制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
改訂
2007-08-31

松原正氏の飜譯書

英文學

「完全な批評家」(T.S.エリオット)
『エリオット選集』第1卷(1959年3月5日發行・彌生書房)所收。

たとへばわれわれがスピノザのやうに必然といふことを理解すれば、われわれは自由になる、なぜならわれわれはそれを受け入れるからだ。が、法則を定めたり自己の評價を斷定したりする獨斷的な批評家の仕事は完全なものではない。かれらの意見も、時間の經濟といふ點からすればしばしば存在理由があるのだらうが、こと重要な問題となれば批評家は強制してはならぬのだし、また良否の判断を下してもならぬのである。批評家はただ單に批評對象のもつ必然性を解明すれば足りるのであつて、然るべき判斷は讀者が自らくだすのである。

と云ふエリオットの文章に、以下のやうな譯註が附されてゐる。

スピノザにとつて、自由とは恣意的な自由ではなく、自由と必然とは一致する。對立は自由と必然の間にではなく、自由と強制との間に存する。だから、ホラティウスやボアロオの批評は個人的經驗にもとづくもので充分に一般化されてゐず、強制的におしつけられるから、讀者に判斷する自由を與へないが、もし批評家が作品のもつ必然性、すなはち文學の傳統の中において占むべきその位置とかそれが生まれてきた必然性などを解明してくれるならば、讀者はかへつて判斷する自由をもつ。エリオットの言はんとするところはさういふことであらう。

完全な批評家は、讀者に自己の好みを押附けるものではなく、判斷の自由を與へるものである、と云ふエリオットの論文のポイントが指摘されてゐる。とは言へ、的確な判斷の根據が提示されてゐるならば、讀者の自由な判斷も必然的に一つに決る事だらう。

『不条理』(A.P.ヒンチリフ)
文学批評ゼミナール5(昭和46年4月20日初版發行・研究社出版)
Arnold P. Hinchliffe "The Absurd"の飜譯
『不条理』表紙
目次
  1. 不条理という言葉
  2. 不条理の演劇
  3. 最初のアウトサイダー
  4. ジャン・ポール・サルトル
  5. アルベール・カミュ
  6. 反抗
  7. パリ派の作家たち
    • イオネスコ
    • ベケット
    • ジュネ
  8. 限界
  9. 反論
  10. 小説家に関する覚書
  11. 結論
情報提供
前田嘉則樣
「赤い小馬」(ジョン・スタインベック)
世界名作全集25(1958年發行・平凡社)所收。
狭き門
ジイド・新庄嘉章訳
車輪の下
ヘッセ・石中象治訳
赤い子馬
スタインベック・松原正訳
「シェイクスピアについて」(パステルナーク)

『聲』の第3號に掲載されてゐるパステルナークの「シェイクスピアについて」は、松原正氏の翻訳です。

 福田恆存が翻訳を依頼したもののやうです。

情報提供
ひむか樣(Mailing List。2000-12-07)

演劇

「秘書」「老政治家」(T.S.エリオット)
『エリオット全集』第2卷・詩劇(昭和35年5月10日初版發行・中央公論社)所收。
同全集の「内容見本」では、「組方見本」に「老政治家」のページが使はれてゐる。
『ヴァイオリンを持つ裸婦』(ノエル・カワード)
松原正・林克巳共譯
昭和36年5月24日〜6月5日/6月12日〜6月16日(地方)公演(文學座・公演番號85・創立25周年記念公演・戌井市郎演出・都市センターホール他)
文学座1961〜1970
昭和58年3月公演(劇團昴・福田逸演出・三百人劇場)
1983年 上演作品 DARTS
『わが命つくるとも』(ロバート・ボルト)
昭和44年5月9日〜6月9日公演(劇團雲・荒川哲生演出・讀賣ホール他)
Robert Bolt "A man for all seasons"(1960)の飜譯。1966年に映畫化(邦題「わが命つきるとも」)された戲曲。原作は1988年に改定されてゐる。

トマス・モア だが、私にも小さな……小さな領地がある……自分で支配しなければならない小さな領地が──陛下にとつては、テニス・コートほどの廣さもない領地が。

  • 『決められた以外のせりふ』(芥川比呂志著・新潮社)
「聖女ジャンヌ・ダルク」(ジョージ・バーナード・ショー)
福田恆存・松原正共譯
『ノーベル賞文学全集20』(主婦の友社)所收。
『福田恆存飜譯全集』第8卷にも入つてゐるが、福田單獨譯扱ひ。
「シーザーとクレオパトラ」(ジョージ・バーナード・ショー)
1975年10月2日〜13日に三百人劇場で上演された。
1975年 上演作品 DARTS
『名優 演技を語る・役者と觀客への贈物』(H・バートン著・福田逸譯・玉川大學出版部)
「テアトロ」掲載時、「共譯者」の一人。
ジョン・ホワイティング「ルダンの悪魔」
現代世界演劇16『現代のクラシシズム』(1972年2月、白水社)所收。
http://weblib.edogawa-u.ac.jp/opac/books-query?mode=3&code=70003598&key=B113144294513477&cw=1
ディベート×演劇::blog :: 「ルダンの悪魔」ジョン・ホワイティング作 松原 正訳

推理小説

『コロスコ号の悲劇・クルンバーの謎』(コナン・ドイル)
昭和33年11月30日初版・東京創元社・世界大ロマン全集54。絶版。譯者あとがきあり。珍品。
『コロスコ号の悲劇・クルンバーの謎』函
「クルンバーの謎」(コナン・ドイル)
『世界名作推理小説大系1』所收。昭和36年4月30日初版發行・東京創元社・絶版。
『世界名作推理大系1 モルグ街の殺人事件他・クルンバーの謎・ホームズの冒険』函
『クルンバーの謎』(コナン・ドイル)
1959年10月發行・東京創元社・創元推理文庫159。絶版。
非常な珍品。僅かな間しか流通しなかつたらしいが、ミステリ部門(カヴァなし)で出て、のちSF部門に編入。延原謙譯の新潮文庫版(『クルンバの悲劇』)は比較的入手しやすい。2007年、別の譯者により新譯が刊行(創元推理文庫)。
『夜は千の目を持つ』(ウイリアム・アイリッシュ)
1959年6月10日發行・東京創元社・世界推理全集75。絶版。
『夜は千の目を持つ』(ウイリアム・アイリッシュ)
1961年發行・東京創元社・東京創元社 世界名作推理小説体系 20。絶版。
『夜は千の目を持つ』(ウイリアム・アイリッシュ)
1962年發行・東京創元社・創元推理文庫274。絶版。現在創元推理文庫では現在、村上博基譯で出てゐる。
「夜は千の目をもつ」(ウィリアム・アイリッシュ)
『世界名作推理小説大系20』所收。1963年・東京創元新社。絶版。
「スタイルズの怪事件」(アガサ・クリスチィ)
『世界名作推理小説大系別卷4』所收。昭和36年10月5日初版發行・東京創元社・絶版。
『スタイルズの怪事件』(アガサ・クリスチィ)
1963年發行・東京創元社・創元推理文庫317。絶版。文庫版には「譯者あとがき」がある模樣。創元推理文庫では現在、田中西二郎譯で出てゐる。
『フレンチ警部と賭博船』(F.W.クロフツ・東京創元社・創元推理文庫211)
1960年11月25日發行。絶版。現在は中村能三譯で出てゐる(『フレンチ警部の多忙な休暇』1977年發行)。
『ギルフォードの犯罪』(F.W.クロフツ)
1961年發行・東京創元社・創元推理文庫246。絶版。現在は中山善之譯で出てゐる(1979年發行)。
『フレンチ警視最初の事件』(F.W.クロフツ)
1962年發行・東京創元社・創元推理文庫295。絶版。現在までに再刊されてゐない。
創元推理文庫のききめであるらしい。
『マギル卿最後の旅』(F.W.クロフツ)
1963年發行・東京創元社・創元推理文庫301。絶版。現在は橋本福夫譯で出てゐる(1974年發行)。