制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
初出
「闇黒日記」平成十五年四月十八日
公開
2013-03-08

言質を取る

平成十五年四月十八日
http://osaka.yomiuri.co.jp/feature/kotoba/020603.htm

言質は比較的新しい語で、明治のころは「ことばじち(言葉質)」と言うのが普通だった。それが大正ごろから「言質」と書いてゲンチと読むようになった。「質」には、もともと「チ」という音があるが、質をチと読む語は非常に少なく、一般人にはなじみがなかった。それなのに、言質をわざわざゲンチと読むようになったのは、当時の教養人の仕業と推測される。

で、現代の教養人であるところの武庫川女子大教授は、今になつて「言質」の讀みとして「げんしつ」を認めさせようと劃策する譯だ。教養人は暢氣な商賣だ。
「economyの譯語である經濟や、freedom/libertyの譯語である自由は、古くからある言葉だが、明治になつて現代的な意味で用ゐられるやうになつた。それは當時の教養人の仕業と推測される。だから、經濟は『けいざい』、自由は『じゆう』と讀まなければならない理由はない」等と云ふ理窟が通るだらうか。私は通らないと思ふのだが、大學教授と云ふ教養人の説によれば通るらしいのである。