電子書籍のアプリケーションには「ページめくり」のアニメーションが附いてゐるものがある。電子書籍ストアでは「紙の本の背中を表示して引張り出すインタフェイス」が採用されてゐたりする。違和感をおぼえる。
デジタルの世界が未だにアナログの世界を引きずつてゐる。「アナログの本が電子書籍の足をひつぱつてゐる」といつた印象がある。
普段から本なんて讀まないと云ふ人が「それ」つぽく電子書籍關聯の「もの」を作つてゐるやうに思はれる。紙の本の「雰圍氣」に引きずられてしまつてゐるのだらう。
もうすぐけーたい世代の子が社會で大多數になる。アナログのものを摸倣したインタフェイスは廢れて、これからはデジタルらしい作りのアプリケーションやデヴァイスが増えるだらう。さうなれば、デジタル機器は從來よりもずつと使ひ易くなるのでないか、と俺は想像してゐる。
紙の本みたいな電子書籍を買ふくらゐなら紙の本を買つた方が良い。紙の本とは違ふものとして電子書籍は設計されるべきだ。ちやんと電子書籍としてのメリットがあれば賣れるだらう。
コピー制限かかつてゐて表示がかつたるくて決濟が面倒で……と云ふ現状の電子書籍には、紙の本以上のメリットが感じられない。
「檢索出來る」と云ふのは電子書籍のメリットとしてそれほど大きなものではない。實際、紙の本でも檢索などしないものだ。紙の本では御目當ての記述を探す時に大變だと言ふけれども、傍線を引いておくとか栞を插んでおくとかすれば後で見附けやすい。
一方、電子書籍でもマークをつけられるが、これが實に役に立たない。紙の本の栞ほど目立たないし、保存性も良くない。
そもそも、書込みをしたり傍線を引いたりして手許に取つて置きたいのなら、電子書籍よりも紙の本の方が良い。
紙の本が便利なのは、ぱらぱらめくつてゐる最中にストップし易い事だ。電子書籍ではぱらぱらめくれないし、スクロールさせた時に思ひ通りの場所で止めにくい。電子書籍は紙の本ほどダイレクトな操作感がない。
もちろん、檢索すればいい、つて話もあるが、すごくまだるっこしい。大體、讀んでゐない本では「檢索しない」ものだ。
紙の本なら、讀む前にぱらぱらめくつて内容を大づかみにする、と云ふ事もよくある。これが電子書籍では絶對に出來ない。電子書籍では最初から精讀するしかない。斜め讀みが出來ない。
紙の本を模したインタフェイスの電子書籍ほど「ぱらぱらめくる」行爲が困難になる。ページ風に表示する電子書籍で「ページめくり」するよりも、テキストエディタでテキストをスクロールする方が、紙の本をぱらぱらめくつて斜め讀みするのに感覺的には近い。電子書籍がページレイアウトの表示でなくテキストエディタ風の表示であれば、もつと便利に「使へる」だらうと俺は思つてゐる。電子書籍がページレイアウトの表示でなくテキストエディタ風の表示であれば、もつと便利に「使へる」だらうと俺は思つてゐる。
「卷き物を摸倣する」と云ふ發想がなぜか電子書籍のアプリケーションやデヴァイスの制作者には無い。フリックでびゃーっとテキストをスクロールするのが、讀み手の感覺的には寧ろ紙の本で「ページをぱらぱらめくる」のに近い。