喜劇四幕。チェホフ「櫻の園」を下敷とした御芝居。よつて筋らしい筋はない。現代劇。
『全集』第二卷「覺書」に、以下のやうな記述がある。福田氏は戰時中雜誌「形成」の編緝者をしてゐた際に岸田國士と何度か會つてをり、それだけの縁が頼りで、「キティ颱風」を讀んでもらはうと思ひ、東京の谷中初音町に岸田氏を訪ねてゐる。氏はたまたま不在だつたので、勝手な話だが、なんとなく氣がせき、その原稿に手紙を書きそへて歸つて來た。それから二三日後、岸田氏から葉書が屆き、面白いので直ぐ讀み終つた、「人間」にでも推薦したいから來るやうにと、ただそれだけの簡單なものだつたが、私は大層嬉しかつた。
山口久吉氏(「悲劇喜劇」千九百五十三年一月號の劇評「福田恆存の『龍を撫でた男』」)に據れば、高田保が絶贊してゐたとの事。『全集』第二卷の「覺書」に據れば、高田氏は昭和二十五年、私の初めての芝居「キティ颱風」が上演されたときにも、胸の病を押して見に來てくれ、先輩劇作家として何かと注意してくれた
さうである。