四百九十三 二月九日青森県金木町津鳥文治方より京都市左京区聖護院東町十五番地三森豊方堤重久宛(はがき)  拝復 泣きながらの(パカダネ)御手紙拝誦。原稿も拝見。いいところもありますから、あれを京都市東山区、新門前梅本町、「東西」編輯所の貴司山治氏にお渡しなさい。貴司さんには、私から君のことを言つて置きましたから。貴司さんとは私は逢つた事が無いけれども、安心できる人物のやうです。このごろ妙な事から、貴司さんと私と文通するやうになつたのです。なほまた原稿の事だけでなく、その他、生活の事でも貴司さんに何でも相談してみるとよろしい。親切にやつてくれると思ひます。また「東西」編輯所を中心とした芸術家のグループも、上品でのんきな人ばかりらしいから、きつとその中から君の話相手も見つかると思ふ。原稿は今日、別封書留速達で君あてに送りましたから、なほ誤字脱字など直しなさい。貴司さんと逢つても、かたくならず、太宰の失敗談など知らせて笑はせてやりなさい。不一。