第7話:月光
ある週末の深夜、第三新東京市中央病院に1人の侵入者があった。この病院はネルフ本部直下の組織であり、その護りは堅い。しかし厳重な警備システムにも関わらず、その侵入者の姿は誰にも捉える事はできなかった。何故なら侵入者には、「姿」その物が無かったからである。侵入者は光学迷彩でも施しているのか、その身を透明にしていたのだ。
姿なき侵入者は、病院の霊安室へと忍び込む。そしてそこに安置されている遺体から、髪の毛や爪などを採取して回る。侵入者はその後、夜間でも解放されている緊急病棟を誰の目につく事も無く通り抜け、病院外へと脱出に成功した。そこで侵入者は、隠されていた姿を現す。それは中学生ぐらいの細身の少年……碇シンジの姿であった。
(……ふう、《不視》と《隠伏》を同時に長時間維持するのは、流石に疲れたな。《遠眼操》で場所を確認して、《瞬動》で空間転移した方が楽だったかも……。いや、気力の消耗はともかく、マーナの消耗は避けなきゃいけないもんな。うかつに高位の術法は使う訳にはいかないよな。)
シンジは足早にその場を去る。目的である術法の触媒……死者の髪の毛や爪は、上手く大量に手に入れる事ができたのだ。彼は今回の収穫に充分満足して、自分の官舎へと帰って行った。その後、サードチルドレンをロストしていたため大騒ぎになっていた保安諜報部のサードチルドレン護衛担当達は、目標が無事に官舎へ帰って来たとの報せを受けて安堵する事になる。
次の日、シンジはいつも通り中学校へと登校して授業を受けていた。ちなみに、相変わらず教室では、級友達は彼の事を腫れものを触る様な感じで扱っている。級友を自らが操縦するロボット――正確には人造人間と呼称されているのだが――での戦いに巻き込んで死亡させたと言う噂は、彼を教室で孤立させている。だがそれを善しとしない鈴原トウジ等がその雰囲気を払拭せんと努力した結果、少なくとも以前まであった敵意の様な物は鳴りをひそめていた。もっともシンジは、中学生ごときの敵意など毛ほども気にしていなかったのだが。
先程は、シンジは授業を受けていると述べたが、実の所彼は真面目に授業を受けていたわけでは無い。彼は授業用のノートPCを用いて、株の売買をやっていたのだ。彼の投機や投資は的確であり、ほぼ確実に儲けを出している。そしてそんな事をしながら、教師から指名を受けた際には、その問いに完璧に答えていたりもする。教師からすれば、実にやりづらい生徒であった。
だが実の所、シンジのその株の売買等の行為にしても、シンジからすれば片手間にやっているに過ぎない。彼が本当に行っていたのは、彼の父親たる碇ゲンドウと、その腹心冬月コウゾウを見張らせていた霊からの報告の検討である。彼は死者の髪の毛等を触媒として、死者の霊魂を呼び出し、それを操ってゲンドウ達を監視させていたのだ。
(……初号機に、母さん……『碇ユイ』が眠っている、とはねえ。最終的な目的はまだ分からないけれど、父さん達のとりあえずの短期目標は、『碇ユイ』を覚醒させる事、かあ。そのために『エヴァに乗った状態の僕』を窮地に陥れようとしている。でもなんで、僕が窮地に陥れば『碇ユイ』が目覚めるんだ?エヴァのシステムについても調べないと駄目かな、これは。
よし、今度からは赤木博士にも霊を付けておこう。専門的な事は分からないけど、概要的な所だけでも調べておこうか。……待てよ?赤木博士の助手的な位置に居る、オペレータの伊吹マヤ2尉はどうだ?赤木博士よりもガードは低いかも。こっそり心を読んでみるのもいいかな。……いや、マーナの消耗が怖いな。
おっと、考えが横道に逸れたな。今一番大事なのは、父さん達が僕を窮地に陥れようとしているって事だ。どうする?父さんを排除するか?う〜ん、それは容易にできるけれど……。まだ情報が集まってないからな。現状は破壊工作とかに注意しつつ、様子見か。あと今度実験か何かで初号機に乗ったら、一寸深くまで『潜らせて』もらおう。母さん……『碇ユイ』が、どの様な状態でいるのか調べておこう。……でも流石に出撃の時にはできないよな。)
シンジがつらつらとそんな事を考えながらノートPCのキーを打っていると、ふと視線を感じた。彼は顔を上げ、そちらの方を見て微笑んで――それはいつものへらへらした薄っぺらい笑顔ではない――見せる。視線の方向や、それから感じ取れる感情などにより、彼はそれが誰の視線か分かっていたのだ。その視線の主は、レイである。
レイは突然微笑みかけられて、ぴくりと眉を上げたが、それ以上の反応をせずにそのままシンジを見続けた。シンジはもう一度微笑むと、またパソコンに向き直った。と、その時である。突然、シンジとレイの持つ携帯電話の着信音が、最大音量で鳴った。
本来授業中には、携帯電話は電源を切って置く事になっている。だがネルフから渡された携帯電話は事情が違う。その携帯電話は、たとえ電源を切っていても完全には電源が落とされておらず、待機状態となっているのだ。そして非常時には遠隔操作で電源を立ちあげ、ネルフからの連絡を着信させる事ができるのである。
そう、非常時には、だ。つまり今は非常時、と言う事になる。そしてエヴァンゲリオン・パイロットの2名に緊急の連絡が来るほどの非常時と言えば、話は決まっている……次なる使徒の襲来だ。
「はい、シンジです。はい……、はい分かりました。」
「レイです。……了解。」
2人は異口同音に、教壇の教師に向かい言った。
「「早退します。」」
「あ、ああ。わかった、行きなさい。」
上の方から色々と言い含められているその教師は、突然言われた2人の早退宣言を、文句も言わず承認する。シンジとレイはパソコンの電源を落とすのもそこそこに、教室を駆け出して行った。既に校門には、ネルフ本部の保安諜報部が自動車を回している。2人が乗り込むと、即座にその自動車は発車し、法定速度を無視してネルフ本部へと向かった。
『目標は芦ノ湖上空へ侵入。』
『エヴァ初号機発進準備完了!』
オペレータ達――青葉シゲルと伊吹マヤ――の声が、発令所内およびケイジ、そしてエントリープラグ内部に響き渡る。初号機のプラグ内で、シンジは精神を集中させていた。彼は初号機の精神と、会話をしていたのである。
(…………。)
(やあ。調子はどうだい?それと前の時から今まで、何か細工をされたりしたかい?)
(……。)
(そうかい。流石に何回も似た様な細工をしたら、怪しまれるってもんだからね。だとすれば今回は大丈夫かな?父さん達を見張らせていた限りでは、何か工作を仕掛けさせた様子は「まだ」無かったからね。
やれやれ、使徒も面倒だけど、後ろの敵にも気をつけないといけないとはね。)
(……!……。)
その時、ミサトの声がエヴァンゲリオン・パイロット達に呼びかけて来た。
『シンジ君!レイ!用意はいいわね!?』
『は……。』
「あ、一寸待ってください。」
レイが「はい」と応えようとした瞬間、シンジが否定の意を返す。ミサトは苛立ちを隠さずに、シンジに訊ねた。
『シンジ君、一体どうしたの!?』
「敵の情報を何一つ貰ってませんよー。それと作戦方針も。」
『……敵の情報は、外見以外何も無いわ。その外見は、そちらのモニターに映した通りよ。』
エントリープラグ内壁の画面にウィンドウが開き、そこに使徒の姿が映し出される。その姿は、全体的に透明感のある青色をしており、ピラミッドを上下に2つ組み合わせた様な正八面体をしていた。それが宙に浮遊し、第三新東京市へと侵攻して来るのだ。ミサトは続ける。
『国連軍は攻撃を控えていたから、攻撃方法も防御力も不明。作戦方針は、シンジ君が前衛で白兵戦による攻撃、レイは射出後武器庫ビルからパレットライフルを取ってシンジ君を援護。これでいいわねっ!?』
「あともう2〜3聞き……。」
『もう使徒は目の前まで来てるのよ!ぐだぐだ言ってる暇は無いの!エヴァ初号機、零号機発進!』
オペレータの一人、日向マコトはミサトの号令に反射的に従い、電磁カタパルトのスイッチを入れる。シンジはいつものへらへら笑いを顔に貼り付けたまま、発進Gに耐える。
「まあ、色々と諦めてましたけどねー。あははは。
……!?」
突然マヤが叫んだ。それに初号機の叫びが重なる。
『初号機、顎部拘束具破損!初号機の機体制御システムより電力要求!初号機腹部に高エネルギー反応!』
『ごおおあああぁぁぁあああおおおぉぉぉ!!』
『ちょ、シンジ君何してるの!?』
ミサトが泡を喰って、同じく叫ぶ。だがその声はシゲルの緊迫した声に遮られる。
『……!目標内部に高エネルギー反応!周円部を加速!収束していきます!』
『まさかっ……加粒子砲!?だめっ!シンジ君、レイ、よけてっ!』
使徒の攻撃方法に思い当たったミサトが叫ぶが、初号機も零号機もリフトに拘束具で固定されている。動けるはずが無い。青い正八面体の一角から、強烈な光の奔流が吐き出される。その光条は装甲ビルを融解させ、リフトにより地上に姿を現したばかりでまだ拘束を解かれていない初号機の胸元に突き刺さった。初号機とシンジの絶叫が響く。
『ごああああおおおおおぉぉぉぉ!!』
「うおおおぉぉぉぁぁぁぁっ!!」
だがその致命的な破壊力を持つ光は、しかし初号機にさほどのダメージを与えてはいなかった。マヤが叫ぶ様に、初号機の状況を報告する。
『そんな……。初号機の胸部装甲が、加粒子砲を弾いています!いえ、粒子ビームを弾いているのは、ビーム焦点付近のごく一部の装甲だけの様です!その周囲の装甲板は加粒子砲の余波により融解しつつあります!まるで装甲の一部だけが、その強度を桁外れに増しているみたい……。』
そう、シンジは呼吸法により発生させられる気――プラーナとも呼ばれる――を用い、ビームが命中する個所に集中させて、一種の障壁を張っていたのである。初号機の気による防御壁……気盾は非常に強固であり、たとえ使徒の加粒子砲と言えど防御する事ができる。しかし全身の気を1点に集中すると言う特性上、その防御範囲は極めて狭い。それ故にシンジは、ビームの焦点にのみ気盾を張り、ビームの余波による損傷を回避する事は諦めたのだ。
ミサトは一瞬呆然としていたが、すぐに我を取り戻す。彼女はマコトに命じた。
『な、何をしてるの!?はやく初号機、零号機をリフト・オフして!』
『は、はい!』
(……反応、おっそい。ま、あの人達じゃ仕方無いか。)
シンジは口に出さずに、発令所の面々への評価を下した。初号機は拘束から解放されると、すかさずその場を飛びのく。その機動力は信じ難い程だ。使徒の加粒子砲は、まったくその照準が追い付いていない。初号機の後を追いかける様に粒子ビームが走り、地面や建造物に深い溝を抉って行く。
だが初号機その物には命中していないその攻撃も、決して初号機に打撃を与えていないわけではなかった。マヤが叫んだ。
『初号機、アンビリカルケーブル断線!内蔵電源に切り替わります!』
(あ、マズいかなこりゃ。)
そう、初号機のみならずエヴァンゲリオン全てに共通の弱点である、アンビリカルケーブルである。初号機の後ろに引き摺られる形のアンビリカルケーブルは、使徒の加粒子砲に撃たれて断線してしまったのだ。初号機自体は舞う様な動きで加粒子砲を躱すが、さりとて攻撃に移れるほどの余裕があるわけでも無い。このままでは電源切れで敗北する事は、目に見えていた。
その時、激しい銃撃が第五使徒を襲う。零号機の援護射撃だ。だがその攻撃は、使徒のA.T.フィールドを破れない。赤い八角形の光が使徒の前面に展開され、劣化ウラン弾が爆煙を上げる。シゲルが叫んだ。
『目標に再度高エネルギー反応!』
そして第五使徒の一角から、凄まじい光の束が吐き出される。使徒の加粒子砲の目標は、今度は零号機だった。零号機は試作機であり、その装甲もテスト用の形ばかりの物でしか無い。更に言えば、パイロットたるレイは気の扱いなど知るはずも無い。その防御力は、初号機に比べてあまりに頼り無い物でしか無かった。つまり使徒の加粒子砲を受ければ、致命的ダメージを受ける事になるのは目に見えている。ミサトが悲鳴を上げた。
『駄目っ!逃げてレイ!』
だが次の瞬間、零号機の姿はそこには無かった。凄まじい粒子ビームが、その先にあった電源ビル――それには零号機のアンビリカルケーブルが接続されていた――を融解させる。そしてそこにズズンと音を立てて、零号機が持っていたパレットライフルが落ちた。
「……大丈夫?綾波。」
『……碇君?』
初号機は、零号機を小脇に抱えつつ全力で疾走していた。シンジは発令所に向かって、いつもの薄っぺらい笑みを浮かべながら要請する。
「あー、葛城さーん。ちょーっとマズい事態です。電源がもうすぐ切れますです、ハイ。零号機もケーブル切れましたし。緊急回収……してくれません?」
『ちょ、ちょっと待って!日向君、最寄りの回収口を初号機に転送して!』
「ああ、あと兵装ビルなり、その他の兵器なりから攻撃して、使徒の注意を引き付けてもらえると、なお良いですねぇ。……よっと!」
初号機はまたも放たれた使徒からのビームを、軽々と躱す。そしてシンジ操る初号機は、使徒が次の射撃のためのインターバルに入った瞬間を見切り、マコトが絶妙のタイミングで動かした緊急回収用エレベーターに零号機ごと飛び込むと、地下へと姿を消して行った。ちなみに兵装ビル群からの支援射撃は、全然間に合わなかった。
第五使徒は、その正八面体の身体の下端からボーリング・マシン状の、直径17.5mの巨大ドリル・ブレードを伸ばし、地下のネルフ本部に向けてジオフロントの装甲板を掘削していた。ドリル・ブレードがネルフ本部へ到達するのは、明日の午前零時6分54秒と予想されている。
ミサトは今、初号機のダミーや自走臼砲等の兵器を活用して得た情報を分析していた。だがそれと同時に、彼女は激しく自省していた。
(……なんで最初にこれをやらなかったんだろう。最初に通常兵器による攻撃を……威力偵察を試みていれば、あの使徒の攻撃能力が、加粒子砲だと言う事は判明していたはずなのに……!!シンジ君が助かったのは、あの子の能力が嘘みたいに高かったから。もし狙われたのがレイだったら、紙装甲の零号機と相俟って、あの子はきっと酷い事になっていた……!!)
以前にも述べたが、葛城ミサトは、まったくの無能と言う訳では無い。ただその能力、そして何よりも性格は、指揮官向けとは言い難いだろう。そして彼女の問題点はそれだけでは無い。彼女はある事情により使徒に対しての敵愾心が強過ぎ、それ故に使徒戦の現場において近視眼的になってしまう癖があるのだ。だからこうやって時間を与えられ、自分を省みる事ができる様になれば、彼女は自分のやった間違いを理解できる。彼女はそれだけの能力は、ある事はあるのだ。
もっともその反省が、次の機会に活かされるかと言うと、それには首を傾げざるを得ない。それは彼女の性格面に根差した問題である。そして彼女の不始末の付けは、任務上の危険と言う形で、主にエヴァンゲリオン操縦者たるチルドレンが支払う事になるのだ。
ミサトは自らの両頬を、両掌でぱちんと叩く。とりあえず反省も後悔も、心の棚の上に乗せて置く事にしたのだ。今はうじうじとしている場合では無い。ミサトは技術部長赤木リツコ博士と、今しがた浮かんだ作戦のアイディアについて協議するために、初号機ケイジへと内線を繋いだ。今リツコは初号機ケイジにて、装甲の換装作業を指揮監督しているのである。
彼女が棚の上に乗せた荷物を降ろす日が来るのかどうか、誰も知らない。と言うか、後悔はともかく、反省は降ろして欲しい物である。
シンジは初号機ケイジにて、初号機の修理作業を見ていた。初号機の胸には、中心部に丸くそこだけ損傷の無い部位があり、その周囲に焼け焦げ融けた様な跡が広く残っている。これはシンジが気盾で加粒子砲を受け止めた跡だ。気盾の面積分だけが損傷無しに残り、その周囲は粒子ビームの熱でやられたのである。と、シンジに修理作業を監督していたリツコが話しかけて来た。
「シンジ君、いったいどうやったのかしら?装甲ビルを一瞬で融解させる加粒子砲を受けていて、たったこれだけ……第1装甲板に軽度の損傷だけで済ますなんて……。胸に丸く無事な個所が残っているって事は、そこだけ何かで防御したのよね?でもA.T.フィールドでは無いわね。相転移空間が観測されなかったから。」
「ぶっちゃけた話、気合いですね。呼吸法によって気合いを高めて、攻撃力を増大させるってのは以前言いましたよね?あの攻撃力を増大させる力を守りに回したのが、今回の技です。でも全身の力を全て集中させるんで、あの様に……。」
そう言ってシンジは、外されてクレーンで運ばれて行く初号機胸部の装甲板を指差す。
「あの様に敵の攻撃が直撃するその場所だけを守るのが精いっぱいだったんですよ。だからその周囲は、見た通り輻射熱でやられちゃいましたね。」
「こうやって目の前でその結果を見せられてても、まだ信じられないわ。」
「……既存の理論に合わないからって、目の前に事実があるんですから、それを否定する方が非科学的ですよ。」
「確かにそうね。……ね、シンジ君。ちょっと解剖させてくれないかしら?」
「すぐに元通りに、しかも完璧に戻してくれます?あと、痛くしない事。充分な報酬が用意される事。欲を言えば、それで確実に僕の技の理屈が解明できる。その前提が100%確実に保証されるなら、考えなくも無いですが。」
「流石に一寸無理ね……。」
リツコは苦笑する。シンジはいつも通りのへらへら笑いだ。リツコは腕時計を見る。
「そろそろ時間ね。ミサトから次の作戦について、意見を聞きたいって言われてるのよ。マヤ!」
「はい先輩!」
「ここはちょっと頼むわね。私は作戦部との会議があるから。」
「はい!」
リツコはマヤに、細々とした注意を伝える。その間シンジは初号機の方をじっと見ていた。
「――と言う事でお願い。じゃあ行くわ。シンジ君、貴方もパイロット控室で少し休んでなさいな。しばらくしたら、また出番なんだから。それじゃね。」
「ええ、そうさせてもらいますよ。ではまた。」
離れて行くリツコと、作業に移るマヤを見送り、シンジはパイロット控室へ行こうと踵を返す。と、そこへ誰かがやって来るのが見えた。
「……あれ?綾波。どうしたの?」
そう、そこへやって来たのはレイであった。彼女はぽつりと言葉を口にする。
「パイロット控室に居なかったから。」
「え?僕を探しに来てくれたの?」
「ええ。次の作戦開始まで、休んでいた方がいいわ。」
「……そうだね。」
それきりレイは喋らなかった。シンジも無理に喋ろうとは思わない。2人の間に沈黙が流れる。だがそれは、決して嫌な沈黙では無かった。シンジはいつもの軽薄な笑みではない、柔らかい微笑みを浮かべ、パイロット控室の方へと歩き出した。
この日の深夜、シンジとレイは双子山仮設基地に居た。彼等は既にプラグスーツに着替えている。彼等の前にはミサト、リツコ、マヤが立っており、彼等の後ろには巨大なエヴァンゲリオンサイズの狙撃銃の様な物が鎮座していた。ミサトが2人に語りかける。
「いい?これからの説明をよく聞いて。これがポジトロン・ライフル。戦自研で開発途中だったものをネルフが徴発し組み立てたもの……。間に合わせだけどね。計算上ではこの超長距離からでも敵のA.T.フィールドを貫くに足るわ……。もとが精密機械のうえ急造仕様だから、野戦向きじゃないのが難点だけど……。
そこでこの盾。」
ミサトの視線が、ポジトロン・ライフルの更に向こうにあるエヴァンゲリオン初号機の方に向く。
「こちらも急造仕様だけど、もとはSSTOの底部で超電磁コーティングされている機種だし、敵の砲撃にも17秒は耐えるわ。」
ミサトの視線がシンジとレイに戻って来る。彼女はその目に力を込めて言う。
「レイは零号機で砲手を担当。」
「はい……。」
「シンジ君は初号機で防御を担当して。」
「了解。」
ミサトはほんの少し眉を上げる。
「……意外ね。茶化す様な事、言うのかと思ったわ。」
「茶化して欲しいならそう言ってくださいよ。御望みとあらばいくらでも……。」
「いえ、やめて頂戴。悪かったわよ。……この役割分担は、初号機だとインダクション・モードが働いていないからよ。今回の精密射撃には、MAGIによる補佐が絶対に必要なの。だから零号機にポジトロン・ライフルを撃ってもらうわ。」
「レイ、陽電子は地球の自転、磁場、重力の影響を受け、直進しないわ。その誤差を修正するのを忘れないで。」
リツコが砲手であるレイに注意を促す。レイは頷いた。
「はい……。」
「いつもの訓練通りにやれば、あとは機械がやってくれるわ。」
リツコの話が終わったのを見計らい、シンジが質問を投げかける。
「葛城さん、赤木博士、もし敵が先に撃ってきたらどうします?最初に使徒が加粒子砲の発射態勢を整えたのは、まだ初号機零号機が地下にいた時でしたよね?相手の予想される射程よりも外だとは言っても、ここに高エネルギーが集まったりすれば、奴は反応したりしませんかね?」
「「!」」
ミサトとリツコは目を見開いた。ミサトは口を開く。
「大丈夫よ、一瞬でも先に撃てればこっちの勝ち……。」
「いえ、待ってちょうだいミサト。」
リツコがミサトに待ったをかける。ミサトは眉根を寄せた。リツコはそれに構わずに話す。
「その場合、どんなに急いで撃ったとしても、同時発射になる可能性が高いわ。そうなったら、陽電子はさっきも言った通り磁場の影響を受けるから……加粒子砲のビームと互いに干渉し合って両方外れる事になるわ。そうなったら使徒の2射目をシンジ君に盾で護ってもらうしか無いんだけど……。こちらが2発目を撃つには……。」
「……20秒はかかるわね。盾は17秒しかもたない……。」
ミサトは悔しげに言う。だが彼女はすぐに立ち直り、ぱっと考えを纏めるとそれを口に出す。
「敵が撃って来そうだったら、一旦射撃を中断してちょうだい、レイ。そしてMAGIの再計算を待って射撃して。その方が、冷却や再充填、ヒューズ交換するよりも結局は早く撃てるわ。それならばおそらく、盾が融けるまでに射撃が間に合うわ。万が一盾が融けても、シンジ君なら昼間にやって見せた方法で耐えられる可能性があるけど……。でもそれに頼りっきりになるのは、ちょっと不安だわ。」
「やれと言われれば、やって見せる自信はありますけどね。」
シンジの台詞にミサトは微笑んで見せる。
「時間よ。2人とも準備して。」
「はい。」
「了解です。」
シンジとレイは、初号機と零号機の元へ向かった。
シンジとレイは、仮設のアンビリカルブリッジ上に座っていた。シンジがぽつりと言う。
「……街の灯りが全部消えた、か。」
「……そうね。」
レイが返事を返す。シンジは少しの間黙ったままだった。だが彼は意を決したかの様に、口を開く。
「綾波。ちょっとこっちを見てくれるかな。」
「……何?」
シンジは仮設アンビリカルブリッジの上に立ちあがり、レイの方を向いた。レイは顔だけをそちらに向ける。と、シンジの顔にうすぼんやりと光る紋様が浮き出て来た。補助ライトしかない仮設アンビリカルブリッジの上では、その光る紋様は非常に目立つ。そしてその紋様は、次第にその形を立体的に変化させて行く。レイは息を飲んだ。
そしてシンジの顔には、何時の間にか漆黒の仮面がはまっていた。その仮面の表面には、金色の塗料で輝く紋様が描かれている。シンジは徐に言葉を紡いだ。
「前に約束したよね。僕の秘密はまたそのうちに、って。だから……少しだけ話してあげるよ。今から4年前、かな。僕が魔法使い――正式な名前は「練法師」って言うんだけど――ソレになったのは。住んでた親類の家の裏山で、崖から落ちてね。そこで頭を打って死にかけたんだ。そして……そこで僕はこの「仮面」に出逢った。」
レイはその仮面から目が離せなかった。強烈な力を感じさせるその仮面は、強力に他者を惹きつける「何か」を発散している。シンジは言葉を続けた。
「この仮面には魂があるんだ。そしてその魂が、元々の僕の魂を融合して取り込んだんだ。今の僕の本体は、この肉体じゃない。こっちの仮面の方が、僕の本体なんだよ。自我意識の中核も、「碇シンジ」の物では無く、この仮面の物になっているんだ。
そして僕の本体であるこの仮面は、元々『造られた者』だ。人造の存在だ。そう言う意識を持っている。だからこそ僕は、ある意味で同類と言える『造られた者』であるヒト達には誠実でありたいと思っている。初号機や、君の様な、ね。」
シンジはその顔から仮面を消して、普段の顔に戻った。少し寂しそうな顔で、ぽつりと彼は呟く。
「まあ君からすれば、迷惑かも知れないけど……ね。」
「違う……。」
「え?」
レイの声に、シンジは目を丸くする。レイははっきりとした言葉で続けた。
「違う。迷惑なんかじゃ、ない。」
「……ありがとう綾波。」
レイは立ち上がった。そろそろ作戦開始時間なのだ。シンジは声を上げる。
「ああ、時間か。綾波!」
「……何?」
「綾波は、僕が守るよ。……行こう。」
「……ええ。」
2人は仮設アンビリカルブリッジの上から、エントリープラグへと入り込んで行く。そして初号機と零号機が各々起動し、作戦位置についた。
双子山仮設基地の指揮機能を掌握する指揮車両内にて、いつも発令所にいるメンバー達――本来より若干少なく、残りの面々はネルフ本部の発令所に詰めている――は、作戦前の準備を行っていた。マコトがコンソールから顔を上げ、振り返る。
「時間です。」
「レイ……。日本中のエネルギー、あなたに預けるわ。」
ミサトの言葉に、零号機のレイが返答を返す。
『はい。』
ポジトロン・ライフルを伏射姿勢で構える零号機の脇では、盾を持った初号機が待機していた。指揮車両では、着々と作戦準備が整って行く。
「第一次接続開始。」
「第1から第803区まで送電開始。」
ミサトが叫ぶように宣言する。
「ヤシマ作戦スタート!!」
オペレータ達の声が指揮車両内に響く。
「電圧上昇中、加圧域へ!」
「全冷却システム出力最大へ!」
「陽電子流入順調!!」
「第2次接続!!」
「全加速機運転開始!」
「強制収束機作動!!」
指揮車両内で、ミサトとリツコは作業の様子をじっと無言で見守っている。
レイは零号機エントリープラグ内で、じっと自分の順番を待っていた。指揮車両からの通信回線が、作戦準備の様子を流して来る。
『全電力、双子山増設変電所へ!』
『第3次接続、問題無し!』
そしてミサトが最終安全装置の解除許可を出す声が響いた。
『最終安全装置、解除!』
『撃鉄起こせ!』
マコトの指示に従い、レイは零号機にポジトロン・ライフルのコッキングレバーを引かせる。同時にレイの頭にヘッドギアが降りて来た。このヘッドギアの内側にはディスプレイがあり、それには使徒の姿がCGで描かれ、それに重なって照準マークが表示されている。そのマークは、今はまだばらばらに散らばっており、照準が正確に合っていない事を表していた。
『地球自転誤差修正マイナス0.0013!』
『第7次最終接続。』
『全エネルギー、ポジトロンライフルへ。』
レイの視界の中で、照準が徐々に揃って行く。
『発射まであと10秒。』
『9、8、7……。』
『目標に高エネルギー反応!!』
マヤの叫びが耳を打つ。照準はようやくの事で揃う。次いでミサトの声が、零号機のエントリープラグ内に響いた。
『射撃中止!シンジ君!』
『はーい。』
零号機の前に、巨大な盾を携えた初号機が飛び出して来た。それとほぼ時を同じくして、使徒が発砲するのが見える。加粒子砲の強烈な光芒が暗闇を劈いて、双子山仮設基地……正確にはエヴァンゲリオン零号機が構えるポジトロン・ライフルめがけて襲いかかった。
だがしかし、その強烈な砲撃は零号機には届かなかった。初号機が構えた盾は、その性能を十全に発揮し、使徒の加粒子砲を防いでいたのである。
『いいわよシンジ君!』
『待って。……加粒子砲の威力が、前回測定時よりも高いわ。このままでは17秒ももたない。』
『なあんですってぇ!?再計算は!?』
『全力でやらせているわ。』
初号機の持つ盾は、急速に融解していく。レイの視界の中で、盾を構えた初号機が、光に包まれている様に見えた。
「碇君……!」
使徒の加粒子砲による磁場の乱れで、一度は揃っていた照準は再度ばらばらになっている。MAGIによる再計算で、照準は徐々に揃って行っているが、まだ時間はかかりそうだ。
『まだなの!?』
『あと10秒!』
(碇君……!!)
レイの心の中に、焦りが浮かぶ。しかし彼女はそれを焦りであるとは認識していなかった。認識していなかったが、それが不快である事は、彼女は理解している。何が不快なのか……。それはシンジが危険に陥っているからである。その事は、彼女にもしっかりと分かっていた。
もう少しで初号機の盾が融け落ちると言う時、初号機が大きく口を開いた。そして吼える様な声を上げて、呼吸らしき行動を行う。
『ごあああぁぁぁうううぅぅぅ!!』
『初号機、顎部拘束具破損!初号機機体制御システムより大規模な電力要求!』
そう、初号機は……シンジは、今まさに気による防御を行おうとしているのだ。この防御方法は、以前も第五使徒の加粒子砲を防ぎ、軽度の損傷で済ませている。
だが初号機が気を練り上げる一瞬前、零号機の通信ウィンドウに映っているシンジの画像に異常が起きた。シンジの身体が突然、まるで感電したかの様にのけぞったのである。レイは目を見張った。
そして初号機の盾が融け落ち、初号機はその機体そのもので零号機をかばった。
指揮車両の中では、リツコが冷たい視線でディスプレイを見ていた。その画面の中では、初号機が使徒の加粒子砲に晒されている。彼女はポケットの中で、つい先程ONにした遠隔スイッチを弄んだ。
シンジは凄まじい熱さの中、必死に意識を保っていた。周囲のL.C.L.は、既にかなりの温度になっている。彼は苦笑して、舌打ちした。
(ち……。やってくれる。僕が気盾を張る直前を見越して、L.C.L.に電流を流すとはね……。たぶん後日、漏電とか言い訳をするんだろうけど。おかげでせっかく練った気が、散じてしまった……。しかし父さん達には、支配した霊魂を見張りにつけてたんだけどな……。通常の業務なんかに紛れて指示を出されたのかも知れないな。
しかしエントリープラグに細工をされるとなると、実行犯は赤木博士かな?伊吹2尉は、今の所無いと思うけれど……。)
シンジはエントリープラグ内壁に映る画像に目を遣る。そこにはポジトロン・ライフルを構える零号機が映っていた。画像には時折ノイズが混じる様になっている。どこか損傷した様だ。
(初号機……。もう少しだけ、頑張ってくれるかい?)
(……。)
(ありがとう。もうすぐ綾波が、あの敵を終わらせてくれるから。それまでの辛抱だ。)
(……。……。)
(ああ、こんな事をしてくれた奴には、近いうちに報復してやろう。)
シンジは初号機と高度に同調している。そのため、初号機の感じている苦痛を、彼は如実に味わっている。そして更に彼は、自身の身体が感じている熱さという苦しみも、耐えなくてはならないのだ。
零号機からレイの声が届く。
『碇君……!』
『今よっ!撃って!!』
ミサトが吼える様に叫んだ。ようやく再計算が終わったのだ。レイが引き金を引いたのだろう、零号機のポジトロン・ライフルから、陽電子束が使徒めがけて撃ちだされる。
ドグオオオォォォッ!!
ポジトロン・ライフルから放たれた光条は、使徒のA.T.フィールドをものともせず、使徒の中心……そして内部に隠されていたコアを撃ち抜いた。指揮車両では歓声が上がる。
『『『やった!』』』
事にミサトの喜びようは、際立っていた。第三使徒戦、第四使徒戦共に、その勝利はシンジの腕前に全面的に頼った戦いであり、作戦によって勝利したのは今回が初めてであったのだ。
使徒の攻撃により回線に異常が出たのか、ひどくノイズ混じりのその歓声を聞きながら、シンジは自分と初号機の全身から力を抜く。さしものシンジであっても、そろそろ限界が近かったのだ。初号機はうつぶせに大地に倒れ伏した。
レイは零号機を操り、初号機に駆け寄らせる。そしてエントリープラグを零号機の手で強制的に排出させ、抜き取って地面にそっと横たえた。レイは零号機から急いで降りる。何故急いでいるのか、今のレイには漠然とではあるが分かっていた。シンジの事が心配なのである。
初号機エントリープラグの緊急脱出用のハッチへとレイは走り、それを解放すべくハンドルを引き出して回した。プラグスーツの掌から煙が上がる。ハッチやそのハンドルを含むエントリープラグの外壁は、かなりの熱を持っていた。
「くうっ……。」
レイは掌に感じる苦痛に耐えつつ、ハンドルを回し続ける。
バンッ!!
大きな音を立てて、ハッチが解放された。その中に飛び込んだレイは、シンジの姿を探した。シンジはエントリープラグ内の、インテリアの正位置に座っている。その顔面には、あの仮面が被さっていた。レイはシンジの傍らに走り寄る。
「碇君……。」
「……綾、波?ああ、ごめん。身体の修復が終わるまで、精神活動を一時停止させてたんだ。熱くなったL.C.L.のおかげで、肺をちょっとやられたんでね。」
「……大丈夫?」
「ああ、この仮面の力があるからね。最悪、ある程度の原型が残ってれば、身体は修復できる。本体は仮面の方だしね。……ちょっとマーナを余計に使うけど。
……心配してくれて、ありがとう綾波。」
レイは目を伏せる。シンジは被っていた仮面を消すと、よろよろと立ち上がった。レイはぱっと顔を上げ、急いでシンジの身体を支える。
「あ。ありがとう綾波。」
「いえ……。」
「……ねえ綾波、今なんて言うのか……哀しそうと言うか、寂しそうと言うか、そんな顔してたけど、どうしたんだい?」
シンジはレイの、ほんの僅かな感情表現を読み取っていたのだ。レイは少しの間黙っていたが、やがて訥々と語り出す。
「あなたが無事だったから、本当は……嬉しいはず。いえ、嬉しい……んだと思う。心が……暖かくなったから。」
「……。」
「だけど……。それが表に出せない……。どうすれば良いのか、わからないの。」
シンジは少し、悲しげな顔になる。だが彼は真摯な表情になると、あらためてレイに顔を向けた。
「綾波……大丈夫だよ。かならず君も、できるようになるさ。だって君は、心が無いわけでも、心を凍らせているわけでも無い。いろんな事を心で感じる事が、ちゃんとできてる。だったらあと少しだよ。
とりあえず、今はお互いに無事だったんだ。僕は君を護れた。君は僕を助けてくれた。それをお互い喜んで、笑っておこうよ。」
「……笑う?」
「うん。笑うんだ。」
そしてシンジは、本当に嬉しそうな笑顔を見せた。レイは思わずその表情に引き込まれる。そして彼女は、自分でも笑ってみた。彼女の口元が綻ぶ。その眼が優しく緩む。レイは自分が微笑んでいる事を理解した。
レイは徐に口を開く。
「……行きましょう。」
「ああ。」
シンジはレイに肩を借り、エントリープラグから外へ出る。初号機と零号機の巨体の向こうに、天高く満月が昇っていた。シンジは小さく息を吐く。
「月、か。」
「……。」
「綺麗だね。」
「……ええ。」
2人はしばらくその場で月を眺めていた。シンジは、レイに肩を借りている方とは別の手を、ふと空に伸ばす。届く訳は無い。だがシンジは月に手を伸ばす。そして彼は、その手を握り締めた。レイはその様子を、ただ見つめる。2人は回収班が迎えに来るまで、そのまま月を眺めていた。
ネルフ本部の発令所、司令塔の上で、2人の男が密談をしていた。その2人とは、ネルフ総司令官たる碇ゲンドウと、副司令である冬月コウゾウである。冬月は溜息を吐く様に言った。
「……今回も、彼女の覚醒には至らなかったようだな。しかしあの様なタイミングで仕掛けるなど、危険すぎる。もし作戦が失敗していたら、どうするつもりだったのだ?」
「問題無い。赤木博士には、作戦の成功が見えた時点で仕掛けるよう言い含めた。初号機パイロットを危機に陥れるのは、目的達成のための既定の方針だ。」
「だが碇……。初号機自体が破壊される様な事になっては、本末転倒だぞ。その事を忘れるなよ?」
「無論だ。」
ゲンドウの平然とした態度に、冬月は若干の苛立ちを感じる。彼はもう一度ゲンドウに釘を刺した。
「何度も言うが、シンジ君を故意に本当に死なせたりしてはいかんぞ?ネルフ本部の戦力は、充実しているとは言い難い。彼は貴重な戦力だ。」
「……。」
ゲンドウは応えない。冬月は今度こそ本当に、深く溜息を吐いた。
あとがき
第7話をアップしました。前話をアップしてから、もう4年近く経っちゃってるんですね。我ながら、驚きました。他のSSをついつい優先している間に、こんなに遅くなっちゃいました。反省してます。
今回は序盤の山場、ラミエル戦ですね。今回シンジは、その正体の一部をレイに明かしました。理由は本文に書いてある通り、「『造られた者』に対して誠実でありたい」がためです。何故ならばここのシンジ自身が、ある意味で『造られた者』であるからなんですね。ですが、まだ隠された秘密は多いです。そのうち徐々に明かして行く事になるでしょうが。
さて、読んでいただきまして本当にありがとうございます。もし感想等を書いていただけるのでしたら、掲示板までよろしくお願いします。メールでもかまいません。それでは今後ともよろしくお願い致します。