ほんのりした空中の窓よ あざやかな時間の運轉者が せつせと月を洗ひ淨めてゐるよ 旅行者よ 農夫よ 航海者よ その頭の中に燈火をつけよ 日光をもたない囚人もぬす人も いそいで美しい松明をともすがよい 月は自然の幽靈であるから 一つの眼のうちにこもつた幽情を 地上へ映しながら光と陰の文字をかくよ きよらかな、清らかな 寂寥と光明の今宵の晴れに ほんのりした空中の窓は開いてゐるよ