制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-08-21

うんにゃ氏の反論メールに答へる


半年以上前の「闇黒日記」の記述にケチがつきました。

「うんにゃのお部屋」って単語がどのくらい検索に当たるのかな〜と何気なく見てい たら、貴サイトの2000/12/31の日記に僕の書いた文章が引用されていたので、読んで みました。

別にどうって事を言うつもりじゃないんですが、ただ、いわれっぱなしはしゃくな性 格ですのでちょっぴり反論させていただきますね。

と云ふ事で、反論メールを頂戴した譯であります。


このメールの公開及び批判の許可が出たので、「虱潰し法」にて全文をチェックしてみます。

あなた

まず、これですが。

見出しにしたい部分をh1要素とかh2要素とかでマークアップするのは、 直觀的な事ではないのでせうか。私にしてみれば、見出しを見出しとして マークアップするのは極めて直觀的な事だと思ひますが。

僕はこれは「直感的なこと」だと思っていますよ。あなたが引用された文章のどこに も「見出し要素は直感的ではない」「Webデザイナー向けだ」とは書いていませんよ ね。たぶんこの文章では舌っ足らずだったのが悪いのですが、この文章で「直感的で なく」「Webデザイナー向け」であると言っている対象は「スタイルシート」の事なん です。見出し<Hn>はHTML3.2以前でもあったでしょ?

あなたと云ふ語は、對當若しくは目下の人間に用ゐるべき言葉です。正直、むつとしましたので最初に觸れておきます。以下、わざと「あなた」を連發してゐます。ついでに、「ね」「よ」も濫發してみます。

あなたは、この文章で「直感的でなく」「Webデザイナー向け」であると言っている対象は「スタイルシート」の事だ、と、どこにも書いてゐませんよ。あなたは、最近のHTMLからは「直感的な操作性」というのが失われていて、「Webデザイナー」とか「Web Siteの美しさにこだわる人」には良い規格になったのですが「初心者にも優しい」規格ではもはや無いですよねと書いてゐますね。あなたの文章が舌っ足らずだったのが悪いのが惡いのではありませんよ。あなたは、書いてゐないんですね。書いてゐないと言つたら、それはあなたの方こそ書いてゐないんですよ。それを舌っ足らずだったと言換へるのは、欺瞞ですね。

また、私は、「うんにゃ氏は、見出し要素は直感的ではない、と言つてゐる」「うんにゃ氏は、見出し要素はWebデザイナー向けだ、と言つてゐる」と、どこにも書いてゐませんでせう。

なほ、HTMLとスタイルシートとは別物です。また、Cascading Style Sheetsはスタイルシートの一種であり、同義語ではありません。

center

人が文章を書いてゐる最中、或部分について「ここはセンタリングしたい!」と思ふ 事は普通ないと思ひます。 ならばそもそも「センタリングしたい」と思ふ事自體が直觀的な事ではないと考へ られます。

これは完全に僕の書き方が足りなかったです。確かにこういう論調にされてもしょう がないですよね。ただ、僕がいいたかったのは、

<center>この文は中央揃えです。</center>

と言うのと、

<DIV Style="text-align:center;">この文は中央揃えです。</DIV>

あるいは、

<HEAD>
<STYLE Type="text/css">
<!--
DIV.cn{ font-style: normal;
 font-weight: bold; }
-->
</STYLE>

,.,,,

<DIV class="cn">
この文は中央揃えです。
</DIV>

の様な事をするのと、どちらが直感的か、と言うことなんですよ。

だから、別に<B>や<I>などでも同じ事が言えた訳で、要は「スタイルシートでわざわ ざ定義しないとセンタリングや太字、斜体や下線などができないのと、 <CENTER><B><I>といったタグが存在することとどちらが直感的であるか」ということ だったわけです。

ただ、この件については先ほども書きましたとおり、僕が書いた文章にそのような書 き方はされていませんのであなたが書かれた文章の様な解釈をされても、それはそれ でごもっともだと思います。

この比較自體が全然比較になつてゐないと言ふか、そもそもこの手の發想自體に問題がある事を私は指摘したかつたのであります。

「スタイルシート」の理念は、單純に既存のHTML文書に良く見られる記述をCSSで書直せば良い、と云ふものではありません。そのレヴェルでうんにゃ氏は考へてゐるのですが、さう云ふ淺薄なHTMLとCSSの理解で物を言つて貰つては困る、と私は批判し、それゆゑ、直感的と云ふうんにゃ氏の用語に、直觀的と云ふ用語をぶつけてゐるのですが、うんにゃ氏には通じなかつたやうです。

例へば、うんにゃ氏にしてみれば、Leading the Web to its Full Potential...と云ふ文字列があつたとすれば、それをcenter要素とするのは餘りにも「自然」なのではないでせうか。しかし、The World Wide Web Consortiumはこの文字列をh2要素としてゐます。

<h2 id="slogan"><span class="slogan">Leading the Web to its Full Potential...</span></h2>

そればかりではなく、W3Cはトップページの構造を全て明示してをります。

かう云ふHTML文書の作り方は、文章を書く、と云ふ觀點から「直觀的」である、と言へませう。

一方、W3Cは、idであるsloganのスタイルには以下のものを指定してゐます。

#slogan {text-align:center;}

そして、classであるsloganのスタイルに以下のものを指定してゐます。

#slogan {font-sytle:italic;}

見た目は直感的に指定されてはゐませんが、しかし、構造を明示された文書の見た目は幾らでもスタイルシートで再定義可能だ、と云ふ事です。そして、これらの見た目をとつぱらつても、W3Cのトップページは全く問題なく閲覽出來ます。

ちなみに、うんにゃ氏の「置換へ」には誤りがあります。centerは、div align="center"と同義ですが、これはtext-align:center;の指定されたdivとは異ります。

例へば、centerの中身がtableである場合、それを「スタイルシート」で書換へるとしたら、centerをdiv style="text-align:center;"にしても駄目で、tableの左右marginをauto指定しなければなりません。

この邊り、ブロック要素、インライン要素がわかつてゐないと理解出來ない事です。ブロック要素だとかインライン要素だとかいつた事は、素人には難しい事だと思はれるかも知れませんが、例へばWordでも同じやうな事を理解してゐないとさつぱり譯がわからなくなるのであり、「難しいから駄目」と言ふ事は出來ません。

正しいと云ふ事

正しいHTML文書を作るのは難しい、と云ふのは、至極當り前の事だと思ひます。な ぜなら、正しい文章を書く事自體が 大變難しい事だからです。逆に、「初心者に優しくないから、正しいHTML文書と云 ふものは良くないものだ」と主張するのは、 「普通の人間にはなかなか書けないから、良い文章を書かうとするのは良くない事 だ」と主張するのと同じ事です。

どうもこういう論調が目立つようですが、「初心者に優しくないから、正しいhtml文 書と云ふものは良くないものだ」などとは一切いっていません。そもそも他の所にち ょろちょろと書いているのですが、僕はW3Cの勧告は正しいから従えと高圧的に押し つけようとする姿勢が問題であると考えているわけで、別にW3Cの勧告が正しいか否 かを問題にしているわけではないんですよ。

例によつて「道義的」な御意見。

  1. うんにゃ氏は「初心者にも優しい」規格ではもはや無いですよね、とはつきり書いてゐるのであり、W3Cの規格そのものを批判してゐます。これを、高圧的に押しつけようとする姿勢に對する批判だと讀め、と言はれても困ります。
  2. 姿勢なるものを批判される事自體、心外ですが、姿勢なるものを問題にすべきなら、うんにゃ氏の姿勢にも獨善の匂ひが漂つてゐるぢやありませんか。
  3. これをうんにゃ氏が問題にしてゐないのが殘念だ、と云ふ事。或は、うんにゃ氏の文章には、「肩すかし」を食はせようとする論調が目立つんですがー。苦笑。

また、

「正しいHTML文書を作るのは難しい、と云ふのは、至極當り前の事だと思ひます。な ぜなら、正しい文章を書く事自體が大變難しい事だからです。」

というのはかなり無理のある考え方ですよね。この文章が正しいとすれば、

「正しい文書を書くことができれば(あるいは簡単であれば)、正しいHTML文書も書 くことができる(あるいはたやすい)」

ということになってしまいますよね。果たしてそうなんでしょうか。htmlはそれ自身 が一つの言語ですから、「正しい」htmlを書くためにはいくら「正しい文章を書く知 識」があってもダメです。「正しいhtmlを書く知識」がなければ「正しいhtmlは書け ない」と考えるのですがどうでしょうか。

HTMLに關する覺書の「HTML原論」に述べた通り、HTMLとは自然言語をコンピュータに理解出來るやうに擴張したものである譯で、それゆゑ自然言語の部分で正しい文章が書けてゐないと、正しいHTML文書は出來ない、と云ふ事です。マークアップ作法を參照して下さい。少しも無理はないと思ひまーす。

或は、「初めにテキストありき」と云ふのが私のHTML論の大前提です。この大前提は「ウェブでは中身が大事」と云ふ説から引出されたものです。この大前提の部分で、うんにゃ氏と私との考へ方の相違が發生してゐます。

ただ「うんにゃ氏には大前提と云ふものが存在しない」と云ふ事が、私のHTML論と本質的に相容れない理由ではないかと思ひます。うんにゃ氏の場合、「ブラウザでかう見えるから」と云ふ結果からHTMLの記述が肯定されますが、そのHTMLの或記述が必然的に要請される理由は説明出來ません。

主義者

最後に、「W3Cの言ふ事は絶對的な正義ではない」と主張する人におききします。あ なたはひよつとして 「絶對的な正義」なるものを望んでゐるのですか。もしさうならば、あなたは危險 思想を抱いてゐると言へます。 あなたは「絶對主義者」である事になりますから。

とうとう「絶対主義者」にされちゃいました(^^;)。あなたがそのつもりでなくても一 番上に僕の文章の引用があるんですから、読まれた方は僕が絶対主義者の権化である ように考えるでしょうね(この文章は半分以上冗談ですけど)。

しかし、どちらかというと僕は「相対主義者」であると個人的には考えているんです が。別にW3Cが絶対とも思っていませんし、絶対的なものが存在するなんて思ってい ません。W3Cの勧告にもっともな点が多い事は確かにそうだろうと僕も思いますし、僕 自身最近は前述のスタイルシートにしてもそれなりの頻度で使っていますので良さも よくわかります。

ただ、「絶対」はない以上、どの規格にもいろいろと欠点は存在しますし、そういう 意味で複数の規格が(一時的にせよ)並立するのは必然的なことですし、「複数の規 格」とまでは行かなくても、例えば「スタイルシートはIE3.0以下のバージョンで表示 が崩れるから使わない」とか、「現状を考えると<TABLE>を段組に使うのは仕方ない」 といった考えが出るのは当然であろうと思います。要は「おおらかさが必要」だと思 うんです。だから、「W3Cの勧告通りのhtmlを書くべきだ」という意見があってもいい んですが、「W3Cの勧告通りのhtmlを『書かなくてはいけない』」「W3Cの勧告に従わ ないhtmlは表示されるべきでない」というのはおかしいと言うのが僕の考え方です。 もちろん、あなたがそう考えている、と言っているわけではないですよ。ただ僕が 「絶対主義者」ではない、と言うことを言いたかっただけですから。

  1. ちなみに、「W3Cが言つてゐる事は必ずしも絶對的な正義ではない、だからW3Cの言ふ事には從はなくても良いのだ」と主張する人がゐます、と云ふ書き方を私はしました。うんにゃ氏はこの羂に、進んでひつかかつて呉れたと言へます。しかし、あなたがそのつもりでなくとも、だなんて、そつくりそのままうんにゃ氏に返つて行きさうな言葉ではないかと思ひますが。
  2. 相対主義者と云ふ言ひ方自體が矛盾である、と云ふ事──相對主義とは相對的である事の絶對化である、と云ふ點で矛盾であります。もちろん、言葉の上で「相對的である事の絶對化も相對化する」のやうな事は言へますが、では具體的にそのやうな事が可能なのか、と言ふと、不可能です。或は、さうなると、主義者と云ふ用語法自體が不適當、と云ふ話になります。閑話休題。
  3. その人は、W3Cが間違つてゐる證據を擧げないで、ただ「絶對的な正義ではない」と決めつけてゐます、と私は書きましたが、それがここで效いてきてゐます。
  4. 並立は結構だが、「良いとこ取り」は止めて來れ、と云ふ事。
  5. おおらかは結構だが、「出たら目」は困る、と云ふ事。
  6. 「W3Cの勧告通りのhtmlを書くべきだ」と「W3Cの勧告通りのhtmlを『書かなくてはいけない』」は同義。「W3Cの勧告に従わないhtmlは表示されるべきでない」は、どこから出てきた發想なのか、不明。私はそんな事、言つてゐない。
  7. あなたにその積りがなくとも、私に對する批判なのだから、私がさう考へてゐる、と言つてゐるやうなものではないですか。

引用とblockquote

最後に、「引用は自由」だとは思います。著作権法でも確かに認められていますし。 しかし、確か「引用」に際しては「出典を明記する」 のは法律で決まっている云々以前に一つのルールじゃなかったですか?せっかく World Wide Webという環境でリンクなんて簡単に出きるんですから、それぐらいのこ とはして欲しかったですね。そうすればリンクをたどってきた方は僕が極端な絶対主 義者では無いと言うことがわかったと思いますから。

ここだけ取敢ず、メールでInternet Explorerではわかりにくいかも知れませんが、blockquote要素のcite屬性に出典のURIを記載してをります。と書いて遣つたところ、

というか、cite属性を表示できるブラウザを僕は知りませんけど。Mozillaでは可能な のでしょうか。

と返つてきました。

私は、「著作權法」と「HTMLの仕樣書」に從つてゐるのであり、その點で誰も文句を言へる筈がないと思ひまーす。

Mozilla Browser、Netscape 6は、blockquote要素のcite屬性に對應してゐますが、對應してゐないブラウザでも、ソースを見ればcite屬性の存在は自明です。また、Internet Explorerでも、コンテクストメニュー追加セットで「出典URI表示」の機能を追加出來ます。

結語

ここまで読んでくださったとしたら、ありがとうございます。なんとか文章をきっち りまとめたかったんですが、なんせ文章を書くのはあまりうまくないたちな者ですか ら、読みにくい文章になってしまってごめんなさい。

このメールの内容を、僕のサイトに掲載すると思いますので、よろしくお願いします (引用元としてhttp://isweb2.infoseek.co.jp/~noz/diary/20001205.html をリンク として掲載します)。また、幸いにもお返事がいただけて、その内容を掲載しても構 わないとのことでしたら(字句を違えることなく)一緒に掲載させていただきます。

では。

では。

最後に

えー、この手の反論をいただく事を豫期して、「道義的義務」として「PC Tips」を作つてゐるので、讀んでやつていただければ幸ひです。

と言ふか、このサイトのHTML文書自體が、整ったHTMLよりもバグなどを許容しても表示がましになされる方がいい、と云ふ主張に對する有力な反證となつてゐるのですが、如何でせうか。或は、最低限見出しとか段落とか、文書の構造を示しておくのは、「妥協したHTML文書」を作る場合にも必要な事ではないでせうか。