(注)本作品では横島は悪者です。あらかじめ覚悟の上でお読みください。










Five!

Four!

Three!

Two!

One!


Thunderbirds are go!!


国際救助隊 出動せよ! その1


ここはマレーシアのジャングルにある古代の寺院である。

だが誰も知らぬことではあるが、ここには世界征服を狙う稀代の悪人、横島忠夫の秘密基地があるのだ!

彼は今、怪しげな仏像…けっして今現在仏教界で主流になっている宗派のものではない、禍々しさを溢れさせている異様な仏像を前に、奇怪な儀式を執り行っていた。


「…カオス…カオス…」

『ぐ、ぐああぁぁ…く…くるしい、た、たすけて…やめてくれ…』


横島の身体から、異様な気配…邪悪な魔力が放出されると同時に、仏像からは今にも死にそうな声が響いてきた。

横島はにやりといやらしく笑う。


「カオス…おまえの魂は俺との血縁を媒介とした魔術によって縛られている。おまえは国際救助隊の創設者にして隊長、美神美智恵の執事をやっているな?」

『そう…そうだ…ああ、くるしい…』

「ふふ…そこで、だ。我が弟よ」

『ちょっとまてえぇいっ!?』


苦しげだったカオスの声が、突如はっきりとした怒鳴り声になる。

横島はぎょっとした。


『なんでわしがおまえの弟なんじゃ小僧っ!?』

「し…しょーがねぇだろっ!?原作のサンダーバードじゃぁジェフ・トレーシーの執事キラノは、世界征服を企む大悪人フッドの異母弟なんだからよっ!!」

『じゃが、いくらなんでも無理があるわいっ!だいたいなんでわしがキラノ役なんじゃっ!まだブレインズ役の方がわかるわっ!!』

「それこそ無茶言うなよっ!!だったらマリアがブレインズ作のポンコツロボット・ブレイマン役かぁっ!?いくらなんでも可哀想だろがっ!」


横島の反撃に、カオスはぐぐっと詰まる。

だが、カオスの言い分ももっともだと思ったのか、横島は妥協案を出した。


「…しゃーねぇ、ちょいと設定をいじろう。…ボソボソ。…つーことで、やりなおしな」

『うむ…』


そして物語は再開する。





ここはマレーシアのジャングルにある古代の寺院である。

だが誰も知らぬことではあるが、ここには世界征服を狙う稀代の悪人、横島忠夫の秘密基地があるのだ!

彼は今、不可思議な仏像…ぶっちゃけた話、闘戦勝仏像を前に、奇怪な儀式を執り行っていた。


「…カオス…カオス…」

『ぐ、ぐああぁぁ…く…くるしい、た、たすけて…やめてくれ…』


横島の身体から、異様な気配…邪悪な魔力が放出されると同時に、仏像からは今にも死にそうな声が響いてきた。

横島はにやりといやらしく笑う。


「カオス…おまえの魂は俺との血縁を媒介とした魔術によって縛られている。おまえは国際救助隊の創設者にして隊長、美神美智恵の執事をやっているな?」

『そう…そうだ…ああ、くるしい…』

「ふふ…そこで、だ。我が祖父よ。お前に命ずる。サンダーバード・ロケットに搭載されている『自動カメラ探知機』を、整備の際にこっそり破壊するのだ!」

『ああ…いやだ…いやだぁ…』


カオスは美智恵への忠誠心と邪悪な魔力との板ばさみになり、悶える。

だが横島の魔力は尋常ではない。


「ふふふ…逆らえるわけが無い。さあカオスよ…さらに後日、ロンドン経由で貴様の所にある荷物が届く…。それを…」

『やめ…やめてくれ…く、くるしい…わかった…わかったああぁぁ…』

「くくく…」


横島はニヤリと不気味な微笑みを浮かべた。





ここは南海の孤島、国際救助隊本部である。

この島の地下に巨大な施設が存在し、そこに1号から4号までのサンダーバード・ロケットと各種救助装備が格納されているのだ。

このサンダーバードのメカ群を開発したのが天才エンジニア・小竜姫(本名不詳)である。

カオスの娘たるマリアは、この小竜姫の助手をやっていた。


「…次の予定・サンダーバード1号の・定期点検整備」


マリアは1号の整備へと向かう。

だがその途中、彼女は彼女の父たるカオスを見かけた。

彼は多少おぼつかない足取りで、1号の格納庫へと歩いている。


「お父様・どう・なさいましたか?お疲れの・ご様子・です」

「ん?ああいや大したことはない。それよりもマリア、おぬしの方が疲れておるじゃろう。毎日毎日サンダーバードの整備でのう。どれ、たまにはわしがかわろう」

「いえ・それは・マリアの仕事・です」


マリアはカオスの申し出を断った。

だがカオスは食い下がる。


「いかん!マリア、疲労で集中が欠けた状態で整備をして、何か事故があってからでは遅いのじゃぞっ!?ここは素直に自室へ帰るのじゃ!!」


カオスは強引にマリアを説き伏せると、自分は1号格納庫へと降りて行った。

彼は1号コクピットへ入り込むと、慣れた手つきで各種装備の点検をはじめた。

だがそのとき、彼の目に『自動カメラ探知機』が映る。

この自動カメラ探知機は小竜姫の一大発明で、今まで何度もサンダーバード・メカの機密漏れを防いできた。

かの大悪人横島も、幾度となく国際救助隊の秘密を撮影するのを、このシステムに邪魔されてきたのだ。

カオスの目がぎらりといやらしく光る。

だが、それはけして彼の意思ではない。

彼の顔にはうすぼんやりと、横島の顔が蜃気楼のように重なって映し出されていた。

カオスの手が、こっそりと自動カメラ探知機内部の配線を切る。

だがそのことをカオス自身はまったく認識していない。

カオスの記憶には、彼が自動カメラ探知機を破壊したことも、ロンドン経由で受け取ったとある荷物のことも、一切残っていないのだった。





マレーシアの自分の根拠地で、横島はこみ上げる笑いを抑えることができなかった。


「く、く、く…はーっはっはっは。よくやったぞカオス、我が祖父よ!これで国際救助隊の秘密は俺のものだぁっ!」


彼、横島忠夫の目的は世界征服だ。

そして彼はその目的に向かい、大きな一歩を踏み出したのである。


あとがき:

サンダーバードは我輩の青春の1ページでした。
というわけで、NHK教育にて再放送やってたので思わずこういうシロモノを書き上げてしまい、それを夜華の小ネタ掲示坂へ投稿いたしました。
でもって、夜華が閉鎖されたために自サイトへと掲載場所を変更した次第であります。

ちなみに国際救助隊のメンバーは、以下のような代物です。



国際救助隊創設者兼隊長: 美神美智恵
美神令子: 指揮偵察機・サンダーバード1号操縦者
現場指揮官
氷室キヌ: 宇宙ステーション・サンダーバード5号常駐の通信員
ワルキューレ: 救助装備輸送機・サンダーバード2号操縦者
タマモ: 特殊潜航艇・サンダーバード4号操縦者
犬塚シロ: 宇宙ロケット・サンダーバード3号操縦者
小竜姫: 主席エンジニア
カオス: 執事
マリア: エンジニア助手兼補助要員
小笠原エミ: ロンドン支部エージェント
タイガー寅吉: 執事
ロンドン支部エージェント・サポート要員
and……… 横島忠夫: 悪の帝王
斉天大聖: 仏像(闘戦勝仏像)



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