制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-06-19

『續・暖簾に腕押し』

時事問題を論つた評論集。


松原氏の文章が雜誌に出、暫くして、田中角榮氏から「一度會ひたい」と申し出があつた。松原氏はその申し出を蹴つた。「田中角榮元首相無罪論」は、田中氏個人を擁護する文章ではなかつたからだ。

松原氏の狙ひは、日本の法律の不備を衝く事、また法治主義を理解しない日本の法律家の問題を剔抉する事であつた。


日本人は「人物」にとらはれて、客觀的に・冷静に事態・物事を判斷出來なくなる事がある。けれども、松原氏は「個人の好き嫌ひ」とは異る價値判斷もある、と云ふ事を辨へてゐた。

松原氏の主義・主張に贊同しない人もゐるだらうが、感情的な好き嫌ひと、冷靜な人物評價とを峻別しようとする氏の態度は見習ふべきだらう。

かつてロッキード事件が世間を騷がせてゐた頃、私は田中角榮氏の人權を擁護すべし、と書いた事がある。けれども私は田中角榮氏を好かない。田中軍團によつて福田政權が潰されたとあつて、今はますます好かない。が、田中氏の形振り構はぬ執念は見事だと思ふ。それに引換へ、蕎麥が好物だといふ福田氏の淡泊は齒痒くてならぬ。