『岩波国語辞典』は定義なる語を定義して、ある概念内容・語義や処理手続をはっきりと定めること。それを述べたもの。
と簡單に言つてゐます。ジョン・ホロウェイに據れば、「定義」という語は、ある語の使用可能な範囲をより正確に限定するいかなる手続きをも指して使用される。
と云ふ事になります。
ここで言はれる「定め方」「手続き」は、この「定義」自體に據つては一通りに限定されません。「定義」の形式は簡單に一種類に極ると云ふものではありません。
クランストンは二種類の定義の概念が、十分注意して意識されねばならない事を指摘してゐます。
例えば、消え残っている雪を指さして、「私が『黒い』というときはつねにこの色を私は意味する」と申し立てさえすれば、あなたはそのことにより、「黒い」という言葉は白を意味する、と取り決め得る。云々と、例を擧げて示してゐます。
取り決めが役に立つべきであるならば、一定のルールを、とりわけ、次のルールを守ることが肝要である。
- 取り決めによる定義以外の定義はすべて排除されなければならぬ。というのは、同じ言葉にたいする異なった意味が増えることは、あいまいさを必然的に増大させ、したがって、取り決めがそれに終止符を打つつもりでいた混乱をかえって甚だしくすることになる。
- ある語の通常的用法が当の意味をすでに示す場合、別の語にたいし取り決め的にこの意味を与えることはしてならぬ。
「〜とは何か」のやうな問ひが與へられ、論者がそれに對して己の見解を言明した時、それが定義であるか何うか、は檢討せられるべきである。
それらの言明が定義であるとすれば、さらに次の三つの疑問が直ちに生じてくる。
- それらの言明は辞書的定義であるか、それとも取り決め的定義であるか。
- もし辞書的定義であるとすれば、その報告するところは正確であるか(それらの言明は真であるか、それとも、偽であるか)。
- もし取り決め的定義であるとすれば、それは役に立つ定義であるか(それらの言明はよき取り決め的定義のルールを満たしているか)