正漢字正かなづかひで入力する爲の辭書データ「契冲」と云ふものがあります。申申閣と云ふ會社からリリースされてゐる商品です。
「契沖」は、當初、DOS版FEP「松茸」用に開發された「正漢字正かなづかひ入力用文法辭書」です。のち、「松茸」がWindows98で使へるIMEとして公開されたので、Windowsでも利用出來るやうになりました。
IME版「松茸」は、本來Windows98對應のIMEです。一往、WindowsMeやWindowsXPでも「松茸」はインストール可能です。ただし、「松茸」そのものはWindowsXPやWindows7に正式對應してゐません。Windows7では制限つきで動作するやうですが、諸條件については状況が變化する可能性もあり、當サイトでの詳説を避けます。「契沖」公式サイトを參照して下さい。最新版「契沖」にはインストーラをWindows7對應とした「松茸」がバンドルされてゐます。
Windows版「松茸」は現在(2010年秋)、メーカである管理工学研究所で開發が打切られてゐます。シェアウェアとして發賣され、フリーウェア化された後、公開が停止されました。現状、「松茸」は申申閣發賣の「契沖」に同梱された形でのみ入手可能である模樣です。
現在、「契沖」は「今昔文字鏡」のフォントも同梱して販賣されてゐます。
「松茸」では、單語辭書と文法辭書とが分離されてゐます。「契沖」は、文法辭書自體を改變し、正假名遣での入力を可能としてゐます。その爲、「裏技」的に正かな入力を實現してゐるWXシリーズ用の正かなづかひ辭書等と違つて、よりスマートな形で「契沖」は正かな入力を實現してゐる、と言へます。
「松茸」は、取敢ずWindows9xに對應しただけのIMEであり、基本設計は1980年代當時そのまゝ、變換アルゴリズムは二世代以上前のものです。「契沖」の辭書の内容も、必ずしも充實してゐるとは言難く、必ずしも實際の文書作成で滿足出來るものであるとは言へません。
また、「松茸」本體が「現代仮名遣」で入力される事を前提に設計されてゐるらしい節があります。文法辭書の「契沖」は正假名遣に對應してゐるものの、正かなづかひで入力した時、妙に不自然な文節の切り方になる事があります。
「契沖」の正かなづかひ入力・變換に關する特許を申申閣は取得してゐます(「契冲」の特許書誌)。市川さんに據れば、「いふ」と入力して「言ふ」と變換出來れば特許に牴觸するとか云ふ話です。
この種の「特許」があり得るか否かは疑問です(野嵜私見)。ただ、市川さんによると、何處かの會社なり何なりが正かなづかひ入力の特許を取得し、「正かなづかひによる入力がPCで出來なくなる」事態を避ける爲の防衛的な特許である、との事。
北極三號などの正漢字正かなづかひ辭書を訴へる、と云つた妨害は行はない、と云ふ事であるやうです。
ただ、市川さん御自身は北極三號を知らなかつた樣子で、もしそんな辭書があるのならば調査しなければならないとか仰つてゐました。
ATOKが文語モードを搭載して來てゐますが、「契沖」の特許との關係が何うであるのかは不明です。