Web LogがWe Blogと變化して、Weが落ちて「Blog」なる言葉が成立したのださうである。從來の獨りで書いてゐた日記と違ひ、複數の人がコメントを附けられるが、それら複數の人が執筆した記事の寄集めが總體としてコンテンツとなるから主語がWeになるのらしい。
正確に言ふと違ふらしいのだが、事實上、「Weblog=Blogツールを用ゐて構築されたサイト」である。もつとはつきり言ふと、Movable Typeを使つた日記サイトがBlogである。これに徳保さん(趣味のWebデザイン)が反論していろいろ述べてをられるけれども、まあ、Movable TypeがBlogで必要とされる機能の事實上の標準を規定してゐる事は否定出來ない。
が、ここではMovable Typeの紹介をする氣はないし、Movable TypeとBlogとの關係を議論する積りもない。
取敢ず、Blogで必要とされる要件を列擧してみる。
ほかにRSS配信とか何とかの機能も最近のツールには附加されるやうになつて來てゐるが、それも假にBlogの機能の一部と考へて良い。「カテゴリ」等で分類する機能もさう考へて良い。
徳保氏が無視され続ける cafestaでMT ライクな「形」がブログを定義するという文化
に懷疑的な立場を表明してゐるけれども、一方の「機能」によるブログの定義は果して可能か。
上で述べた「Blogで必要とされる要件」だが、實はこれだけの記述を見れば、決してBlog特有の機能ではない。2ちゃんねるやふたばちゃんねる、或はYahoo!掲示板で見られる、スレッド式の掲示板ではどれも可能な事である。これらの掲示板は、RSS機能を取込んでゐないけれども、取込めないとする技術的な理由はない。
となると、Blogと掲示板との間に區別はない、と考へる事が出來る。ウェブ日記とBlogとの間に截然たる區別があると云ふ事もない訣だが、さうなると、ウェブ日記-Blog-掲示板の區分は、何處にあるのだらうか。
結論を述べる。
實は、茲で擧げた「Blogで必要とされる要件」の記述の仕方は、いんちきである。茲では主語を省いてゐる。
掲示板では誰でもスレを立てられるのに對し、Blogでは特定の個人にのみ、發端となる記事が書ける。そして、記事を書込める「管理人」が、コメントの管理を出來る。一方、一般的な掲示板では、スレを立てた人と、コメントを附けた人とが、管理人に管理される。此處が掲示板とBlogとを分かつ部分であると言へる。
ただ、aozora blogのやうに、誰が管理人で誰が「スレ立て人」だかわからない、殆ど掲示板のやうな「blog」もある。そして、このaozora blog、徳保氏の言ふ日本最大のブログサービス
であるcafestaを利用してゐる。
もつとも、aozora blogの場合、記事を書く=スレを立てる人は、青空文庫の「工作員」に限定されてをり、コメントする人はそれ以外の「一般人」に限定されてゐる。となると、一往、「管理者側」が「記事を書く」「コメントを管理する」と云ふ事になつてゐると言へる。
要は、「スレを立てられる人」と「コメントを管理する人」とが一致する掲示板がblogである、と野嵜は思ふのだ。
さうなると、「blog=ウェブ日記の親戚」と云ふ發想には限定される必要がなくなり、ブログツールの活用アイデアで提示されてゐるやうな「使ひ方」は當然いろいろ出てくる。
商業サイトでも、遙かなる時空の中で〜八葉抄〜ファン公式サイト はるはちのやうな、Movable Typeを利用してサイトを作つてゐる例がある。
「ウェブ日記」とWeblogの關係は、「日記としての使ひ方」の側面から言はれるに過ぎない。兩者は、次元が異る概念である。「ウェブ日記」には、闇黒日記のやうな手動で生成されるものもある。「定期的・繼續的に更新される記事」が「ウェブ日記」である。一方、ブログは、シンプル志向の MovableType カスタマイズで徳保氏が述べる通り、サイト構築における作業負担を減らすため
のツールなりシステムなりを指す。繰返すが、内容から定義された「ウェブ日記」と、ツールを利用する事から定義される「Weblog」とは、次元が異る存在である。「Weblogツールを利用した日記サイト」も「あり得る」。
さて、かうやつて考へて來ると、「サイト構築の爲の統合ツール」なる上位概念に、Weblogは含める事が出來る。そして、例へばWikiも同樣に含める事が出來る。と言ふか、記事を直接編緝するが、一方で記事の變更履歴を採れたり、記事に關するノートを附したり出來るWikiもまた、廣義のBlogツールと考へる事も出來なくはない。
いづれにせよ、「サイトの自動更新・簡易更新」と「更新に管理人以外の閲覽者が參加出來る事」とがBlogなりWikiなりの性質である。
となると、BlogやWikiを禮讚するのみならず、「自動更新・簡易更新」と、「管理人以外の閲覽者の參加」と云ふ條件から、サイト構築ツールについては檢討した方が、稔りはありさうだ、と云ふ事になる。
その一方で、その種の「ツールに據るサイトの自動生成」と、「手動による文書のオーサリング」との比較檢討が必要となる。結局のところ、Weblogを論ずるには、ダイナミックなサイトか、スタティックなサイトか、と云ふ觀點が出てくるべきである。そして、「スタティックなサイトの生成」を、野嵜は肯定する。
また、「サイトを自動で生成する」事がWeblogツールの本質であるとすれば、コメント機能、トラックバック機能はオプションである。事實、それらを使はないで、サイトを自動生成する爲のツールとしてMovable Typeを使用する事は可能である。古くからある掲示板にしても、閲覽者の書込みを禁止して、管理人の書込みだけを可能とする事で、ウェブ日記として利用する事は、あつた話である。Wikiでもそれは可能である。逆に、minibbsでも、全ての書込みが時系列で整列するだけで、管理人の日記と閲覽者のコメントを記録するツールとして利用可能である(トラックバックは使用出來ないが)。
となると、一般に「Weblogの特有の機能なり利點なりとして喧傳されてゐるもの」――コメント機能とトラックバック機能――を基準にWeblogなる概念を考察するのは不當である、とすら言へる。