今回は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチン接種に反対してゐる人々の間で、ちよつとばかり流通した事のある(そして今でもたまに言及される)記事について、ファクトチェック。
荒川央氏がMITの論文を紹介してゐる記事ですが、反ワクの人々が「新コロワクチンのスパイクタンパクは毒だからワクチン接種をすると死ぬ」と主張する際、どうやら「論拠」としてゐるもののやうです。
荒川氏の紹介記事は以下のもの。
で、読んでみたんですがね、これがまあ、インチキの極みと言ふべきもの。
内容は実に詳しく、論文に書かれたコロナワクチンの血管への障害
の「仕組み」を、論文から転載して紹介してゐます。もうこれだけ読めばわかるくらゐ、詳しい内容です。
だから反ワクの人は、この記事だけ読んで、「あーやっぱりワクチン接種は危険だったんだ!」つて叫んでしまふのですが。
この紹介記事、ものすごい欠陥記事で、そのため完全なインチキになつてゐます。京大の理学博士のせんせいなんですが、荒川せんせい、これ完全なインチキですよね。
なぜなら、荒川せんせいは、論文に書かれてゐる懸念
は転載して、大々的に宣伝してゐるんですが、論文の一番肝心なこと、原著者の「まとめ」を、故意にかうつかりにかは知りませんが、紹介してゐないからです。
MITの論文ですが。
おそらく、荒川せんせいの紹介記事を嬉しさうにツイートしてゐる反ワクの連中は、誰ももとの論文を読んでゐません――少くとも末尾までは。
論文の一番おしまひ、末尾のところに、原著者は斯う「まとめ」を書いてゐます。
ここは敢て機械翻訳そのまゝで……。
まとめると、我々の結果は、Sタンパク質が及ぼすEC損傷がウイルス感染性の低下を無効にすることを示唆しています。この結論は、ワクチン接種によって生成されたSタンパク質に対する抗体および/または外因性抗体が、SARS-CoV-2感染性から宿主を保護するだけでなく、Sタンパク質による内皮損傷も阻害することを示唆しています。
荒川せんせいは、故意にかうつかりにかはわかりませんが、論文の一番大事な部分である、原著者によるまとめを、紹介してゐません。結果、原著者がワクチン接種を推奨してをり、研究がワクチン接種を改善するために役立てられる事を望んでゐるものであるにもかかはらず、原著者の意図に反して「反ワクの論拠」のやうに見せかける事になつてしまつてゐます。これをインチキと言はずして、何と呼べば良いのでせうか?
反ワクの主張にはたいていインチキがあります。今回の件でも、露骨なインチキが見られました。あまりにも見え透いたインチキで、紹介されてゐる論文を最後まで読めば誰にでもわかるものであつたためか、思つたほど反ワクの間にも浸透してをらず、依拠もされてゐないやうです。
「何でも疑つてみる」と云ふのは、なるほど、重要な事である、と云ふおはなしでした。