「当用漢字」1850字について、音訓の制限(從來、3122の音訓)を見直し、357(音86、訓271)の音訓を追加した。但し、從來の音訓表と異り、音韻上の變化によつて生じた派生形も掲げる形式となつた爲、音訓の數はのべで3938、派生音訓まで入れると4087となる。
音訓を、個別・單獨の漢字一字の爲のものとは見ないで、語或は語の成分を書き表はすものと認めた。
国語審議会は、漢字部会とかな部会を設け、問題點を檢討し、5年餘りを經て、第10期の終りに当用漢字の音訓改定を答申した。
「現代雑誌90種の用語用字」(昭和37年の調査報告)を基に檢討が行はれ、その結果、「当用漢字音訓表」による音訓の制限が、文章を書き難くしてゐる事、かなが増えた爲に文章が讀み難くなつてゐる事が明かになつた。
昭和45年5月27日の総会に「当用漢字改定音訓表(案)」が提出された。さらに、一般の意見を求めて檢討が續けられ、昭和47年6月28日の総会で「当用漢字改定音訓表」が議決・答申された。
舊「当用漢字音訓表」に掲げられてゐる音訓については、注記や音と訓の所屬の變更が行はれるのみに留められ、一つも削除されなかつた。そして、字音86、字訓271が追加された。だが、その中には從來、使用上の注意事項
の中に記載されてゐたものも含まれるから、實際に増えた音訓の數はそれより少くなる。
一方、「当用漢字音訓表」の「制限」と云ふ性格がこの「改定音訓表」では「目安」と云ふ性格に變更されてゐる。もつとも、當初は「基準」と云ふ言ひ方をする豫定だつたものの、「最低基準」と受取られては困ると云ふ理由で「目安」と云ふ用語に變更されたのである。はつきり「制限」とは言はれなくなつたものの、實は依然「制限的な性格」が殘つてゐた、と考へる事が出來る。
国語審議会の方針が轉換されて以來、初めての「成果」であるが、答申から告示まで約1年の期間を要してゐる。かつての漢字制限は極めて迅速に行はれたが、漢字の「再認知」は容易に行はれなかつた。
なほ、昭和56年の「常用漢字表」は、この音訓表の原則を踏襲してをり、新たな音訓の撰定方針は本表に準じてゐる。