制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2005-03-22

「吉田提案」(昭和37年:第六期國語審議會)

明治三十五年の國語調査委員會で、「文字ハ音韻文字ヲ採用スルコトゝシ」と云ふ基本方針が定められた。以來、漢字全廢論に基いた國語改革の思想が文部省では支配的となつてゐた。「当用漢字」は、さうした漢字廢止の流れの中で實施された。

その流れを斷切るべく、吉田富三が昭和三十七年、第六期國語審議會において「吉田提案」を行ひ、表音主義に基いて行はれて來た國字政策の轉換を主張した。吉田氏は、國語審議會が國語に關して審議する際の方針として「國語は、漢字假名交じり文を以て、その表記の正則とする」と規定し、公表すべきであると考へ、檢討すべき議案として提案した。

昭和四十一年、中村梅吉文部大臣の諮問に基いて、第八期國語審議會が始まつた。その諮問に際して「今後のご審議にあたりましては、当然のことながら国語の表記は漢字かなまじり文によることを前提とし」と云ふ文言が盛込まれた。