制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2002-08-11

「無理からぬ」v.s.「無理ならぬ」

「無理」は名詞で、「形容動詞」的な活用をする事があります(「無理だ」「無理な」)。

形容詞として「無理」を「かり」活用させるのは、正しい用法ではありません。ですから、「無理からぬ」には本來なり得ません。

辭書の記述を見る

『講談社日本語大辞典』

(連語)無理でない。もっともな。reasonable

広辞苑 第三版

無理でない。もっともな。

『岩波国語辞典第三版』

「無理」の下の小見出しに「無理からぬ」を出してゐます。

<連体>無理でない。もっともな。※本來なら「無理ならぬ」であるべきだが、「広からぬ」「低からぬ」などの類推からできた語。

『岩波国語辞典第三版』のやうな説明は、辭書として最低限必要なのではないかと思ひます。

或は、『広辞苑』等の日本の大きな辭典は、誤用をさつさと「正しい」言ひ方として認めてしまふ傾向があります。困つた事です。


餘談ですが、「無理往生」(無理に服從させ、押附けてやらせる事)の説明で、『岩波国語辞典第三版』は「無理圧状」が正しいと註を附けてゐます。「無理矢理」(無理を強ひて行ふ樣子)にも「やり」は「遣り」、「矢理」は当て字。と云ふ註を附けてゐます。

『岩波国語辞典』は、編纂者の見解が隨所の記述に表れてゐて、良い辭典です。

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