(ちゅうい)このさくひんでは、よこっちはわるものなので、へやのあかりをつけて、てれびがめんからはなれてみてね。…あれ?











(前回のあらすじ)

サンダーバード4号を駆るタマモ、2号とジェットモグラ号をもって活躍するワルキューレと小竜姫、彼女らの活躍で二つの事件はともに解決を見た。

しかし2号と4号の秘密は既に世紀の大悪人横島忠夫が仕掛けた秘密装置に記録されている。

このままでは、国際救助隊の秘密が彼のものとなってしまうのだ!

残るサンダーバード・メカは1号と3号…5号はさすがにどうしようもないので除外…である。

このまま秘密は奪われてしまうのか!?

それとも隊長美神美知恵率いる国際救助隊の巻き返しはなるのか!?


国際救助隊 出動せよ! その7


「マリア殿、もうすぐ近距離レーダーの範囲に問題の米ソ共同宇宙ステーションが入るでござるよ」

「了解・です」


宇宙ロケットサンダーバード3号は、漆黒の宇宙空間を翔んでいた。

その行く手には軌道を外れ、地球へと落下中の米ソ共同宇宙ステーションが待ち構えている。

シロは軽い口調でマリアにむかって話し掛けた。


「でも、まあ救助自体はそんなに難しくないでござるな。時間的には宇宙飛行士二人を乗せて脱出する余裕は充分にあるでござるし…」

『それが、ちょっと問題があるの』

「ミス・おキヌ?どうなさいました・か?」


彼女らの会話に、突然おキヌの声が割り込む。

彼女の口調は、少し心配そうだった。


『飛行士たちは、今必死で原子炉を耐圧殻に収めている最中なの。それで、その作業が済むまでは絶対に退去しないって頑張ってるのよ』





ダテ中佐は必死で壊れかけた操作盤から色とりどりのコードを引っ張り出し、スイッチのかわりに配線を直結することで強引に機械を動かしている。

ピート少佐は、彼は彼で電気溶切断機で曲がったレールや原子炉を支えるフレームを切り取っていた。


「…ふう、ダテ中佐こっちは終わりです」

「こっちはまだかかりそうだ」


ダテ中佐とピート少佐の二人は、今まさに自分たちの命が危機的状況にあるというのにもかかわらず、平然と作業を続けている。

もはや彼らは、慌てるとか焦るとかいうところを通り越してしまったのかもしれない。

というかダテ中佐は鼻歌すら歌っている。


「…中佐、もうちょっと緊迫感を持ってくださいよ」

「ん〜、そう言われてもなぁ…『前回』…なんのことかは言ってる俺でもさ〜っぱりわからないことになってるんだが、『前回』のことでな〜んか気が抜けちまってなぁ…」

「…気持ちはわからないではないですが」


とてつもなくヤバさげな会話をしている彼らであった。

その時、彼らの宇宙服の無線機がサンダーバード5号からの通信を伝えてきた。


『国際救助隊です。もうすぐこちらのサンダーバード3号がそちらにランデブーします』

「ん〜、けど原子炉をきちんと殻に収めておかねーと地球に落ちたとき、地上がヤバいからな。時間がなくなったら俺たちにかまわず退去してくれ」

『いえ、そういうわけにはいきません。ですからこちらの隊員も作業をお手伝いします。EVA(船外活動を意味する用語であり、けっして某決戦兵器ではない)でそちらに出向きますから具体的な作業内容を指示してください。人手があれば充分間に合うはずです』


そう言っている矢先、真紅の巨大なロケットが彼方から近づいてくるのが彼らの目に映った。

二人は歓声を上げる。


「おお、あれがサンダーバード3号か」

「よかったですね中佐」


ロケットはみるみるうちに接近すると、ハッチを開放する。

その中から、まだ少女と言っても良い年齢の赤い短髪の女性があらわれた。

彼女は宇宙空間へ漂い出るが、突如もがきだす。

ダテ中佐とピート少佐はあっけにとられた。

しばらく苦しげにもがいていた彼女は、その後ろから現れたもう一人に引っ張られて3号内部へと戻る。


「…なんだったんだ、一体」

「さぁ?…」





「マリア殿!宇宙服を着けずに外に出て、どうするでござるか!」

「…GS原作では・アンドロイド・でしたので。…本作では・人間・という・設定を・忘れて・いました」


マリアは息も絶え絶えの状態で、シロに酸素吸入を受けていた。

ちなみに実は真空中でいきなり人体が破裂したりはしない。

たかだか1気圧程度の変化ではそこまで酷いことにはならないのである。

なお、もし万が一真空中に放り出されることになったら、あくびでもするように大きく口を開けて肺や内耳にある空気をすべて体外へさっさと放出するとよい。

肺に空気が入ったままでは肺胞が破壊されてしまい、1気圧の所にもどしても死んでしまうのである。

肺など気圧差に弱い器官さえなんとか守ることができれば、血中に取り込まれた酸素で短い時間ならば生き延びられるのだ。

もっとも0気圧では眼球なども痛めつけられるし、大気圏外では太陽の強烈な放射線などがあるのであまり長時間は結局頑張れないのだが…。

閑話休題。

この事故で、3号チームの作業参加は若干遅れたという。





「ほーっほっほっほ!タイガー、さっさとレストランへ急ぐワケ!」

「エミさん…」


国際救助隊ロンドン支部のエージェントである小笠原エミは、豪奢なピンク色のロールスロイス…その名もペ○ロープ号を快適に走らせていた。

名前が小笠原エミなのに、何故ロールスロイスがサンダーバード原作のままのペネロ○プ号なのか?

それは深遠なる謎なのである。


「ほーっほっほっほっほっほ♪まさにゴージャス!あたしにぴ〜ったり、適材適所ってワケ〜♪令子はいまごろ油くさくてせまっ苦しい1号操縦席で…うふ♪ざまぁみなさいな。あたしはコレからゆーがにお食事ってワケ♪」

「…エミさん…わっしはゴージャスさよりも出番が欲………いえ何でもないですジャ」


どうせゴージャスなのはエミさんだけで、わっしは下っ端じゃし…という台詞を懸命にも涙とともに飲み込んで、タイガーはエミの指示通りに車を走らせるのだった。

ちなみに彼らの出番はコレで終わりであったりしたりするのだった。





翼を畳んだまま水平飛行をしているサンダーバード1号の操縦席で、令子はカリカリと苛立っていた。


「〜〜〜!!ちっくしょう、なんでかムシャクシャするわ。誰かがあたしのことを馬鹿にしてるのね。きっとロンドンのエミだわ、おっぼえてなさい!」


恐ろしいまでの勘である。

彼女は腹立ちまぎれにエンジンをブン回す。

既定の出力を大幅に超えるパワーを無理やりに引き出されたエンジンは悲鳴を上げた。

おそらく基地に帰還したら大規模な整備が必要になるに違いない。


「…ふ、ふふふ、見えてきたわ。どぉ〜れ…」


令子はにや〜りとGS原作18巻P.120の3コマ目のような笑顔を浮かべた。





ドガガガガガッ!!

ビリビリビリビリビリビリッ!!


「「のわあああぁぁぁああぁぁああああっ!?」」


ファイヤーフラッシュ号操縦席で、伊達機長およびピート副操縦士は絶叫を上げた。

何かが超高速でこの機の脇を通り過ぎざま、追尾してきている無人機へ銃撃を加えたのである。

伊達機長は泡を食って窓から機外を眺める。


「な、何が…おきた?」

「え、ええと…噴射炎しか見えませ…あれ?」


ピート副操縦士はまたどこからか出した双眼鏡で、猛スピードで遠ざかる噴射炎を見つめていた。

だが彼の顔色が変わる。

彼の視界では、はるか彼方でその噴射炎を出している『何か』が、大きく翼を広げると旋回し、再度翼を畳んでまた突っ込んで来るのが見えたのである。


「ま、また来たああぁぁっ!?」

「なにっ!!」


ビリビリビリビリビリビリ!!

ズガガガガッ!!


ファイヤーフラッシュの壁が衝撃波で小刻みに震える。

そして再び銃撃音が鳴り響く。

無人機はファイヤーフラッシュを盾にするように機動するが、現れたアンノウン機はおかまいなしに機銃を乱射した。


「のわあああぁぁぁぁっ!?」

「ま、ママーーーッ!!」


なお珍しいことに、下の台詞のほうがピートの叫びである。

台詞を盗られた伊達機長は憮然とした顔をしている。

それはそうと、機長はその両の眼でしっかりとアンノウン機の胴体に書かれていた文字を読み取っていた。


「…TB1…Thunderbirds−1…だとぉっ!?」

『…ごめんなさい。美か…じゃなかった、令子姉さんはああいう人なので…』


無線機からサンダーバード5号のおキヌの声が聞こえる。

伊達機長もピート副操縦士も、すさまじくイヤすぎる予感に身を震わせた。





「あーーーもうっ!!さっさと死になさいっ!」

『だめですっ!令子姉さんっ!ファイヤーフラッシュを墜としたら本末転倒ですっ!』

「ンなもんあの無人機墜とせばオツリが来るわよっ!」

『来るかああぁぁっ!!』

『嗚呼、機長おちついてくださいっ!』


1号操縦席のスピーカーからは、5号のおキヌ、ファイヤーフラッシュの伊達機長とピート副操縦士の悲鳴がひっきりなしに響いている。

だが令子は一向に気にせず、ファイヤーフラッシュの胴体に隠れて一部だけが見えている無人機へと照準をあわせた。

彼女の顔には背筋も凍るような薄ら笑いが浮かんでいる。

どうやらはるかロンドンで口に出された、聞こえるはずのない悪口がよほど腹に据えかねたらしい。

美神令子…操縦技能も作戦立案・指揮能力もピカイチの、国際救助隊が誇る優秀な前線指揮官である。

だがそれ以上に、彼女の地獄耳はもっとも神に近いパー○ェクト超人すら問題にしないほどの恐るべき精度を誇っていた。

そして更に、悪魔○人すらも裸足で逃げ出すほどのプチ切れやすさも、彼女はついでに誇っていたりもするのであった。

っていうか誇るな。





「よし、これでこのステーションが地上へ落下しても、汚染は広がらないぜ!」

「急いで3号へ乗り込むでござるよ!」

「あと・2分以内に・発進・しなければ・3号の・突入角度・も・安全域から・外れ・ます」

「そ、そりゃ大変だ!急ぎましょうダテ中佐!」


原子炉を耐圧殻に収容し終わり、宇宙飛行士二人と国際救助隊の隊員二名は大急ぎでサンダーバード3号へと戻った。

パイロットのシロは宇宙服も着替えずに操縦室へと登っていく。

時間的には『毎週』のお約束ながら本当にギリギリである。

貨客室に残った三人は息を飲んだ。


「…タイムリミット・まで・あと・30………20………10・9・8・7・6・5・4・3…」


マリアのカウントダウンが終わってしまうその直前、3号に三基搭載されている強力なロケットエンジンに火が入った。

宇宙飛行士達は歓声を上げる。


「ヤッタ!ヤッタゾぴーと!俺タチハ助カッタンダ!!」

「エエ、ヤリマシタネ!アリガトウゴザイマス国際救助隊ノ皆サン!!」

「どう・いたしまして・これが・マリア達の・仕事です」


その時、操縦室のシロからインターホンで連絡がある。


『無事に軌道変更を終えたでござるよ。すぐに安全な突入角で大気圏へ入るでござる。このまま地球にある適当な宇宙基地へ降りて中佐と少佐を降ろしてから帰還するでござるよ」

「アア、タスカル。礼ヲ言ウゼ」

『…ところで…なんでお二人は先ほどから字面でわかるほどの棒読み口調なのでござるか?」

「それに・動作が・まるで・人形・の・ようです」


いや、もともとスーパーマリオネーションだし。

それはおいといて。

そう問われたダテ中佐とピート少佐は突然動きを止める。

そして遠い目で、二人は語り始めた。


「…なぁピート」

「ええ…」

「このままずっと時が進まなければいい…時が凍り付いてしまえばいい…そう思わないか?」

「そうですね…いつまでもこのまま…」


そんな台詞を吐くと、まるでヤマが無くてオチもなくて意味もないと称される一部ジャンルの作品ぽく思われそうだが、実のところ彼らにはそんな甘ったるい雰囲気はかけらも無かった。

彼らの周囲にはピリピリとした緊張感があふれ、彼らの額には大粒の汗が光っている。


「…いやだ」

「ええ…僕もいやです」

「いやだっ!!ぜったいにイヤだっ!!時よ止まれええぇぇぇええええぇぇっ!!」

「お願いだああぁぁっ!次のシーンへ行かないでくれえええぇぇぇっ!!」


マリアは泣き叫ぶ二人の宇宙飛行士を、あっけにとられた風情で見つめていた。





「だからいやだって言ったのにいいぃぃぃっ!!」

「ちっくしょう、神も仏もあるものかぁっ!!」


ピート副操縦士は泣き喚き、伊達機長は歯を食いしばって操縦桿にしがみつく。

サンダーバード1号の撃った機銃弾は奇跡的にファイヤーフラッシュに当たらなかった。

もっとも、誘導電波を発している謎の無人機にも機銃弾は当たっていなかったが。


『ちっくしょう、あんたらほんとに邪魔よっ!?そこどきなさいよっ!一緒に撃墜されたいのかしら!?』

『姉さ〜ん!無茶言わないでください〜!彼らの責任じゃないでしょう!?だいたい今ファイヤーフラッシュ号は操縦不能って知ってるじゃないですか!』

「…いかん、このままだと乗客ごと撃墜されちまうぞ」

「どうしましょう機長…」


伊達機長は黙って考え込むと、突如ロッカーからファイヤーフラッシュ号の絵図面を取り出した。

何故そんなもんがロッカーに入ってるのか、とは突っ込まないように。

彼はその図面を広げると、ピートに向かって真剣な表情で語りかけた。


「いいか…俺はこれからこの与圧されてない区画を通ってここ、油圧の制御装置がある場所まで行く」

「ええっ!?それは一番最初に放棄したプランじゃないですかっ!」


そう彼らは当初、与圧されていない区画を通り抜けて原子炉まで行き、手動で原子炉の制御棒を入れようという計画を立てていた。

だがそれは、放射線防護服が無いことやこの高々度では与圧されていない部分は非常に気温が低くなることなど様々な悪条件から、実現不可能として放棄された作戦だったのである。

だが伊達機長はこともなげに言う。


「…いや、俺は今回原子炉区画には立ち入らん。あくまでこの途中にある油圧の制御装置が目的だ。距離は短いから、非常用の酸素吸入器を持って厚着していけばなんとかなる」

「いったい何をするつもりですか!」

「それはな…」


伊達機長はロッカーから予備の制服やらピートの制服やら何やらを色々と取り出し、さらには救急キットから酸素のタンクを引っ張り出しながら、ピート副操縦士に説明する。


「む、無茶だっ!!」

「無茶でもやるしかねぇっ!!」


伊達機長は吼えた。

ピート副操縦士は黙る。


「…おまえはここ動くな。何かあった時のためにな。じゃあな」


伊達機長は操縦室を小走りで出て行った。





令子の苛立ちは頂点に達しようとしていた。

彼女はたしかにイライラしてはいたが、それでも本気でファイヤーフラッシュを墜とすつもりはなかったのだ。

だからギリギリでファイヤーフラッシュを避けるように射撃してはいたものの、彼女の腕を持ってしてもその陰に隠れた無人機を狙撃するには至らない。

そのため、令子のストレスはつのり、その頭には血が上りかけていた。

はるか離れた場所で翼を展開し、1号を旋回させつつ令子は呟く。


「…ほんとにまるごと撃破してやろうかしら」

『姉さん!ファイヤーフラッシュから通信です!』

『あ、い、今から一瞬だけ敵機が当機の陰から出ます。その隙を逃がさずに撃ち落してください!…あ、敵機を…ですよ?』

「アンタね!当たり前のこと言うんじゃないっ!」


余計なことまで付け加えたピート副操縦士にカチンと来たものの、令子は気合を入れなおして照準を覗いた。

彼らがそう言うのであれば、きっと何か考えがあるのだろう…令子はそう信じた。

ピートの台詞には、それを信じさせる真摯さがあったのだ。

…あくまで前半部には、ではあるが。

令子はサンダーバード1号の翼を畳んでロケット形態に変形すると、凄まじい加速でファイヤーフラッシュの方へ…正確には、ファイヤーフラッシュ号の陰に隠れている無人機の方をめがけて突っ込んでいった。


「いくわよ…」


サンダーバード1号は弓弦を放たれた矢のように飛んだ。

あとわずかで、適正射撃距離へと達する。

ファイヤーフラッシュへ変化が起きたのは、その瞬間であった。





「うりゃあああぁぁぁっ!!」

伊達機長は、気合を込めて手動油圧バルブを力任せに開く。

高圧のオイルがパイプを通ってシリンダーへ流れ込んだ。


ゴゴゴゴゴゴ…。


轟音とともに機械装置が動き出す。





「…やるわね。あとはこっちの仕事よ!この国際救助隊、美神令子が極楽へ逝かせてあげるわ!」


逝かせてどーする、助けるのが仕事だろ…というツッコミは脇においといて、1号の機銃が無人機を蜂の巣にする。

空中で爆散した敵機を後目に、令子は窓からファイヤーフラッシュの姿を確認する。

ファイヤーフラッシュ号は胴体と両翼から着陸脚を下ろしていた。

その着陸脚がエアブレーキとなり、一時的にその速度を劇的に落したのである。

そして突然急激に速度が落ちたことで、旅客機の周囲にまとわりついて身を隠していた無人機はその前方へと飛び出す形となったのだ。

令子が見守る中、ファイヤーフラッシュ号は再び車輪を収容する。

操縦機能も戻ったらしく、その速度はどんどん巡航速度へと落ちていった。


『こちらファイヤーフラッシュ号副操縦士、ピエトロ・ド・ブラドーです。現在先ほどの作業を行うため席を外している伊達雪之丞機長にかわり、お礼申し上げます』

「…感謝の気持ちを表すのには、言葉よりも相応しい物があると思わないかしら?」

『姉さん?』


突然通信に5号のおキヌが割り込む。

令子はぎくぅっ!と凍りつく。

おキヌは無情に続けた。


『あの…この通信は本部のママも5号の中継できちんと聞いてますからね』

「あ、あはは、あははははははは〜。いえ〜いいんですよ〜そんなお礼だなんてぇ〜気にしないでくださいね〜♪あはははははははは…ちっ」


スピーカーからはおキヌのため息が聞こえた。





副操縦士ピートは、操縦席で伊達機長の帰りを待っていた。


「おい」

「あ、おかえりなさい機ちょ…わぁ!」


そこに居たのは、身体のあちこちに氷をへばり付かせ、口に酸素タンクのチューブを加えたダルマだった。

ピートはあわててギャレーからコーヒーを取ってくる。

伊達機長はガタガタ震えながらコーヒーをすすった。


「…おい、サンダーバード1号はどーした」

「ああ、もう帰還しましたよ」

「…ちっくしょ、一言文句いってやりたかったのに。おい、きちんと言ってやったんだろーなぁピート!」

「え、ええ当然ですよ、あはは、あははははは」


ピートは引きつり笑いをしつつ、コーヒーのおかわりを注ぐ。

伊達機長はこめかみに#マークを浮かべながら、熱いコーヒーをふたたびすすった。





ここはあいも変わらずマレーシアの奥地、未開のジャングルに隠されている古代の寺院である。

悪くて悪くてどーしようもない、究極無敵銀河最強男と比較しても遜色ない大悪党である横島忠夫は、ここを秘密基地として世界を股にかけた悪事を働いているのだ。

その横島は今、闘戦勝仏像に向かい怪しげな儀式を行っていた。


「カオス…わが祖父カオス…!」

『うう…ああぁぁああぁぁ…』

「さあ出番だぞカオス…。1号と3号がもうすぐ前後して帰還する…。そうしたらオマエはあの秘密装置をこっそり回収して、宅急便でロンドン経由でこの俺に送るのだ」

『ああぁ…苦しい、苦しいいいぃぃ…』

「ちなみに宅急便代金はオマエが払っておけ」

『ちょっと待てええぇぇいっ!?』

「うわーっ」


突如叫んだカオスに横島は驚く。

彼はあわてて魔方陣やら仏像やら蝋燭やらをチェックしたが、どうやら魔術は解けていないようだ。

つまりカオスは非常識にもトランス状態のままマトモに受け答えしていることになる。

凄いなあカオスのじーさん。


『わしにはそんな金はないぞっ!第一大家のばーさんに家賃を払わねばならんっ!そんなことに使える金なんぞあるかっ!』

「おいおい、おまえこの話だと国際救助隊本部基地に住み込んで、執事やってんだろうが。大家のばーさん関係すんのはGS美神原作の話だろーがよっ!こっちだと衣食住保障されてる上に給金ももらってっだろーが。…俺とちがって」

『なんと言われようと、金のことでは相談に乗れんっ!』

「く…わかった、着払いで送れ…ちっくしょう」

『う…うああぁぁぁ…だめだ…だめだぁあぁ…』

「…おまえなぁ」


金の問題が解決したとたん、普通に?トランス状態に戻ったカオスに、横島は呆れ顔になる。

だが気を取り直して、横島は続けた。


「いいのか?承諾しないと、いつまでも苦しいままだぞ」

『う、うあああぁぁ…ぐああ…』

「さあ、うんと言うだけで苦しみは消えるぞぉ?」

『う…うぅ…わ、わかった…わかったああぁぁぁ…』


魔法の儀式を終わらせ、横島はにやりと微笑む。

彼の視線の先には、1号から4号まで青ランプが点等した制御盤があった。


「く、くくく…さあ秘密装置を回収すればそれで全て終わりだ…。これで…。これで国際救助隊の秘密は…くくく、はーっはっはっは、あ〜っはっはっはっはっは〜〜〜…うげっ!?」


横島はそっくりかえって呵呵大笑したあげく、足を滑らせて石畳に己の後頭部をおもいきり叩きつけた。

やはり横島は決まらないまま終わるのだった。


あとがき:

凄いなあカオス。
素敵だ。
さて、とうとう5号以外(5号は手ぇ出せないし〜)の秘密まで秘密装置に記録されてしまいました。
横島君の野望は成就してしまうのかっ!?
う〜ん、どーなんでしょうねぇ(笑)

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