、ハリアーの属する聖刻教会の教会もあるらしい。そこの教会の僧正は、かなりの高僧で、以前その国で起こった大事件の際に、かなりの活躍を見せたらしい。」
「……なんだかんだ言ってるが、よ。行きたくねえんだな?シャルクに……。」
「……正直言えば、行きたくはないが。……だが、やむを得ないとあらば、躊躇うつもりは無いとも。」

 ブラガは溜息をついて言った。

「ま、いいだろ!んじゃあ操兵が直ったら、とりあえずはモニイダス王国へ出向いて見るか!まあ、またすぐデンに戻って来る事になるんだろうけど、よ。」
「いや……。もしかしたら、少しの間モニイダスに留まる事になるやも知れない。」
「?……それはどうしてですクーガ?」

 ハリアーが、クーガの台詞を怪訝に思う。他の一同も、同じような様子だ。クーガは説明する。

「例の解読中の古文書。あれが示している古代遺跡の場所だが、モニイダス王国の領土内にあるのだ。まず間違い無い、と思う。操兵が2体とも直るまでには、まだ時間がかかる。だからその間に、解読を済ませてしまうつもりだ。そうしたら、デル・ニーダルへ行くついでと言っては何だが、古代遺跡を発掘しよう。」

「そうだったんですか。そっか、古代遺跡がモニイダス王国内に……。」

 フィーは何やら感慨深げだ。しかしそれにシャリアが水を差す。

「前にもクーガが言ってたでしょ?未盗掘の遺跡かどうかはわからないって。既に発掘済みだった場合の、覚悟はしておかないと。」
「わ。わかってるよ。でも夢ぐらい見たっていいじゃないか。」

 フィーは文句を言う。一同の空気が柔らかくなった。だがクーガは、『神力遮断布』に包まれて簡易的に封印されている『オルブ・ザアルディア』に目をやると、眉を顰める。おそらく彼は、今後も襲いかかってくるであろう、この宝珠がらみの騒動に、頭を痛めていたのだ。そんな彼の様子を、ハリアーは心配そうに眺めた。


あとがき

 ついに『宝珠』の力の一端が明かされました。なんと負の生命(いわゆるアンデッド・モンスターですね)を無尽蔵に創り出す力を持っていました。ですが、まだそれだけではありません。今はまだ秘密ですが、他にも恐ろしい力を秘めています。フィー達一同は、この危険な宝物に、どう対処していくのでしょうか。
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