「スタイルシートで表示を制御しようとすると、ネスケでおかしくなりますね。インターネットエクスプローラーなら大丈夫なのに。こうも規格が統一されていないと、ホムペを作る時に困ります。私、マイクロソフトが嫌いなんです。ネスケでちゃんと表示されたいんです。」
……と云ふ發言を、良く「ホームページ入門」關係のサイトの「質問掲示板」で見かける。
この發言が、何重にも「間違つてゐる」のを、なぜか誰も指摘しようとしない。そればかりか、「そうですね」の合唱が起きたり、「だからスタイルシートは難しい」と云ふ結論が出されたり、と、非常に面白い展開が待つてゐる事も屡々。
どこが間違つてゐるかは、「PC Tips」を讀めば大體わかると思ふが、念の爲、指摘しておく。
或文書を整形する過程自體がスタイルシートなのであり、整形(=スタイルシート)を實現する手段はCascading Style Sheetsに限られない。
上記の發言者が、JavaScript Style SheetやXSLの話をしてゐるのなら、まだ良いのだが、この手の發言の前後には「@import
でエスケープ」だの、「line-heightを使うと、NNではimgが潰れる」だの、と云つた發言が見られるものだし、發端の記事が「CSSについて」と云ふ題名だつたりする。多くの人がスタイルシートとCascading Style Sheetsを同一視してゐる樣子が窺へる。
Cascading Style Sheetsの規格は、level 1とlevel 2があるが、統一規格である。Cascading Style Sheetsに基いた記述の解釋が、Internet ExplorerとNetscape Navigatorで異るのは、規格が異るからではなくて、實裝が異るからである。
例へば、Word文書を一太郎で開いた時、レイアウトが正確に再現されなかつた時、「Word文書は駄目だ」と我々は言ふだらうか。unixのC++用に書かれたプログラムのソースをVisual C++でコンパイルしようとして失敗した時、我々は「C++は駄目だ」と言ふだらうか。
レイアウトが正確に再現出來ない理由である。
Cascading Style Sheetsの場合に限つて、ブラウザの能力や仕樣は大目に見られ、ドキュメントの記述方法が攻撃されなければならない、と云ふ正當な理由はない。或は、ドキュメントの記述方法自體は、統一された規格が存在する。
「制作者がMicrosoftを嫌つてゐる」と云ふ事實は、「閲覽者がNavigatorで見た時に、表示が崩れないやうにしたい」と思ふ根據にならない。論理が飛躍してゐる。制作者が「ネスケ好き」であるのは一向に構はない事だが、「ホムペ」を見るのはその制作者のみではない。
「ネスケ」「ホムペ」と云つた俗語は、論ずるまでもなく、不正確なものである。この手の俗語を濫發する人間は、屡々異る次元の話を混同する。その爲に、誤解が生じ、誤解が重なるのだが、結論が「難しいですね」では、情けない。
複雜な状況下で問題が發生した時、原因を究明するには、事態を正しく分析し、問題を切り分けるのが一番手つ取り早い。しかし現在、多くの人が、複雜な状況全體を見て「難しいね」と言つて終らせようとする。「きちんと考へてみれば」と忠告されると、返つてくる言葉は「頭が痛くなる」である。
そんなに頭を使ふのが嫌であるのならば、默つてゐれば良いのだが、なぜ皆、「ホームページ」を苦勞して作らうとするのだらうか。私には理解出來ない事が、この世には多過ぎる。
と言ふか、この「質問」、全然質問ではないんですが。