制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2002-01-03
改訂
2003-01-20

「綺麗なサイト」と「良いサイト」は別

ウェブサイトの制作者は、画像満載、見た目が派手な、「綺麗なサイト」を作りたがります。しかし、それが実際のニーズに適合してゐると言へるでせうか。

多くの場合、「綺麗」以上の価値のないサイトは、嫌はれてしまひます。

制作者は何を狙ふのか

「綺麗なサイト」「派手なサイト」を、多くの企業が作りたがります。ウェブデザイナーやディレクターは、さう云ふ企業の意嚮に、全く逆らはず、「綺麗なサイト」を作つてしまひます。

ところが、そこで完成したサイトは、企業の予想した程、評判がよろしくありません。さういふ企業サイトは、しばしば、全く利用されないまま、「死に体」と化してしまひます。

企業サイトでは、自社のイメージを高め、新しい顧客を獲得したり、既存の顧客を繋ぎ止めたりするために、サイトを公開しようとしてゐるはずです。それなのに、どうして「金をどぶに捨てる」やうな結果に終はつてしまふのでせうか。

閲覧者の求めるもの

たんに、閲覧者(ユーザ・顧客)が求めてゐるものが「綺麗なサイト」ではない、といふことを、企業が全く認識してゐないのが、その原因です。閲覧者は、サイトの提供するサーヴィスを求めてサイトにやつてくるのであり、「綺麗なサイト」を見にくる訳ではないのです。

そのあたりを勘違ひしなければ、企業は最初から、使ひやすいサイトを公開できるはずです。最初から、費用対効果のことを良く考へてゐれば、企業は、「死に体」のサイトを世間の目にさらさずにすんだり、改装にかける手間を省いたりできるはずです。それなのに、今まで、多くの企業が「ITブーム」に乗つて、安易な考へでウェブに進出しようとして、無駄な金を捨ててきたのです。

イメージでウェブを考へては駄目

ウェブで大事なのは、見た目ではなく、飽くまで中身(コンテンツ)です。

もちろん、「女の子の可愛らしいCG」や「綺麗な風景写真」を見にくる閲覧者もゐますし、さういふサーヴィスを提供するサイトは、それなりにウェブデザインを考へなければなりません。しかし、そのウェブデザインは、きちんとした目的があるから必然的に要請されるものです。

全てのウェブサイトで、「綺麗」であることが必然的に要請されるか、といふと、さうでもありません。

例へば、ソフトウェアを配布してゐるサイトでは、ソフトウェアのありかが分かり易くなつてゐなければなりません。たんに「綺麗」なだけでは駄目で、閲覧者が望みのソフトウェアを効率良く見つけ出すことができるやうになつてゐなければならないのです。

閲覧者にとつて、目的の情報を得るのに障碍となるものは全て、ただのノイズです。

ウェブサイトの運営者・制作者は、提供するサーヴィスがもつとも有効に働くやうに、ウェブサイトを構成しなければなりません。多くの場合、閲覧者にとつて「わかりやすい」「余計な手間がかからない」サイト構成、そしてウェブデザインが、サーヴィスをもつとも効果的なものに見せます。

無駄を省いて、閲覧者に早く情報を与へることが大事

画像をたくさん使つて「綺麗」に見せようとしても、閲覧者にとつてその画像はただのノイズにしかならないことがあるのです。

たしかに、ブロードバンドの時代は到来しつつあります。しかし、ブロードバンドの時代にも、大きなデータをやりとりするよりは、小さなデータをやりとりする方が、間違ひなく早いのです。「それでも、せいぜい数秒の違ひしかないだらう」と思ふ人も多いでせう。しかし、多くの閲覧者は、10秒間待つのも嫌がるものです。1秒の差で、何人か、何百人かはわかりませんが、あなたのサイトに閲覧者は到達しないのです。

あなたは「このウェブデザインなら、表示が遅くてもユーザは納得してくれるだらう」と思つてゐるかもしれません。しかし、一部のユーザはあなたのウェブデザインを見る前に去つてしまつてゐます。あなたのウェブデザインは、閲覧者を納得させる前に、閲覧者を追ひ返してしまつてゐるのです。


もちろん、簡素なだけのサイトでは、駄目です。重要なのは、いかに効率良く、閲覧者に望みの情報を渡せるか、です。

関連記事・参考サイト