制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2000-08-06
改訂
2006-01-03

「縱書きHTML文書」を作るべからず

從來の實現方法

縱書き原理主義

現状ウェブでは、縱書き表示出來るブラウザが普及してゐない──と言ふよりも、そもそも仕樣が出來上つてゐない。W3CCSS 3で、國際化對應の一環として、縱書きを定義すべく議論してゐる最中である。現状、HTML文書で縱書きを實現する爲の仕樣は全く決つてゐない。

「日本語原理主義」(?)の人々はその爲、ウェブに於る「縱書き」を無理なやり方で實現しようとしてゐる。出來る事はやつておくべきだ、と云ふ事なのだらうが、無駄な努力である。

無理を無理として堪へる事も必要である。そもそも、横書きで表示されてはならない、必ず縱書きで表示されねばならない文章なるものがあつたとしても、そんな文章に價値はないだらう。「鬼面人を驚かす」式のものに價値がある譯はない。

そもそも、インターネットはアメリカが發祥の地である──日本人が作つたものではない。日本人にとつて不便である、それは當り前の事である。だが、不便を不便だと認識しつつ、それに耐へる事は必要な事ではないか。

具體的には

今までに、preとttを組合せる、tableを利用する、等の裏技的なやり方が「開發」されてゐる。だが、最初の二つのやり方は、いづれも「タグの惡用」以外の何物でもないし、「見た目が縱書き」であるに過ぎない。この手の「縱書きHTML文書」は、本來のHTMLの理念とはかけ離れた出たら目なHTML文書である。

ほかに、ActiveXやJAVAのアプレットに表示させる、獨自プラグインを利用して表示させる、等の手法も提唱されてゐる。この手のヘルパーアプリを用ゐる事は、ウェブの汎用性を捨去る事にほかならない。「タグの惡用」よりは増し、と云つた程度のレヴェルである。

なほ、現状の「縱書きHTML文書」は、コピー&ペーストがやつかいなので、「盜用防止に使へる」等と考へる人間がゐるらしい。「なぜ電子化するのか」と云ふ理由は最早誰の頭からもすつ飛んでゐるやうだ。インターネットのウェブ社會は本末轉倒に依つて成立つてゐるらしい。

個人的な見解

大前提は構造と見た目の分離

「縱書き」は飽くまで「見た目」に過ぎない。HTMLは、見た目や雰圍氣を傳達する爲のものではなく、文章の意味を正確に傳達する爲のものである。HTMLで縱書きを實現しようと考へる事自體が、異常極まる事だと言へる。一つの文書で見た目や體裁、レイアウトを正確に再現させたいのならばPDFを用ゐればよい。

繰返すが、HTMLで縱書きを實現しよう等と考へる事自體が間違つてゐる、と云ふ事を讀者には認識して貰ひたい。或HTML文書の見た目を規定するには、スタイルシートによらねばならない。

私がかつて提案した方法

現状でも、HTMLの理念に副つた形で縱書きの文書を作る事は全く不可能と云ふ譯ではない。HTML文書には文書の構造を記述し、HTML文書の見た目についてはスタイルシートで記述する──これが現在W3Cが提唱するHTMLの理念である。私はさう云ふ理念に從ふ形で、縱書きが實現可能である事を、critical experiments lainで示した。CSSのポジショニングを應用した縱書きのやり方である。

餘りにもひつそりとやらかしたものであつた爲か、反應は全くない。だが、現時點で技術的にもつとも全うな解決法は、そこで示したやり方だけだ。或は、現在の仕樣で實現可能な、もつとも増しな解決法だ。

IE5.5に搭載された縱書きプロパティ

IE5.5では、CSSによる縱書きの指定が可能となつてゐる。(Web Workshop - Internet Explorer 5.5 における縦書きレイアウトの使用)

漢字御廢止之儀・縱書きテスト版で、そのやり方を試驗採用した。興味のある方は、htmlのソースと、cssファイルを參照されたい。もちろんこの文書は、IE5.01以前或はNN等のUAでは横書き表示となる。

將來

W3Cによる國際化對應レイアウトで、縱書きが檢討中である。これは、CSSの擴張と云ふ形で實現される豫定である。ここでは、技術的に全うなやり方で、各言語に於るより良い表示の方法を檢討してゐる。

恐らくは、技術的に全うな仕樣が、近い將來には策定される筈である。「縱書き」愛好者はそれを待つべきだ。非論理的なやり方であつても「縱書き」が實現出來れば良い、等と考へるのは間違ひの元だ。「俺は技術革新など待てない」と言つて出たら目なやり方をするのは、PCの出現を豫想出來ずに國語國字改革をやらかした馬鹿どもの二の舞を演ずるのと同じ事だからだ。

特に、非論理的な國語國字改革を批判する者は、非論理的な手段を避けねばならない。或は、將來の技術の進歩を豫想し、今の現實に妥協すべきではない。ウェブで縱書きを實現したいのならば、將來の國際化の擴張を施されたCSSを待つべし。

追記

以上の文章は、大分前に書いたものなので、一部の記述が不正確。

基本的に、HTML文書の記述は、テキストが頭から順に記述されてゐて當然なので、例へば、それに逆らふやうな形でテキストを記述してInternet Explorerなどで「右から左」に書かれてゐるやうに表示されるのを期待するのは大間違ひ。

本質的に、特定のブラウザの仕樣に依存して、HTMLの書き方を弄つて、「縱書き」風、「右から左」風に見せかけるのは、無意味。

特に、「右から左」に書かれてゐるやうに「見せかける」やうな眞似をしなくとも、テキストの書字方向をrtlに指定すれば、まともなブラウザならば日本語のテキストであつてもきちんと右から左に流し込み處理をして表示して呉れる。

また、現時點でさう云ふブラウザは存在しないみたいだが、縱書きをデフォルトのスタイルとするブラウザ、と云ふものも存在して良いだらう。我々は、さう云ふ「全う」なブラウザの存在を期待して良いのである。

逆に、さう云ふブラウザで「縱書きHTML文書」は、「下から上」にテキストがのぼつていくやうに表示される筈である。「正しい」仕樣のブラウザで間違つた表示がされるのは餘りにも確實であるがゆゑに、私は現在この世に存在する多くの「縱書きHTML文書」は間違ひであると斷言する。

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