制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2002-01-21

当用漢字表(昭和21年11月16日 内閣告示第32号)

概要

表に擧げられたものにのみ、漢字の使用を制限すると云ふ制限的な意圖をもつて出された漢字表。1850字。

「現代かなづかい」と同時に、「当用漢字表」は昭和21年11月16日、内閣訓令・告示により公布、實施された。

従来、わが国において用いられる漢字は、その数がはなはだ多く、その用いかたも複雑であるために、教育上、また社会生活上、多くの不便があった。これを制限することは、国民の生活能率をあげ、文化水準を高める上に、資するところが少なくない。

それ故に、政府は、今回国語審議会の決定した当用漢字表を採択して、本日内閣告示第32号をもって、これを告示した。今後各官庁においては、この表によって漢字を使用するとともに、広く各方面にこの使用を勧めて、当用漢字表制定の趣旨の徹底するように努めることを希望する。

この内閣訓令に明かであるが、「当用漢字表」の性格は以下のやうなものである。

「当用漢字表」は戰後の混亂期に定められたものであり、當然ながら不備の多いものであるが、所詮「当用」のものであるから不便は忍ぶべきである、とされて、採擇が強行された。

制定の經緯

1295字案

漢字主査委員會は昭和20年12月17日から21年4月8日までに14囘の會合を開き、当用漢字1295字を決定發表した。4月24日の新聞には、以下のやうな記述が見られる。

固有名詞を全部かな書きにする點では論議沸騰したが、結局一切ふれないこととし、その代り動植物は一切かな書きとした……。

「固有名詞を全部かな書き」に關しては、つださうきちやなかのしげはるが當時、實踐してゐる。

また同時に發表された教科書局長有光次郎の談話は以下の通り。

頻度數を標準にして選定したもので字劃の難易には關係なく、その意味で完璧なものではない、國語の假名書化ローマ字化なども前提として美しい耳だけでわかる日本語を完成せねばなるまい、いづれにせよ國語のゆくべき方向へこの1295字はまづ數の第一次制限を果たした點では大きく一歩前進したのである。

1850字案

その後意見が出て、無理な漢字制限は實行できないといふ意見があがり、さらに小委員會を組織して檢討することになつた。その主査委員に選ばれたのは以下の18名であつた。

昭和21年6月4日から10月16日までに23囘の會議が開かれた。最終的に当用漢字1850字が選定され、11月5日の國語審議會第12囘總會に提出、同案は審議會委員71名中46名の贊成により可決されてゐる。(46名のうち14名は委任状──だから32人の贊成、14人の意見保留、25人の反對と云ふ事である)

この「当用漢字表」では、以下のやうな漢字で略字が採用されてゐる。

ほか、あはせて131字の「簡易字體」が擧げられてゐる。

ただし、多くの漢字の略字體はのちの「当用漢字字体表」で採用されたものである。

參考