(注)横悪注意。
(注2)上の『横悪注意』は『本作品では横島は悪漢扱いなので、くれぐれもご注意した上でお読みください』の略ですのでお気をつけ下さい。 < っていうか略すな(ひとりツッコミ)。












(前回のあらすじ)

サンダーバード2号は本来の予定からかなり遅れて、ようやくのことで南米地下原子力発電所へ到着した。

原発職員たちの決死の努力もむなしく、もはやチャイナ・シンドロームは回避できそうに無い。

だが天才エンジニア・小竜姫には何か考えがあるようだ。

彼女とワルキューレは5番装備に含まれるスーパーメカ・ジェットモグラ号で地下へと潜行して行く!

一方世界征服を狙う国際的悪人の横島忠夫は、ついにサンダーバード2号の秘密を掴む事に成功してしまった。

このまま彼の秘密装置が彼に回収されてしまっては、本当に秘密が漏れてしまう!

どうする!国際救助隊!


国際救助隊 出動せよ! その6


ジェットモグラが地下へ掘り進んでいるその頃、サンダーバード4号もまた海中で事故を起した某国新型潜水艦を捜索していた。


「…こまったわね。まだ見つからないわ。おキヌちゃん、海流に流されたってことは無い?」

『いいえ、それは無いと思う。潜水艦からの通信はあまりに微弱なので5号の装置でもぎりぎり拾えるかどうかだけど、聞き取れた話だと、海底で座礁しているそうだから…』


苛ついた様子のタマモの疑念を、5号のおキヌが否定する。

ためいきをついたタマモは、再び潜水艦を探し始めた。


「…あっ!発見したわ!うわ、ひっどぉい…」

『どう?』

「外壁が裂けて中身が見えてるわ。幸い、中枢部分の耐圧殻は無事みたいだけど…でもドックで調べないと耐圧殻にダメージがあるかないかはわかんない。つまり…いつ圧壊するか見当もつかないってこと」

『そう…。タマモちゃん、ママからの指示だけどね…」





一方、当の潜水艦の中では、その艦長と副長が対策を話し合っていた。


「…なあピート。俺はようやく悟った気がするぜ…」

「は?艦長?」

「いや、な。世の中そーいうモンだってことさ。俺が高空やら宇宙やら地下やらはたまた深海やらでいつもいつも事故にあってるような『気がする』のも、この潜水艦がやっぱりこれまた『原子力潜水艦』で、オマケに核弾頭まで搭載した『ミサイル原潜』だってことも…な。そう、全てはお約束なんだ…」

「か、艦長…」


遠い目をして呟くユキノジョウ・ダテ艦長に、副長であるピエトロ・ド・ブラドー中佐は思わず感動の涙を流した。

彼は思わず叫んだ。


「や…やっとわかってくれたんですね、かんちょおおぉぉうううっ!!」

「ピート…」

「はいっ!!」

「オマエがそう言うってことは…」


今の今まで悟りきって落ち着き払った表情だった艦長は、突然副長の襟首をひっつかむ。

副長はぎょっとした。

ユキノジョウ艦長の目は、一瞬前までの落ち着きぶりがウソのように血走っている。


「か、かんちょう〜〜〜!?」

「オマエがそう言うってことは、オマエは最初っから知ってやがったんだなあああぁぁぁ!?」

「ひ、ひいいぃぃっ!?ち、違いますよおおぉぉっ!!」


激昂するユキノジョウ艦長に、ピート副長は必死で抗弁した。


「どこがちがうっ!!」

「ぼ、僕もそんなことは知りませんでしたっ!」

「んじゃ、なんなんだっ!!」

「いえ知りはしませんでしたが、最初っからだいたいそんな事だろうと思ってたっていうか薄々気付いてたっていうか…」


艦長はにっこり微笑んだ。

副長もにっこり微笑んだ。

にこにこにこにこにこにこ。

気のせいか、背景で右往左往している乗組員たちの動きがギクシャクして見える。

ついでに彼らの額には、艦内が暑いのか玉の様な汗が浮かんでいたようにも見えたりしたような気がするのだった。


「…教えなきゃ同じだ、ド阿呆おぉッ!!」

「ぎゃあああーーーっ!!!」


どぐしゃあああぁぁぁッ!!


凄まじい轟音が響いた。

そう…それはまるで、中に生ゴミでもいっぱいに詰めた塗れた布袋をおもいっきりバットか何かでブン殴ったような感じの轟音だった。

…ところで…どうでもいいが、お前ら事故の対策を話し合ってるんじゃなかったんかい。

ヲイ。





その頃、南米地下原子力発電所の事故現場では小竜姫とワルキューレが搭乗したジェットモグラ号が地下深くを目指して掘り進んでいた。

やがて彼女らは地下深くぽっかりと空いた空洞へ出る。

そこは地下原子力発電所から海へと冷却水を投棄するためのパイプラインが通る洞窟だった。

…無論、棄てているのは一次冷却水では無いことに注意されたい。

小竜姫が口を開いた。


「…この辺でいいですよ、ワルキューレ」

「予定通りの位置だな」


小竜姫はハッチを開くと精密機器を手に飛び降りた。

大荷物を抱えたワルキューレも後に続く。

なんとなくワルキューレの顔が不満そうなのは、おそらくは気のせいだ。


「…で、どこにこの爆薬を仕掛けるのだ?」

「こちらです。ここの壁に仕掛けてください」


持ってきたセンサー類で色々と調べていた小竜姫は満面の笑顔で振り向く。

ワルキューレは指示通りに爆薬を仕掛けた。


「さあ、次は方向転換して、海まで掘り進みますよっ!海ぎりぎりまで掘ったら、そこにも爆薬を仕掛けます。時間がありませんから急ぎましょう!」

「…しかし、炉心部を解放して直接そこに海水を流し込むなど…いいのか?」


ワルキューレは怪訝そうな顔で問うた。

だが小竜姫は満面の笑顔で答える。


「ナニをいってるんです。これは某国が某国に払い下げた中古原潜にも採用されている由緒ある暴走対策方法なんですよ?いざというときには炉心を海中にさらして緊急冷却するんです」

「由緒ある…ってな…。海洋汚染は?」

「…メルトダウンってチャイナ・シンドロームるよりはマシでしょう。さあ急ぎますよ!」


小竜姫は意気揚揚とジェットモグラのハッチへもぐりこむ。

だがワルキューレは彼女の後頭部に巨大な謎の水滴…冷や汗とも言う…が浮かんでいるのを見逃さなかった。





さて海中では、タマモが潜水服姿で原潜の周囲を泳ぎ回り、仕掛けた装置の様子をチェックしていた。

彼女は一通りチェックして頷くと、サンダーバード4号のハッチへと泳ぎ戻る。


「…はぁっ!これでOKね。炉心部が無事でほんとーによかったわ。もし直接炉心が海水にさらされるなんてことになったら…。ま、ナニはともあれ艦内の酸素残量も心配だし、急いで装置を起動しなきゃ!」


彼女の台詞に、どっかで誰かが引き攣った笑みを浮かべたかもしれない。

ソレはともかくとして、タマモは国際救助隊の制服に着替えると操縦室へ戻る。

そしてサンダーバード4号を安全な距離まで離すと、装置のスイッチを入れた。


ゴボァッ!!ゴボボボボッ!!


凄まじい音…というよりは水中では衝撃のように感じた…と共に、巨大な原潜の各部に据えつけられたバルーンに、化学反応で発生した膨大なガスが送り込まれる。

水中で動けなくなっていた某国最新型ミサイル原潜は、急速に浮上していった。

…このサルベージ方法が、本来はずっとずっと浅い場所で、もっともっと小さな船相手に行われる手法だと言う事は、けっして突っ込んではいけない事である。





「ありがとおおぉぉ〜〜〜!!」

「あ…ありが…と…」

「国際救助隊、本当にありがとおおぉぉぉ〜〜!!…こぉらピート、ナニやってやがんだ。手ぇ振れ」

「…」


某国ミサイル原潜の艦長ユキノジョウ・ダテ大佐は満面の笑顔で、去り行くサンダーバード4号へ手を振った。

その隣で副長ピート中佐も力なく手を振る。

彼がズタボロになっているのは、おそらく脱出作業中に何か事故でも起きたのであろう。

まあそういうことにしておいた方がよさそうである。


「…でもせめて冒頭の注釈で『この作品ではピートが酷い目に云々〜』って付くべきじゃぁないんですか?」

「ん?今更…だろ?これギャグ物だし。第一オマエ酷い目にあうのはデフォルトだろ。GS美神の原作でもクリスマスん時とか」


恨みがましい声で呟くピート副長の台詞を、ユキノジョウ艦長はばっさりと斬って捨てる。

艦長の顔は、まるで台風一過後の青空のように晴れ渡っていた。





爆音とともに大量の冷たい海水が炉心部へと流れ込んだ。

異常加熱していた炉心が急速に冷却される。


「…ふう、危機一髪でしたね。水蒸気爆発は起さずに済みましたか。あとは炉の停止処理や封鎖処理は電力会社へお任せします」

「おう任せろ。あんたらのおかげで間一髪間に合ったみてぇだな。礼を言わせてもらうぜ」


南米地下原発管理職員の伊達主任は、晴々とした笑顔で小竜姫とワルキューレに握手を求めた。

その隣では、おそらくは制御棒を手動で下ろそうとした際の名誉の負傷であろう熱血平職員ピートが、ズタボロ姿で立っている。

彼の両目からは、まるでアメリカンクラッカーのような感涙が流れ落ちていた。


「…よく考えると、例のクリスマスのとき僕を酷い目にあわせたのは君…じゃない、主任とタイガーじゃなかったか?あ、いや…ありませんでしたか?」

「ん?そのとおりだが?」


伊達主任は晴々とした笑顔で、しれっと応える。

何を言っても無駄だと判断したのか、ピートは押し黙った。


「そ、それでは我々はこれで…」

「あ、後始末、よろしくおねがいしますね」


ワルキューレと小竜姫はサンダーバード2号に乗り込み、発進させる。

原発職員2名はいつまでもいつまでも手を振っていた。

一方は心からの晴れやかな笑顔で、もう一方は何かイヤなことでもあったのかヤケクソ気味な血管の浮いた笑顔で、彼らはいつまでも手を振っていた。





ここはマレーシアの奥地、未開のジャングルである。

ここにある古代の寺院…世紀の大悪人横島忠夫の根拠地で、横島はまるで伊達雪之丞のような晴れやかな笑顔を浮かべていた。


「ふ、ふふふ…これでサンダーバード4号の秘密もいただきだぁ…」


彼の前の操作盤では、『4』の青ランプもついに点灯していたのである。

残るは『1』と『3』のみである。


「…まあ、5号は仕方ないしなぁ。なに、1、2、3、4号でとりあえず充分だ。さあて次は1号か?3号か?ふっふっふっふ、楽しみだぜ」


闘戦勝仏像が、かがり火や蝋燭の灯りで闇の中から浮き上がる。

横島は祭壇の手入れをはじめた。

無論、国際救助隊の秘密を手に入れるための秘密装置をカオスに回収させる、その準備である。

いよいよあと残るは1号と3号の秘密のみだ。

全てのランプが点灯したら、再びカオスに魔術をかけて再びロンドン経由で彼のもとに秘密装置を送らせればよいのである。


「…どこが安いかな?ク○ネコがいいかな。佐○急便は今は改善されたらしいけど…やっぱりいちどああいう噂が立つとなぁ…。ゆ○パック?…う〜ん。あ、なんかの書類と一緒にして書籍扱いの封書で送ったら安いかな?あ、でも書籍扱いは中を確認できるよう封筒一部切るからなぁ…外にこぼれちまったらなぁ…」


…妙なところでケチる横島だった。


あとがき:

とうとう4号の秘密も射程圏内に入ってしまいました。
横島君、着々と歩みを進めています。
…ただ、変なところでケチるから彼は…。
なお『ク■ネコ』の宅急便は海外展開してるらしいですね。
これを書いた当時は知りませんでした。
けど、秘密基地なんだから、不法居住でしょが(笑)
ちゃんと届くんでしょうかね。

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