コスト削減で、ユーザが必ずしも幸せになれる譯ではない、と云ふのは常識だが、メーカや流通の人間は確實に不幸せになる、と云ふ事實は意外と知られてゐない。
「ダウンサイジング」或は「IT革命」とは、今まで專門家がやつて呉れてゐた事をこれからは素人が自分でやれ、と云ふ事である。
專門家は、のんびりしてゐては仕事を失ふし、より專門的になる爲、さらに勉強をしなければならない。素人は、實力がないのに勉強をして何とか技能を身につけなければやつていけない。
技術が進歩する事で、世の中はどんどん住みづらくなる。人間の頭は簡單に進歩しない。
私が某S社で在庫管理をしてゐた時にきいた話。とある倉庫では、商品がどこに置かれてゐるかをたつた一人の人間だけが把握してゐる、と云ふ状況になつてゐたさうである。澤山の商品が出たり入つたりするので、その場凌ぎで棚に置いていくうちに、何がなんだか譯がわからなくなつてしまひ、結局一人の擔當者が全ての商品の配置を頭に入れておいて、場當り的に處理をしてゐるのださうである。人が少いから、まともに整理も出來ないのである。
リストラリストラの御時世、「その場凌ぎ」は多くの企業でざらだらう。くだんの管理人は相當の負荷を感じてゐた筈である。コストダウンにより個人への負擔は増大する。全てのリストラ企業の社員は、以前より負擔を感ずるであらう。
社員一人あたりの仕事量を増やせば、社員は削減出來る。しかし、負荷を感ずるまで業務を抱へた社員の業務は、そのうち破綻する。個々の社員の業務が滯れば、企業全體の業務が滯る。結果として、その會社は全體の士氣が落ち、内部崩壞するのである。
日本の多くの企業はこれからどんどん破綻しよう。