制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2000-08-09
改訂
2005-02-05

補助符號

國語表記には、假名(平假名・片假名)、漢字、ローマ字等の文字の他に、補助符號が用ゐられる。補助符號には、音符と句讀點とがある。

音符

濁音符、半濁音符、促音符、撥音符、長音符、反復音符等がある。

濁音符
濁點。
平假名、片假名の右肩に附される濁音を示す符號の事。
漢文の訓點から生じたもの。漢字の四聲を表はすのに用ゐられた記號である。後に音義・辭書で説明の爲に用ゐられた。鎌倉時代以後、和歌や物語等でアクセントと清濁を示す符號として使はれるやうになつた。室町時代以後、アクセントと無關係に、清濁の區別を表現するのに使はれるやうになつた。今のやうな形の濁音符になつたのは江戸時代である。
半濁音符
半濁點。
「パ・ピ・プ・ペ・ポ」の音を示す爲に、ハ行の假名の右肩に附される「○」を指す。
室町時代の「キリシタン資料」に顕著。江戸時代中期以降一般化した。
カ行の「鼻濁音」を示す爲にも用ゐられるが、一般的ではない。
促音符
「っ」「ッ」。
平安時代には、撥音を表す符號と共用したり、無表記であつたりするのが普通であつた。
院政時代頃から促音を示すのに「つ」「ツ」が用ゐられるやうになつた。
表記に表はれないだけで、奈良時代以前の日本語にも促音があつた可能性がある。
撥音符
「ん」「ン」。
もと漢文の訓點。漢字音の韻尾の[-n]を示すのに用ゐられた記號から生じた。
表記に表はれないだけで、奈良時代以前の日本語にも撥音があつた可能性がある。
長音符
「ー」。
音節中の母音を長く引いて發音する事を示すもの。
古くは、母音を示す文字や、「引」と云ふ字を下に書き添へて、長音を示した。
江戸時代になつて、外來語などの特殊な語を表記するのに「ー」を用ゐた例が見られるやうになる。一般化したのは明治時代以降である。
反復符號
踊り字。
「々」(漢字)、「ゝ」(平假名)、「ヽ」(片假名)など。
二字以上の假名を繰返す場合は、細長い「く」(縱書專用)。

句讀點

句讀點を現在のやうに遣ひ分けるのは明治以後の事である。西歐の表記法から影響を受けたものである。

句點。文の終りを示す。
讀點。文中の句切れを示す。横書きでは「,」(カンマ)を用ゐる場合もある。
中點・中黒。同種の語句の列擧を示す。
「」
鉤括弧。會話や引用を示す。
『』
二重鉤括弧。鉤括弧で括られた文中で鉤括弧を用ゐる場合。或は、書名を示す。
()
括弧。註釋、ト書き等、本文の説明。
──
ダッシュ。文中の語の説明や、文の挿入、言換へなど、様々な用ゐられ方をする。
……
リーダ。省略を示す。
疑問符
感嘆符
"
引用符

參考文獻

『國語学』
1984年10月第1版第1刷
1991年3月第1版第8刷
宇野義方編
学術図書出版社
第3章「文字・表記」(pp.88-90)
『日本語学』
1995年5月15日初版第1刷発行
1999年3月25日初版第4刷発行
谷光忠彦・福田眞久・坂詰力治・後藤剛・伊藤光浩
酒井書店
第3章「文字」(pp.58-60)