制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2002-09-14
改訂
2005-12-25

ISO/IEC 15445:2000に基くサイト制作

結果として生成された文書がDTD(及び仕様書)に定められた形式の範囲内のものであるならば、その文書はたしかに「ISO/IEC 15445:2000準拠の文書」であるとみなされます。

結果的に「仕様に形式上準拠した」だけの文書を公開するのでは、ISO/IEC 15445:2000を採用するメリットは小さなものにしかなりません。ですから、仕様に準拠することがメリットとなる様な文書生成のプロセスが必要となります。以下にそのプロセスについて述べます。

ただし、ISO/IEC 15445:2000のメリットについては、必ずしも仕様書に規定がありません。よって、以下の記述において「メリット」として挙げる内容は、主に野嵜個人の考察による私見に基くものであり、原規格策定者の確認・認証・了承などを経たものではないことを明記しておきます。

1 Pre-HTMLを生成し、ISO-HTMLの公開用の文書に変換する方法

仕様書に基いたオーサリング手法で、常にISO-HTML準拠の文書は作り得ます。

Pre-HTMLの規則に基いて準備文書を作成すれば、変換プログラムを通してISO-HTML準拠の文書を生成できます。この工程を採用する事で、生成される文書は常に定型的なものとなります。

その結果、サイト制作者は、サイトの運営・維持に際して、ある種のメリットを得られます。

2 工程を標準化してISO-HTMLの公開用の文書を生成する方法

実際の現場では、Pre-HTMLと呼ばれる仕様書通りの工程を実現するのは、困難であるかもしれません。

その場合、「結果として生成されるHTML文書が常にISO/IEC 15445:2000準拠となる様、標準化された工程を規定する」方法があります。

ただし、ISO/IEC 15445:2000の意図を理解し、わかりやすい構成の文書を定型的に作成するための適切な規則を、きちんと定めておく必要があります。意味もわからないまま、取敢ず「結果的にISO/IEC 15445:2000準拠となる文書を作成する」等の曖昧なルールを採用したとしても、サイトの運営は失敗しかねません。

文書の構成について、文書の作成担当者が拡大解釈する余地がある場合、結果として、サイト全体の統一を喪失しかねません。単に「ISO/IEC 15445:2000の制約に従っておく」のみならず、一定の作業プロセスを定めておくことで、破綻のない、一貫性のあるサイトを作成し、維持し続けるのが、比較的容易になります。


以下は、「結果としてISO/IEC 15445:2000準拠となるHTML文書」に基いたサイトを運営する際に、あり得る体制の一例です。ISO/IEC 15445:2000に規定されたものではありません(筆者=野嵜の私見です)。

コーディネータ
ISO/IEC 15445:2000準拠となるある定型的なHTML文書(雛形)を用意する。
オーサリング活動全体を監視し、一定の手順でサイトが維持される様にチームを引率する。
デザイン担当者
HTML文書を整形するスタイルシートを制作する。
デザイン上の問題点を発見し、スタイルシートを修正する。
サイトのリニューアル時に、新しいスタイルを制作する。
文書制作担当者
常に同じ手順で、同じ形式の文書を作成する。

最初にデザインを作成し、順次HTML文書を作成していく事で、サイトを容易に公開し、拡張、維持することができます。

3 工程を標準化する事について

多くのウェブサイトは、サイト全体の一貫性を保ち、ユーザにとって便利である状態を維持するために、一定の手順に従ってHTML文書を作成し続ける必要があります。多くの一般的なサイトは、文書の雛形を用意したり、文書の生成過程を機械化したりするなど、独自のノウハウを持ちます。

しかし、その様なノウハウがなくとも、ISO/IEC 15445:2000の手法を採用すれば、比較的容易に、一貫性のある大規模なサイトを作成・維持する事ができます。そして、ISO/IEC 15445:2000に準拠したサイトの方が、手探りで工程を作り上げてきた従来のサイトよりも、容易に一貫性を維持できます。

厳密にISO/IEC 15445:2000に従って作業できないとしても、その意図を理解しておくのは有意義な事です。サイト制作チームの組織、仕事について、最適な手順を、あらかじめ確定しておくのは、サイトを効率的に運営するために有効な手段です。ただ、目的は、あくまで「効率的に、かつ、最大限ユーザにとって便利であるサイトを作る」事です。それが実現できないのでは、わざわざ仕様の目的を理解し、仕様に準拠しようとする意味がありません。

ISO/IEC 15445:2000に準拠する目的を理解し、手段を適切に選択すれば、サイトの運営によりよい結果がもたらされることと、私は信じます。

気をつけなければならないのは、スタッフ一人一人が、ISO/IEC 15445:2000、あるいは、サイト制作の目的と方法について、共通の認識を持ち、作業の効率化のために自分の役割をはっきり自覚する事です。

それぞれのスタッフが、自分のすべき仕事をきちんとこなし、相互に協調して作業をすすめるならば、ISO/IEC 15445:2000を採用した効果は最大になります。

逆に、一人でも、自分の権限を越えた「してはならない事」をしてしまったり、独自の判断で作業パターンを崩したりすると、規格不適合の文書が出現し、効果が下がりますし、結果としてISO/IEC 15445:2000適合と称する事ができなくなります。

事前に、スタッフの教育を徹底するなどの準備は、依然として必要です。