近所にあつた讀賣新聞の販賣店が何年か前になくなつて以來、朝日新聞が擴販の活動に力を入れてゐる。
先日、朝日新聞から電話があつて、無料で一週間とつてくれ、と云ふ依頼があつた。親父が斷わつたのだけれども何度か電話でしつこく言つて來て、無斷で假購讀リストに入れられてゐたらしい。
今日朝日新聞の販賣店から、一週間無料の假購讀のリストに入つてゐるとの事で販賣員さんがやつて來た。電話で斷つたのだがと傳へると、リストにあるので理由なく取つて貰へないと本社から販賣店が怒られるとの事。何度もしつこく電話があり、無斷で登録されたらしいと説明すると一旦歸らうとした。
朝日新聞の販賣員さん、その後またやつて來た。販賣店の店長に話したら、本社の營業の仕方は非道過ぎると言はれた由。それで詳細を聞きに來たと。電話營業の人が實に執拗に粘つた事。こちらがはつきり斷つた事。それらを傳へると頭を下げながら歸つて行つた。
朝日新聞が、販賣店が、……と言はれるけれども、電話による勸誘・賣込みのトラブルは結構多い。
俺自身昔電話營業の仕事をやらされたので、相當非道い事がテクニックとして盛に使はれてゐるのは知つてゐる。この邊、多分殆どの人が知らないと思ふ。論壇の人も壺方面の連中も、新聞の問題として電話營業・電話による勸誘の問題を採上げられる知識のある人はゐないだらう。
「インテリが作りヤクザが賣る新聞」とは山本夏彦の言葉で、その「新聞」を「朝日新聞」と具體的な名前にして怒られたのが石堂淑郎だつたが、營業・勸誘の類は、實際には新聞に限らずどの業界でも本當に非道いやり方が當り前のやうに用ゐられてゐる。これは新聞の問題と切離してでも論じられて良い。