(注)本作品では横島は全銀河的(おおげさだっつの)な悪者です。10万光年の彼方(そこまでのもんかい)まで覚悟した上でお読みください。











(前回のあらすじ)

国際救助隊隊長である美神美智恵は、いちどきに頻発した大事故が何者かの仕組んだ罠である事に気付いた。

そう、この事件はすべて国際的悪漢横島忠夫が国際救助隊の秘密を探るために仕組んだものだったのだ。

しかしだからと言って、国際救助隊には窮地に陥っている人々を見捨てて知らぬ振りをするという選択肢は存在していない。

美智恵は苦渋の思いとともに、サンダーバード・メカ各機を各々の事故現場へ向けて発進させた!

がんばれ!国際救助隊!


国際救助隊 出動せよ! その5


サンダーバード2号は目的海域に達すると、低空飛行に移った。

2号の巨体は下方に猛烈な噴射炎を吐き出しホバリングすると、サンダーバード4号を搭載した4番コンテナを切り離す。

コンテナは、重力に引かれてあっというまに海面へと落着した。

それを見届けると、2号操縦席のワルキューレは機体を180度方向転換させ、今度こそ南米原子力発電所へと向かうために5番装備を搭載すべく、サンダーバード本部基地へ向けて発進させる。


「…間に合えば良いが」


コンテナを投下して#形状になったサンダーバード2号は、なんとなくヘンテコに見えた。





「う、うう〜ん…イタタタ」


海面に浮かんだ4番コンテナ内、特殊潜航艇サンダーバード4号の操縦室では、艇長のタマモが這いつくばってお尻を上げたマヌケな姿で身体のあちこちをさすっていた。

低空とは言え、十数メートル〜数十メートルの高さから海面に投下されたのである。

普通ならこうなって当然、というかコレだけですむのが流石ギャグSSと言えよう。

ちなみに原作サンダーバードでも、4号はこうやって発進することが多かった。

ぶっちゃけ、無茶な話である。

にもかかわらず、平然と4号を発進させて救助活動に勤しむ原作4号艇長ゴードン・トレーシーには惜しみない拍手を送りたい。


「い、いつものことながら無茶苦茶な発進方法よね。海上に2号を着陸させられないのはわかるけどさぁ…」


それを言うなら着水であろう。





コンテナ無しのマヌケな形状で本部に帰還したサンダーバード2号は、間をおかずに5番装備のコンテナを装備しなおすと再び大空へ飛び立った。

美智恵とカオスはそれを見送る。


「…何事も無ければいいんだけれど」

「そうじゃのう…」


二人は複雑な表情で、視界から消え去ろうとする2号を見やった。





さて南米地下原子力発電所では、今まさに原子炉の炉心が異常加熱を起し、暴走状態にあった。

こういう場合は制御棒を下ろし、炉心に冷却水を入れて緊急停止を行うのだが、何故か制御棒も降りず冷却水パイプも破損してしまっていたのである。

そしてこの原発には今、たった二人の職員しか居なかったのだ。


「く、自動化の行き過ぎも問題ですね伊達主任。もう少し人数がいれば…」

「…俺は…俺は今の今までたしかに宇宙にいたぞ?なのに次の瞬間、なんでこんな地下深くで放射線防護服を着て、手動で制御棒を下ろそうと頑張ってるんだ?」

「なな何を夢を見てるんですか主任!他の事件で手が回らず、国際救助隊の到着が遅れるとさっき連絡があったばかりじゃぁないですかっ!1本でも多く制御棒を下ろせれば少しでも時間が稼げるんですよっ!?」


熱血平職員ピエトロ・ド・ブラドーが現実逃避気味のユッキー・伊達主任技師を怒鳴り飛ばした。

その額に光る汗は、あくまで大惨事を防ごうと言う正義感のあらわれであり、けっして伊達主任がヤバさげな事を言おうとしたためでは無い…ハズである。

伊達主任は巨大なハンドルを力いっぱい回しながら呟く。


「ちっく…しょ…なんか俺…一昔前の…ドリフでも…やってる気…分だぜっ!!○時だ…よっ!…全員○…合ッ!てかぁっ!?」


訂正しよう。

伊達主任は『言おうとした』ではなく、充分にヤバさげな事を『言っている』。

その時、手元に置いてあった通信機からおキヌの声が響く。


『こちら国際救助隊です。あと10分ちょっとでサンダーバード2号がそちらへ到着します。がんばってください』

「は、はやくしてくださいっ!今必死で制御棒を下ろしてるけど、それでも一部しか下ろせないんですっ!残りの制御棒は別区画に行かなきゃ下ろせないんですけど、こっちを下ろしてる間に向こうの区画はとても行けない状態になって…。あと30分27秒63でチャイナ・シンドロームですぅぅっ!!」

「…だから何故そんなに正確に時間がわかるんだピート」


ちなみにチャイナ・シンドロームというのは、原子力開発黎明期によく使われた言葉で、アメリカで原発事故が発生したら炉心部は大地を溶かしながら地下深く沈んでいき、ついには地球の裏側の『中国』へ出てしまうという冗談?から発した用語である。

まあ要するに、それはつまり単純にメルトダウンと考えればいいことだ。

…何にせよ、エラいことである。





ゴオオオォォォ…。


轟音とともにサンダーバード2号が地下原子力発電所の地上施設脇にVTOL方式で着陸した。

すかさず2号は4本の脚を伸ばす。

2号本体とコンテナは既に切り離されており、正面扉に白く『5』と書かれているコンテナを地上に残して#状の本体部が上へ持ち上がった。


「…小竜姫、ママは何と?」

「まずジェットモグラでこの付近まで掘り進んでください。詳細は私がまかされていますから、その都度指示を出します」


小竜姫は既に私服から救助隊特製の放射線防護服へと着替えている。

その彼女が広げているのは、この原発の見取り図と計画時の設計図面その他だ。

ワルキューレも制服から放射線防護服へと着替えながら、その図面を横目で眺める。


「…なるほど。『これ』が目当てか?」

「ええ…。ただ上手くいくかどうかは、やってみなければどうにも…」


小竜姫はそう言いながら、その様子は自信満々に見えた。

ワルキューレも彼女に力強く頷いてみせる。

二人はそのままジェットモグラ号へと乗り込むと、5番コンテナからモグラを発進させる。

キュオオオオォォォォン…。

ジェットモグラのドリルが高速で回転をはじめた。

モグラの台車が角度を変え、もう少しで地面と垂直になるぐらいまでモグラ本体を傾ける。


「…準備はいいか」

「いつでもいいですよ」


二人はにやりと不敵な笑みを交し合う。

サンダーバード・メカの中でも1〜2を争う人気メカ、ジェットモグラ号は大量の土砂を周囲に撒き散らしながら地底奥深くへと消えて行った。

…掘った土砂とトンネルの広さが合わないとか掘った土は何処へ行ったとか、けっして突っ込んではいけないのはこの手のメカのお約束だ。

そう、科学特捜隊の地底戦車ベルシダー(ペルシダーという説も有る)やウルトラ警備隊のマグマライザーも、けっして突っ込んではいけないのだ!





ピーッ、ピーッ!

マレーシアのジャングル奥深く、全世界を股に掛けた超悪人横島忠夫は、操作盤の計器に青ランプが灯ったのを見て感涙に咽んでいた。


「うっうっ…長かった…長かったあああぁぁぁっ!!!ついにっ!ついに成功したぞっ!!」


彼の前では、操作盤の『2』と書かれた文字の下の青ランプが他の物に先んじて明々と点灯している。

横島は一人うんうんと頷きつつ、独り言を漏らす。


「…さて、2号の秘密はこれで手に入れたも同然。あとは基地に帰った後でカオスを再び操って、秘密装置を回収させればいい」


彼は闘戦勝仏像へと目を向けた。

おそらくは今のうちに、再びカオスへ邪悪な魔術で暗示をかけようとでもいうのだろう。

だが彼はにんまりと笑うと、ふたたび向き直る。


「…いや、まだいい。ちゃんと全機サンダーバードが基地に帰還してからでよかろう。あまり急いて暗示をかけても、カオスの挙動がおかしくなって美智恵に不審がられても困る…。さぁて…」


横島はおもむろに他のランプへと目を向けた。

『5』のランプは別としても、『1』『3』『4』の下の青ランプは未だ点灯してはいなかった。

だが横島は焦らない。

彼の計画は順調に進んでいる。

これらの下の青ランプが点灯するのもまた、時間の問題なのだ。


あとがき:

いやぁ、ついに2号の青ランプが点灯してしまいました。
さて、次はいったいどの機体のランプにしようかな?
って、既に決まってるんですがね。

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