公開
2001-02-06
最終更新
2002-01-29

ハイパーテキスト

リンク

他の文書(或は同一の文書)の或部分の記述に關して、他の文書との關係を明示するには、紙の文書では「註」が良く使はれる。「※註1」等の表示を文中に書込み、文末に註釋をずらりと並べ、そこに参考文獻や語句の解説等を書いておく、と云ふのが、學術論文や出版物で良く用ゐられる形式である。

コンピュータでは、文末に註を集中させる必然性が全くない。論文に限らず、文章をコンピュータで表示する際、參考文獻を明示したり、關連する記述を指示したりする方式は色々と工夫が可能である。

そこで、文書の或部分に關する關連文書を表示させたい場合、その文書の或部分自身を關連文書へのゲートウェイとする事が考へられた。或は、文章に畫像が埋め込まれてゐる場合、その畫像自身をゲートウェイとする事が考へられた。

GUIの時代になつて、マウスの使用が一般化する事で、アンカーをマウスでクリックする事で即座に關聯文書をオープンさせる、と云ふ方式が一般化した。

色々なハイパーテキスト

Windowsは早い時期からハイパーテキストのシステムを搭載してゐた。今ではさつぱり使はれない「ヘルプ」(winhelp.exe)である。RichTextをコンパイルする必要があるなど、作成に矢鱈と手間がかかる爲、一般には全く使はれなかったものだが、Windowsのヘルプは、結構良く出來たハイパーテキストである。

のち、ヘルプをベースに作られた(とおぼしき)Multimedia Viewerが登場してゐる。これは、HTMLの一般化によつて、まるきり「時代の徒花」に終はつたが。

また、Macintoshには「ハイパーカード」と云ふ有名なハイパーテキストのシステムがあつた。マルチメディアのツールだと思はれてゐるが、あれも立派なハイパーテキストである。或は、マルチメディアゲームで良く使はれたDirectorも、ハイパーテキストのシステムであると言へなくもない。

HTMLは、インターネット或はウェブの普及に伴つて一般に知られるやうになつたハイパーテキストの形式である。HTMLは、全てテキストで記述出來、作るのが簡單であり、處理系の進化が早かつた事も相俟つて、急激に普及した。

リンク再び

リンクは、或文書に出發點があり、或文書にターゲットがある。言換へれば、二つの文書の或地點と或地點とを結ぶのがリンクである。即ち、出發側の文書と、目的地の文書に、リンクのゲートウェイはある。

ここで私は「ゲートウェイ」と言つてみたが、一般にリンクの出發點と目的地とをどちらも「アンカー」と呼ぶ。アンカーの設置方法は、ハイパーテキストのシステム毎に異る。

HTMLでは、どちらのアンカーもa要素で示す。しかし、出發點のアンカーが文中の或語句であつたり、畫像であつたりするのは明かだが、目的地のアンカーがさう云ふインラインの要素であるとは限らない。インラインの語句や畫像であつたりする事もあるだらうが、段落自身がアンカーであるべき筈である事も豫想される。

出發點のアンカーと、目的地のアンカーを、同じアンカーであると見做す必要はない。さう云ふ譯で、HTMLでは、特定の名前の附いた要素を目的地としてリンクを張る、と云ふ事が可能である。出發地點のアンカーはa要素で指示されるが、目的地はid屬性を持つ全ての要素であり得る。

盲點

實は、ハイパーテキストに於て、アンカーがマウスでクリック出來るやうになつてゐなければならない、と云ふ事は全然ない。ブラウザがHTMLのa要素(href屬性附き)をクリック出來るやうにレンダリングするのは、さうするのが便利だからに過ぎない。

blockquote要素やq要素のcite屬性を、Internet ExplorerやNetscape Navigator、Mozilla Browserは、事實上無視するが、iCabのやうにこれをリンクの一形式と看做すのも全く問題のない事である。

リンクは、コンピュータの世界で獨特に發達した概念でありテクノロジである。技術の世界で、より便利になるのは惡い事ではない。W3CがHTMLの仕樣で定めてゐる樣々なリンクの方式を、ブラウザがサポートし、新たなリンクの可能性を擴げて行つて呉れる事に期待したい。

リンク