制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2002-04-29
改訂
2007-11-24

印刷する側の都合も考慮して

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多くのウェブサイト制作者・ウェブサイトデザイナーが、モニタでの見ばえを気にする一方、印刷の見ばえを無視しがちです。

閲覧者がHTML文書を利用する方法の一つとして、「印刷してとっておく」事があります。残念ながら、多くの制作者・デザイナーは、自分が設計・デザインしたウェブサイトの「ぺーじ」が印刷される事を考慮しません。

閲覧者にとっては当り前の行為である印刷に、制作者はなぜか配慮しません。印刷しづらい「ほーむぺーじ」は極めて多く、その種の「ぺーじ」をうまく印刷するノウハウすら存在します。テーブルで固められた「幅が広いぺーじ」程度なら、プリンタでの用紙の向きを縦から横に変更すれば、一往なんとか収まります。

しかし、どうやってもきれいに印刷できない「ぺーじ」があります。最近はブラウザの機能が向上し、相当複雑なレイアウトがなされた「ぺーじ」でも、モニタ向けには割としっかりレンダリングしてくれます。しかし、画面ではそれなりにきちっと見える「ぺーじ」でも、印刷するとレイアウトが壊れる場合があります。動的に変化する「ぺーじ」もですが、案外テーブルと「レイヤー」を組合せた「ぺーじ」の印刷を、ブラウザは苦手とするみたいです。

この時、閲覧者は、「ほーむぺーじ」を印刷して保存するのを諦め、そもそも保存する気にならなかったりします。

ちょっと上級の閲覧者は、一度ウェブサイトの印刷に失敗すると、それに懲りて、二度とウェブサイトをそのまま印刷しようとしなくなります。どうしても紙の形で保存したい場合には、テキストをコピーし、ワープロ等で割附をし直して印刷します。

デザイナーの発想は、しばしば「ぱっと見できれいであればそれで良し」といったものです。ところが、そんな発想のもと、デザイナーがテキストを適当にレイアウトソフトで貼り附けて作った「ぺーじ」は、テキストが出たら目な順番で並ぶため、ソースレヴェルで見るとぐちゃぐちゃな事があります。

良いデザインは見る人が目を移して行く方向に基づいて要素をレイアウトするため、必ずしも変な事にはなりません。最近の「ぺーじ」制作ソフトも、「HTMLの仕組」をよく知らないデザイナーが使用する事を考慮して、それなりの配慮をしてくれます。けれども、それでできあがった「ぺーじ」が、ソースレヴェルでそれなりのものであっても、それはたまたまそれなりに仕上がったに過ぎず、偶然うまくいっただけに過ぎません。

場合によって、画面上の「流れ」と、ソースレヴェルでのテキストの出現順序とが一致しない事があり得ます。見た目がきれいならばデザイナーは満足しますが、医療等のクリティカルな場面ではこの種の齟齬が問題になる可能性はあります。

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tableでレイアウトが固められた「ぺーじ」を、現在の多くのブラウザはうまく印刷できません。ページの境目で、文字が泣き別れになる現象はしばしばあります。

テキストを適切に印刷できないのは、ブラウザの不具合かもしれません。しかし、一つのtableを「一枚の画像」と同様に処理するのは、必ずも不適切なやり方ではないかもしれません。ブラウザが、ページの境界に文字がかかっても気にせず文字をぶった切って印刷するのは、或意味当然の挙動です。

そもそも、tableはそんなに巨大なものであるべきではありません。1ページを越える巨大なtableを作る方が悪いのです。そして、その巨大なtableが、普通のテキストの見た目を決定する「偽table」であるならば、最初からそんなtableを作る方が悪いのではないですか。

ブラウザによっては、tableの途中で改ページされる可能性がある場合、tableの中身を全部次ページに送り込んで、前のページを空白のまま残す事があります。レイアウト目的のtableでもレイアウトが壊れる事になりますが、閲覧者はレイアウトが壊れるよりもっと困る事になります。ヘッダやフッタだけが印刷されただけの無駄な白い紙が、大量にプリンタから吐出されてくるからです。

何れにせよ、この種の事態が生ずるたびに、tableに收められた長文を印刷して保存しようとする閲覧者は、テキストをコピーしてワープロに貼りつける、面倒な作業をせざるを得なくなるのです。

tableで文書を整形するのは、閲覧者がその文書を印刷するのを妨碍する事です。

ウェブで小説を公開する人が、「モニタで見易い様に」といってtableで文書を整形するのは一時期常識と化しました。ところが、長文をモニタで読みたい閲覧者ばかりではありません。むしろ小説なら紙に印刷して読みたくなるものです。想像力のない小説家はプロとして通用しません。もっと読み手の事を考慮し、想像力を働かせて下さい。