RFC 2616 HTTP/1.1に規定されてゐる事ですが、サーヴァにリソースの送出を要求するプログラムの事をUser Agentと呼びます。
檢索エンジンがデータを集める爲に使ふスパイダ(ロボット)や、IRIAのやうな「ダウンロードツール」も、サーヴァから見ればUser Agentです。ブラウザももちろんUser Agentです。この手のクライアントツールはRefererのUser-Agentに名前を殘していきます。
HTML文書(等)を持つてくるプログラムはUser Agentであり、持つてきたHTML文書(等)を解釋するプログラムはパーサ、HTML文書(等)の整形を擔當するプログラムはレンダラと呼べるでせう。
そのあたりのややこしい事を全部まとめてやつて呉れる便利なツールの中で、特に「ネットサーフィン」をする爲に作られてゐるプログラムの事を俗に「ブラウザ」と言つてゐるのだと取敢へず考へておけばよろしいかと思ひます。
Internet ExplorerやNetscape Navigator、Mozilla、Lynx(以下略)は、リソース群を目で認識可能な形に整形する「ブラウザ」ですが、特殊なUser Agentであるに過ぎません。User Agentは「ブラウザ」に限られないのであり、HTML文書を持つていくUser Agentは色々なものがあるのであり、それを考へれば制作者は「Internet Explorer向け」とか「Netscape Navigator向け」とかいつたHTML文書を作れない筈なのであり、そもそも「ブラウザ」の爲にHTML文書を作ると云つた事も出來ないのであります。
ウェブで公開されるデータはデータに過ぎないのであり、「ブラウザ」で見られる筈のものとも決つてゐません。ウェブでは、データの利用方法を制作者は限定出來ません。ウェブのリソースは、User Agentと云ふ抽象的なプログラムの一群をしか、相手に出來ません。
HTTPの仕樣でさう決つてゐる(RFC 2616 HTTP/1.1)のですから、仕方がありません。W3CやHTMLの勸告で決つてゐるのではありません。
W3CはHTMLの勸告文書で、「visual user agent」などと云ふ言ひ方をしてゐます。
餘談です。
所謂「メーラ」を、「Mail User Agent」略して「MUA」と言ひます。メールの配送は所謂「メールサーバ」──「Mail Transport Agent」が擔當します。
ちなみに、「ブラウザ」と云ふのはブラウズするプログラム一般をさすのであり、ローカルのファイルをブラウズするプログラムも「ブラウザ」だ、ウェブのリソースをブラウズする特殊なプログラムは「ウェブブラウザ」と呼ぶべきだ、とかいつた議論もあります。
七面倒臭い話ですが、コンピュータの世界は本來、融通の全然きかない世界ですから、七面倒臭いのが當然です。さうさう世の中は便利に出來てゐませんし、そんなに世の中は便利になつてゐません。