野嵜は「理窟」つて書いてゐるけれども、「理屈」が正しいのではないですか、と云ふ御指摘をメールで頂戴しました。
昭和37年7月5日国語審議会報告「同音の漢字による書きかえ」で、「理窟」を「理屈」に「書きかえ」るやうに、と云ふ事になつてゐます、だから本來、「理窟」が正しいのです、と返り討ち
いたしまして、「言葉を疑へ」のネタにしますねーと聯絡したのですが。
ウェブ日記で「どうぞ公開して下さい」とご囘答がありまして、それは良いのですが、そこに當方の書きたい事が全部書かれてしまつて、返り討ち
の返り討ちに遭
つてしまつたと云ふ落ち。
某所にて「理窟」という表記を見つけたので,さすがにこれは「理屈」の誤りであろうと考え,いちおう漢和辞典で「屈」が「窟」の略字でない事を確かめて,メールで「直しておいたが吉ですよ」などと報告しておいたら,否とよ「理窟」こそが正しい表記であるゾと返り討ちに遭った。 昭和37年7月5日国語審議会報告「同音の漢字による書きかえ」において「理窟」は当用漢字の「理屈」に書き換える事になっているとの事。 くはっ…マジですか。 なまじ自分は漢字には詳しいと思っていただけにショックはデカかった。
さっそくネットを探し回って漢字書き換えの資料を発見。 つらつら見てみると 2, 3 割ぐらいは正統な表記の方を理解していたが,残りは書き換えられた方,つまりインチキ漢字の方を正しいものと信じていた。 修行が足らなかった。
恥ずかしながら俺の失敗は近々こちらで晒される模様 (というか俺が公開する事に同意した)。 前車の覆るは後車の誡め,皆さんもインチキ漢字には御注意ください…って,こう書いている中にもインチキ漢字が含まれているのではないかと心配で仕方がない。
さて,当用漢字への書き換えはインチキでないよ,公認の正しい表記だよという説もあろうかと思うが,ちょっと俺はそれを受け入れられそうにない。 たとえば中国には簡体字というものがあって,「雲」は「云」,「機」は「机」などと表記するのが公認なのであるが,日本人としてこういう表記に違和感を感じないだろうか。 少なくとも俺は激しい違和感を感じるし,こういう表記は漢字の持つ文化的な伝統をブチ壊しにするものだと思う。
これだけで話を終らせてしまつたら、ここには何ら情報が存在しないも同然なので餘談。
漢和辭典で「理窟」を調べてみると、以下のやうな意味が擧げられてゐます。
- 物事の道理。
- こじつけの道理。国
- 科学。
我が国においてのみ用いられる意味
本來、「理窟」と云ふ語は惡い意味を持たないのですが、日本に渡つて來て以後、嫌なイメージを植ゑつけられてしまひました。日本人は論理的な人種ではないので、物の道理が嫌なものに見えたのでせう。
そして、さう云ふ日本人のメンタリティは、今も變つてゐません。惡い意味での「理窟」を言つて物事をねぢまげた例のひとつが「同音の漢字による書きかえ」である譯ですが、困つた事です。