制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-10-05
改訂
2005-06-28

はじめに──「PC Tips」のHTMLに関する記事について

HTMLの本質を探る

「HTMLはレイアウトをするのには向かない言語です」――と、多くの解説書や解説記事の筆者が書きます。

それらの解説者は、そこから「では、どうすればHTMLでレイアウトができるのか」なる方向に話を持つていきます。挙げ句、その種のテクニックを「現実的」と言つたりします。

でも――

「HTMLに向いた事」とは、どんな事なのか――多くの人は知りませんし、知りたがりもしません。多くの解説者も、その辺りの事には触れもしません。もちろん、わざと匿して書かないのではありません。「HTMLに向いた事とは何か」とか、「HTMLはどんな風に使用するのが自然なのか」とかいつた事を、全く知らないから、書けないのです。

「PC Tips」の「HTMLに関する覚書」は、その「HTMLに向いた事」とは何か、を明かにし、「HTMLが得意とするジャンル」で、「HTMLを自然に、かつ、最大限に生かせる」様なHTMLの利用方法を提案します。ここでは、私達の通念とか常識とかでHTMLを歪めるのでなく、本来のHTMLの理念を理解し、活用する事を目標にします。

そもそもHTMLとは

HTML(HyperText Markup Language)は、開発者であるティム・バーナーズ・リーの個性と好みが強く反映された「言語」――それも、極めて個性的な言語として公開されました。ある意味、HTMLの思想を知る事は、このティム・バーナーズ・リーの個性を知る事です。

『Webの創成』によれば、HTMLはWorld Wide Webにおけるデータ交換用の文書の共通フォーマットとして考案されたものです。HTMLは、送り手と受け手の双方が、最低限の諒解事項を記録・再現できる文書形式として開発されました。

送り手がMS Wordの文書を送つた場合、送られた側では、MS Word(あるいは互換のプログラム)を使用できなければなりません。
送り手がWord文書をHTML文書に変換して送れば、受け手はそれを別の形式の文書に変換して使用できます。

インターネットは、全世界的に張りめぐらされたコンピュータのネットワークです。そこで、あらゆるコンピュータでデータを利用できる様に定められた、誰でも容易に使用できるデータ形式がHTMLでした。即ち、本来のHTMLは、最大限の互換性を実現するための、最低限の機能を実現する規格でした。TBLの公開したHTMLの仕様は個性的だったかも知れませんが、HTMLの決りに従って生成されるHTML文書は極めて汎用性の高いものでした。

その後、一般化する間に、いろいろな理由で、HTMLの規格は変化しました。一時は特定のブラウザ(Microsoft製のInternet Explorer)に依存する、プレゼンテーション目的のレンダリング制御言語として認知・利用され、互換性のない仕様が盛込まれて、混乱を究めました。しかし、高い互換性はネットワーク社会で最も求められる事です。そのため、互換性の低い方向への変化をW3Cは否定しました。HTMLの仕様は、現在はW3Cによって提案されるのですが、より単純なものへと戻ってきました。

ネットワーク社会で実現されるべき「互換性の高いHTML文書」を、「PC Tips」では理想的なHTML文書と看做し、その作り方を説明します。

直接実用には結びつかなくても……

「PC Tips」のHTMLに関する記事で、私(野嵜)は、HTMLの本質とか、理念とかの、極めて観念的な事ばかりを論じます。

「猿でも書けるHTML文書」等と、景気の良い事を、私は申しません。ただ、「HTMLの定義のための覚書」を読めば、駄目な「ホームページ」を見分けられる様になる、とだけ申しておきます。あるいは、駄目な「ホームページ」は作れなくなる、と。

問題はそこから先です。「では、どうすれば良いウェブサイトを作れるのか」といつた疑問には、結局、自分で答を見つけていただかなければなりません。

ここで、あらためて「自分の表現したい事」が重要になつてきます。「目的に合せて最適の手段を選ぶ」――それが、良いウェブサイトを作るために重要な事です。

一般的なウェブサイトに通用する、最低限必要な知識を、「HTMLの定義のための覚書」で私は提供する積りです。

より良い手段を選ぶために

強調しておきたいのですが、HTMLは飽くまで手段です。だからと言つて、その手段を軽んずる事が、しばしば世間では推奨されます。

しかし、手段を軽んずる事で、却つて手段に振回される事にはならないか、私は心配です。

もちろん、「できない事」をむりやり実現しようとすれば、結果は不自然なものとなります。しかし、HTMLの本質を熟知すれば、制作者はHTMLの性質をうまく生かしたウェブサイトを作れます。そして、うまく作られたウェブサイトは、制作者だけではなく、閲覧者にとつても、自然に感じられるものとなる筈です。

ウェブサイトの制作者は、あらかじめHTMLの本質を把握しておかなければなりません。HTMLの本質を熟知すれば、ウェブサイトを作る際、制作者はHTMLの「癖」に振回される事なく、むしろその特長を生かして、HTMLを有効活用できます。

私は、より良いウェブサイト作りの手助けとなる様に「HTMLの定義のための覚書」を作成しました。